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終末期リハビリテーションの話~リハビリ職ができることとは?~

私は以前は訪問リハビリで終末期患者様に関わっていました。その後、勤務先が変わり、約5年間終末期患者様と関わりがない現場にいましたが、最近は再度終末期患者様と関わることがあります。

以前と見え方が少し変わっているので、現在の終末期リハビリに関する自分の気持ちをここに残しておきたいと思います。

終末期って何?

終末期とは、医師によって不治の病と診断を下され、それから数週間ないし数か月(およそ6か月以内)のうちに死亡するだろうと予期される状態になった時期を言います。

似たような言葉でターミナル・ケアと、エンドオブライフというのがありますので簡単に説明します。

ターミナル・ケア
がんの末期によく使用される言葉で、死を目前にした人のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上を目指すケアのこと。
エンドオブライフ
老衰や高齢者の死期に近い時期のこと。
最善の治療を行っても病状が元に戻ることがなく、死が近い将来に訪れると思われる状態。

終末期の定義はこんな感じです。次に終末期でのリハビリテーションについて書いていきます。

終末期リハビリテーションとは?

終末期リハビリテーションは、以下のような役割があると言われています(「終末期リハビリテーション」より)。

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.清潔保持
汚くなりやすい場所は、口腔内、脇、肘、手指の間、手の平、股、膝の裏、足の指の間と言われています。
そこから感染すると敗血症になる可能性もあるので、それらの部位は確認する必要があります。
関節拘縮があると清潔が維持されないですし、室温や環境設定も大事になります。

2.不動による苦痛の解除
これはベッド上であれば、適宜姿勢変換をすることや、車いすへ離床することが重要です。また、ベッドでも通気性の良いマットレスの選択など福祉用具の選別も重要です。

3.不作為による廃用性症候群の予防
廃用性症候群は、関節拘縮、筋力低下、体力低下、心機能低下など色々な症状があります。
これも不動による苦痛の解除とやることは似ていますが、動けない方に対してはベッドでの姿勢の重要になります。

4.変形・拘縮予防
人は動かなければ身体が硬くなります。経過とともに変形・拘縮と進行していきます。これを防ぐには適宜動かすことが重要になります。

5.呼吸の安楽
呼吸は胸郭(肺を囲む肋骨や胸椎のユニット)が硬くなると、やりにくくなります。よって、胸郭が硬くならないように適宜動かすことが必要になります。

6.経口摂取の確保
傾向摂取が可能な方であれば、それが持続できるように、食べるのに必要な歯、咬む筋肉、飲み込む筋肉をケアする必要があります。
誤嚥リスクが高い方に関しては、食事形態を食べやすい物に変更することも重要です。

7.尊厳ある排泄手法の確保
動けないからオムツという発想は本人の尊厳を傷つける可能性がありますので、可能な限りトイレでの排泄を試みることが大事ですが、これには同居人の協力が必要になります。
なるベく身体に負担のかからないような介助方法の指導は重要になります。

8.家族へのケア
家族の高揚感と落ち込み間は患者様より大きく、頻回に起こると言われています(「スピリチュアルケア」より)。
これはリハビリだけでなく全職種が行うことですが、リハビリ職種もここは忘れてはいけない項目かと思います。

これらの役割の中で、リハビリ職種ができることはたくさんあると思われます。
しかし、介入時間は限られているので、できることが少ないかもしれませんが、終末期はチームアプローチなので、他職種で賄えない部分で活躍できるの理想だと考えています。

遺体にも人権がある

これは法医学者の三澤先生がおっしゃっていた言葉のようですが、大田仁史氏の書籍には、遺体は人体そのものの形が人権に関わると述べられいます。
つまり、関節拘縮が著明になり棺桶に身体が入れない状態になると、骨を折って棺桶に入れることになりますが、これは人権侵害ともいえるのです。

そんなこともあり拘縮予防に対するアプローチは、生きている間の苦痛の解除や介助負担の軽減だけでなく、死後にも関わると考えられます。

関節可動域訓練ポジショニングってリハビリ職種の中でも理学療法士や作業療法士が得意とするところですが、終末期では重要なアプローチになると考えています。

トータルペインという考え方

がんの終末期になると、がん性疼痛というのがあります。これはがん治療を受けている1/3、進行がんの2/3にみられるそうです(「がん性疼痛ケア完全ガイド」より)。

終末期では患者様の痛みをトータルペインとして捉え、患者様とご家族のQOLをできる限り良好にすることが終末期ケアの理念としてあります。
それが下の図のような考え方になります。

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上記のことで、リハビリ職種や介護職の人にはスピリチュアルな痛みというのは馴染みがないかもしれませんが、これは人間として生きることに関連した経験的一側面で、体験を表す言葉になります。

スピリチュアルペインコミュニケーション
これは、人として生きる支えを意識しながら日常のコミュニケーションを図ることをいいます。
難しい答えが必須ではなく、一人の人間として相手への思いやりがあれば自然にできることと言われています。
とにかく、傾聴と共感が基本で、指示や命令の言葉は用いないものです(「スピリチュアルケア」より)。

まとめ

終末期でのリハビリ職種の役割は色々ありますね。
本人と家族の意向を聞きながら、医療・介護チームと協働してリハビリ職種ができること、役に立つことをやっていくのが良いですね。

介入する際は、がんの末期や重度の関節拘縮の状態では骨折しやすい状況のため、そのようなリスクを頭に入れておくことも専門職として重要だと思われます。

今後、医療が病院から在宅へ移行してくと言われていますので、在宅では終末期と関わることが増えるかもしれませんね。

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