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AR時代のコマース論 | ARとコマースはなぜ相性が良いか? ARでコマースはどう変容するか?

先日、MESON主催のARイベント「ARISE」の「Augmented Commerce Session」でARがコマースをどう変容させるかについて話した内容をnoteでもシェアします。

ToCのAR市場は「コマース」「コミュニケーション」「ゲーム」の3つが大本命だと思っているのですが、その一角をなす市場について何故ARが相性が良いかや、将来ARによってどう変容していくかについて話しました。

Q. なぜいまコマースの領域でARが求められているのか?

リアル店舗は体験を、ECは手触り感を求めていて、どちらにもARがフィットしているから、というのが理由かなと思っています。

まずリアル店舗の方からいうと、ものを買うこと自体はECで便利にできる時代になったので、物を買ってもらうことから、いかにブランド体験を提供するかにリアルなお店の目的をシフトさせるブランドが増えています。

実際にNYのNIKE店舗は販売スペースを大幅に減らして、実際にシューズを試し履きしてバスケができるコートや、アーティストとコラボしたギャラリーを設置したり、商品を売らないショールーミングのみの店舗も海外のD2Cブランド中心に増えています。

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そして店舗でのブランド体験をデジタル的に実現するのに、空間の場所性を活かしながらも、ソフトウェアなのでその場所に制約されずに他店舗展開できるARはかなり相性が良い。

逆にECのほうでいうと、元々アクセシビリティは高いんだけど、体験としての奥行きや手触り感が薄いので、ARで試着できるようにしたり、家にいながらブランドの世界観を目の前で見ることができたりと、EC購買体験に手触り感や奥行きを付与できるARにブランドは可能性を感じているのかなと思っています。


Q. コマースとARを組み合わせるときに気をつけるべきことはなにか?

以下の3つが大事だと思っています。

1. ARを売りにしない
ARであること自体が価値になってしまっているサービスがいまのARには正直多いかなと思っています。
そうではなく、ARはあくまで手段としてどんなユーザー価値を生んでいるのかをしっかりと考えるというのが大事かなと。当たり前のことですが、世のARサービスはこれできていないサービスで溢れているので、気をつけるようにしています。


2. 男だけで作らない
消費を動かしている主体は女性。パーティクル表現とかにこだわってどんなにクールなものができた、と思っても彼女らが心を動かされるものでないと消費者も動かない。
日本のAR市場は依然男性が多いですが、かならず企画・開発チームには女性メンバーを入れて彼女らの意見を積極的に取り入れながらサービスをつくるようにしています。

3. AR体験後のユーザー導線をしっかり考えて設計しておく
AR体験をつくって終わりではなく、体験後に何をして欲しいのかを明確に決めて、AR体験がその行為にスムーズにつながるように設計しておくのが非常に大事だと思っています。
AR体験をフックにそのあと店員と話をしてほしいのか、試着をして欲しいのか、モノを買って欲しいのか、体験をシェアして欲しいのか。
これも当たり前なんですけど、できていないサービスが多いのでとても大事だと思っています。


Q. 今後コマースはARによってどう変容していくか?

「家の店舗化」「街のモール化」「売買対象の拡張」の3つが大きな変化として起きそうだなと思っています。

家の店舗化
AR時代は商品体験を限りなく自宅で再現できるので、家が店舗化すると思っています。
ブランドの世界観が部屋にフィルターとして反映されながら、目の前に実際にあるかのように商品を見たり、試着したりしながら商品を買う世界が近いうちに来ると思います。

街のモール化
Pinterestが写真に写っているものと似た商品を表示してくれて購入できる機能があると思うんですが、ARグラスが普及するとそれが街中で可能になると思っています。
街中ですれちがった人の服、おしゃれなカフェにおいてある椅子やマグカップ、が気になったらそれと同じ商品、もしくは似た商品を表示してくれて買えるようになる。その意味で街はモール化していきます。

売買対象の拡張
今まで売買の対象でなかったものも商品になると思っています。
例えば人の記憶や体験。ARグラスが普及すると目元にカメラがついて常時録画されるので、だれかがセレブの結婚式に参加したときの記憶、とか、エベレスト登頂したときの記憶、みたいなものが売買される世界は来そうだなと。


Q. VRではなく、ARだからこそできるショッピングの形とはなんだと思いますか?

まず、VRにはないARの価値はなにかというと、物理世界の認識と、そこへの投影だと思っています。だと思っています。
したがって、以下の3つはARならではなショッピング体験かなと。

Try-on before Buy
試着、コスメのTry-on、家具の配置など。

視界情報をインプットにするショッピング体験
自分のワードローブを見たら自分の持っている服と合わせると良い服が表示されて買える、街ですれ違う人を見て気になったアイテムを買うなど。

ARで完成する商品
HI PANDAの服とか。ARでストーリーが拡張されるLEGOとか、ARで表現が完成するアートブックなど。そういった商品は今後も増えてくるかなと。

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Q. 現状はAR×コマースは展示・POCレベルのものが多いがサービスとして成り立つものは、どういったものが出てくると思うか?


まず、今現在か、ARグラスが浸透したあとか、という大きく2つの時間軸があると思っています。


今現在の時間軸
今現在の時間軸でいうと、一番の勝ち筋は元々熱量高いコンテンツとの掛け合わせだと思っています。

a)レアアイテムのARハント
レアなスニーカーをARで探す体験をナイキがやっていて一瞬で売り切れてたりしているんですが、その動きは今後も増えるかなと。

b)ホビー系の購入とコレクション
プラモデルやフィギュア、鉄道模型をARでコレクションできるみたいな。

c)インフルエンサーのライブコマース
インフルエンサーが目の前に現れて、商品もARで現れてその場で好きな角度から見て買える、もしくはインフルエンサーの視界をアクションカムなどで共有し、インフルエンサーが買い物している視点をリアルタイムで見ながら買い物する、など。熱量高いインフルエンサーが高単価商品を売りまくったらペイしそうだなと。

あとは、Try-on before Buyは3Dモデルの制作コストが下がってくれば普通に成り立つでしょう。


ARグラス後
先述した「家の店舗化」「街のショップ化」のサービスは今後出てくるだろうと思っていて、MESONもこのあたりのサービス化は考えています。


まとめ

ものを買うという行為は人間の活動の根幹をなす行動の一つであり、その活動がARによってどう変容していくか考えるのはワクワクしますし、自分自信もその変革を起こす主体者でありたいと思っています。

そうした未来のコマースの形を一緒に考え創っていけるいけるメンバーや、プロジェクトをご一緒できる会社を募集中なのでぜひ会社サイトかTwitterからご連絡いただければと思います。


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