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「解約ページにたどり着いたユーザーを止めるのは難しい」サブスクリプションサービスに潜む課題解決のコツは“行動の分析”

「Amazonプライム」「Netflix」といった書籍・動画配信をはじめ、食品、服、生花の定期便など、あらゆる業界やジャンルで広がりを見せるサブスクリプションを用いたサービス。

Kaizen Platformでは、そんなサブスクリプションビジネスにまつわるいくつかのプロジェクトがあります。今回、話を聞いたのは、サブスクリプションサービスの「解約抑止」を担ったことのあるプロジェクトマネジャーとアカウントエグゼクティブ(営業)の3名。

前後編にわたっておくる本記事。前編では、そもそも「解約抑止」とはどのようなプロジェクトなのか、具体的な施策や、進めていくうえで難しさを感じた点などを話してもらいました。

サブスクサービスを心地よく長く利用してもらうために何が必要か考えるのが「解約抑止」チームの役割

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──今回は「解約抑止」というテーマでお話をうかがえればと思っています。お仕事の内容は、どのようなものでしょうか?

多田朋央(以下、多田) 私たちが取り組んでいるのは「サブスクリプション」(サブスク)ビジネスでの解約抑止です。サブスクとは継続課金のことで、分かりやすく近年浸透しつつあるサービスから例を出すと、「Hulu」や「Netflix」などの動画配信サービスが挙げられます。身近なところで言えば、携帯電話もサブスクだと言えるでしょう。

その名の通り「継続的な課金」で成り立っているビジネスのため、ユーザーが退会や解約をしてしまうと事業の売上にダメージを与えることになります。私たちのミッションは、いかに辞めてもらわないか、ずっと使ってもらうかということ。その支援をさせてもらったり、お客さまに適したプロジェクトを企画したりするのが、主な仕事です。

僕は営業として、西田、河谷という二人のプロジェクトマネジャーとそれぞれ進行することが多いですが、基本的には担当しているサービスはバラバラなので、3人で一緒に、ということはありません。

西田有希(以下、西田) Kaizenは複数のサブスクビジネスに関するプロジェクトがあり、プロジェクト単位で目標設定をして、業務を行うのですが、そのなかにそれぞれ「解約抑止」の役割を担うメンバーがいるんですね。今日、同席している河谷、多田は、この解約抑止に携わったことのあるメンバーです。

──全員で集まって事例を共有する機会はありますか?

西田 私と河谷の役割は似ているので、「 A社ではこうやっているんだけど、 B社ではどうしてる?」というコミュニケーションは、つど行うようにしていました。同じ課題に向き合っているので、相談やノウハウの共有は必須ですね。

──実際に担当されていたプロジェクトについて教えてください。

河谷弥代子(以下、河谷)  私は電子書籍のサブスクサービスの担当でした。電子書籍ストアの中に、月額数百円で読み放題の定額制プランがあり、その解約抑止をしていました。解約するユーザーを引き止めることに加えて、新規加入者の導線も作るのですが、解約されたユーザーに対しても「どうしたら再度加入していただけるか」と、施策を練る取り組みです。

西田 私は二つです。まず、動画配信サービスのサブスクが一つ。もう一つは食品メーカーさんの定期便を担当していました。登録すれば、コーヒーマシンが家に無料で届くサービスがあって、コーヒーのカプセルをユーザーに定期で購入してもらうんですね。

テレビCMの効果もあって認知度が上がり、新規加入者は増えていたのですが、そのぶん解約も多くて。そこを大きな課題として取り組んでいました。

「解約ページ」にたどり着いたユーザーを引き止めるのは難しい

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──具体的には、どのように解約抑止をされるのでしょうか?

西田 たとえば、「このWebページでユーザーがよく解約します」ということが分かりやすいクライアントさまだと、絶対にそこで止めたいですよね。Kaizenは A/Bテストの会社なので、A/Bテストしながら、該当のページを改善をしていきます。

担当していた食品メーカーさんの場合は、 Webではなく電話での解約なので、ユーザーがどのページを見て決断したのかが分かりません。解約にどういった理由があるのか、からクリアにしていかなければいけないので、解約の前にどのページを見ていたかなど、ユーザーの行動を分析していきます。

通常、電話で解約された方が、どのWebページを見ていたかというのはログを追うだけでは分からないのですが、電話をされた方の会員IDとWebの会員IDを紐付けることで、行動の分析ができるんですね。そこから、どういった施策をやるか、クライアントさまと一緒に考えていきます。

河谷 よく解約の最後のページに「解約しますけど、本当にいいんですか? まだ無料で利用できるものもありますよ……?」みたいなページってありますよね。そのページを改善するのも一つの手段なのですが、結局は、最後のページに辿り着いた時点でユーザーの「解約したい」気持ちは固まっていて。

私も西田と同じように、そこに至るまでの行動を分析して「おおよそ、この基準に達する場合は解約しやすい」というのをデータ化していきます。たとえば、30日間無料のサービスの場合、すでに「28日目に解約する」というデータが出ているので、「では、28日目に継続に繋がるようなクーポンを配信しよう」などの解約防止の取り組みができるわけです。

──解約を決意した人の行動パターンを見て、止めるために事前策を打つわけですね。

西田 「やめたい」人を「やめないで!」と引き止めるのはとても難しいので、私たちはそれ以外のアプローチ方法も同時に考えて提案するようにしています。

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資料:「解約抑止を実現する上での施策方針」

多田 資料を見てもらうと、大切なのは入会したユーザーにどうアクティブになってもらうかという点。私たちは「オンボーディング」と呼んでいます。

コーヒーのサービスだったら、たくさん飲んでもらって習慣化につなげるだとか、電子書籍だったら、入会後にまずは何冊か読んでもらうようにするか。最初にどうアクティブになってもらうか、そしてアクティブな状態を続けてもらうかが大切になってきますよね。

やはり、定額サービスに申し込んでも実際に使うまでには至らないユーザーが一定数いらっしゃいます。ジムにしても、通い続けることの習慣付けって難しいじゃないですか。そこを、オンボーディングの時期から大事にして、定着してもらうようにしています。

クライアントに解約までの過程の重要性をどう理解してもらうか?

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──取り組みのなかで、みなさんが苦労されていた点はどこでしょう?

河谷 アクティブ化しそうなユーザーや、だんだんアクティブな状態から下がってきているユーザーのモチベーションをどう維持するか。その部分は数字では出づらいので、集計に結構苦戦しましたね。

また、Kaizenの場合、いつもは自社ツールのみを使って A/Bテストをし、「これくらい数字が上がったので何%改善しました!」という報告をするんです。解約抑止の場合は、それだけだと数字が追えないので、クライアントさまの持っているデータをもらって前月、昨年対比で見るというのを先方と擦り合わせたうえで、レポートを作成し提出するという形もあるので、そこもコミュニケーションが複雑で難しいなと思います。

西田 前提の話かもしれませんが、解約を引き止めたいクライアントさまに対して、解約までの過程の重要性や、そこに対するアプローチを理解してもらうまで、すごく時間がかかります。やはり、目の前で流れていくユーザーを止めたい、という話に終着してしまって。「過程」がどれだけ大切かを理解してもらうのは、まだまだ苦労している点です。

ただ、数字に出ると説得もしやすいので、分析から始めてみて「一緒に社内説得しましょう」ということもできるんですね。特に営業の方たちとは、その段階から一緒に入って提案することで、うまく進むこともあります。

[後編はこちら]



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