記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

『鮨』岡本かの子 「お母さんに会いたくなる」と、可愛らしく

このnoteは、本の内容をまだその本を読んでない人に対してカッコよく語っている設定で書いています。なのでこの文章のままあなたも、お友達、後輩、恋人に語れます。 ぜひ文学をダシにしてカッコよく生きてください。

『鮨』岡本かの子

画像1

【岡本かの子を語る上でのポイント】

①女性らしい優しい文体

②母を感じさせる

の2点です。

①に関しては、一般的に男性はかっこつけなので難しく分かりにくい表現を使い、一方女性は感覚的に読みやすい文章を書くと言われています。岡本かの子はとても女性らしい文章を書くので、素晴らしく優しく読みやすいです。

②岡本かの子は、芸術家岡本太郎の母親です。文章を読んでいると、あんな闊達な人間を育てたその懐の広さ、おおらかさを感じます。


○以下会話

■『鮨』を読むときっとお母さんに会いたくなる

 「読みやすい小説か。そうだな。今一人暮らしだよね。そしたら、岡本かの子の小説がおすすめだよ。岡本太郎っているでしょ。大阪の太陽の塔を作った、「芸術は爆発だ」の人。岡本かの子はその人のお母さんなんだ。その岡本かの子が書いた『鮨』っていう短編小説は、母親の偉大さが分かる小説だから一人暮らしの人にめちゃくちゃおすすめなんだよ。

『鮨』はね、湊(みなと)という鮨好きなおじさんが、鮨を好きになったエピソードとして幼少期の頃の体験を語っていく話なんだ。

■痩せ細った幼少期

湊はね、小さい頃ものすごくガリガリに痩せてたんだよ。なんでガリガリだったかと言うと、家が貧しい訳でも病気がちだった訳でもなくて、極端な潔癖症だったんだ。異常なほどの潔癖症で、食べ物を口に入れると、赤とか緑に着色した物体を誰かがベタベタ触ってる様子を想像しちゃって、どうしても飲み込めず吐いちゃうんだよ。だからまともに食事ができなくて、痩せ細ってしまうんだよ。本人もできれば空気を食べて生きていきたいって思ってたくらいなんだ。

湊少年はそんな調子でガリガリに痩せてるから、ある日お母さんは学校に呼び出されて、担任の教師から虐待を疑われるんだよ。お母さんがそれをお父さんに報告すると、古い家のことだから「家庭で起きた問題は母親のせいだろ」って、お母さんを責めるんだよね。湊少年はお母さんが好きだったからその一部始終を見てて、いたたまれなくなるんだよ。だから、その日の夕ご飯を一生懸命食べようとするんだけど、やっぱり全部吐き出しちゃうんだよね。その吐く姿を見て、湊少年のお姉さんとお兄さんは「うわっ」てめっちゃ嫌そうな顔をするし、お父さんも「ちらっ」て一瞥して、知らないふりで何も言わず日本酒飲んでるんだよ。そしてお母さんは悲しい顔していて、もう湊はお母さんに申し訳なく思うんだよね。でも体が食べ物を拒絶してどうしても飲み込めないんだよ。湊少年は自分を責めて落ち込むんだよ。

■我が子へのお母さんの愛

その次の日の昼間、お母さんが縁側に新しいゴザを引いて、湊を呼ぶの。新品の包丁とまな板とお皿を用意して、よく洗った手をおもむろに広げて手品師のように裏表見せるんだよ。そして「手はこんなに綺麗。そして道具は全部新品だよ」って言うのね。桶に入ってるお米に酢を入れてコンコンむせながら混ぜて、そこから一掴みして形を整えて、上に焼き卵を乗せて「はいお鮨だよ。自分の手で掴んでお食べ」って湊の前にあるお皿に置くんだよ。湊はパクって口に入れると、するするって喉を通っていって、しっかりと食べられたんだよ。食べ物を食べられたことと、お母さんの優しさと、お鮨の美味しさ全部が嬉しくて、お母さんに擦り寄りたくなるんだよね。でもなんだか気恥ずかしくて、そしたらお母さんがもっと食べたいかい?って聞くからニイって笑う。そしたらイカ、鯛、ヒラメの鮨をどんどん握ってくれたんだ。湊は満腹感と、美味しさと、新しい感覚と、お母さんへの愛でもうウキウキしちゃって、ヒッヒッヒって甲高い声で笑って空を見上げるんだよ。そうして湊は美しく立派に成長していって、今に至るんだ。

もうめちゃくちゃ良くて涙出るでしょ。僕が今まで読んだ本で、こんなにも母親の愛情を美しく書いた小説他に知らないわ。お母さんに会いたくなったでしょ。今週の土日に実家帰って顔見せてあげな。」


この記事が参加している募集

読書感想文

お賽銭入れる感覚で気楽にサポートお願いします!