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ターミネーターとガーゴイルズとの出会い

毎年、 ラスベガスで行われる スキー 関連用品 の 展示会 SIAを視察していました。
業界全体としての傾向、競合他社の動向、 新製品のチェック、また珍しいもの、 変わったもの、 何か新しいものは無いかと会場を見て歩きます。

その 年 は ヒルトンホテルに隣接した広大な展示会を見て回りました。
大概は自由になる一人で周ることが多いのです。
見たいものを見る。興味のあるものを見る。時にはブースで話し込んで、
他の商品を見せてもらったり、特徴を聞いたり、価格を確認したり、
時間はいくらあっても足りません。

夕方になり、ホテルに帰ろうと、隣の小さな会場をウロウロしながら歩いていました。
180cmのテーブルが2つだけあるような、装飾も施していないブースに同じモデルのサングラスがポツンポツンと置いてありました。

見た瞬間、アレ、変だな、変わっているな!! が第一印象でした。
よく見ると縁の無い2 眼のサングラスですが、
レンズが変わっていました。

従来のレンズは球面の一部をカットしたようなレンズ形状ですが、
そのサングラスはレンズの横のカーブと縦のカーブが違っていたのでした。

人の顔にサングラスレンズを出来るだけ密着するようにすると、
深い8カーブで目に密着するようになるのですが、縦も8カーブとなるので、どうしても頬に接触しがちになります。
このサングラスはそれを解決するために横が8カーブ、縦が4カーブの
レンズで出来ていました。
このレンズは世界初めてのトーリックレンズのサングラスだったのです。

ガーゴイル4

ブースで話し込む、よく見せてもらうと、左右のレンズは一体でつながっていて、繋がり部分は鼻パット部品で隠しているデザインでした。
単純な設計ですが、よく考えられた設計でした。

何より、この様なレンズを作るとなると、レンズ設計から金型製作、
レンズ成形と、解決すべきテーマはイッパイです。
それを見事に解決して、商品化されていました。

彼らが言うのには、アメリカ軍のサングラスとしては空軍には
レイバンAVIATOR がある。
しかし、レンズはガラスで割れる。
空軍の場合はサングラスが割れる状態であれば、コックピットは
被弾していて、どうにもならない状況だと。
陸軍の場合は至近弾が破裂すると、砲弾の破片以外に石ころや、砂、爆風で飛ばされたものが飛んできて、目をやられて、盲目となる。

戦場で目が見えないと、足手まといになり、著しく戦力が低下する。
一人の盲目の兵士をサポートするには、少なくとも2人の兵士が戦線を離脱しなければならない。
このサングラス ガーゴイルズはそのような状況で、目を守るためのサングラスだと彼らは強調した。
目にフィットして、目を守るための形状、構造を商品化したものとなっていました。
私はこのサングラスを日本で展開したいと思い、サンプル発送を依頼しました。
私としてはOEMを依頼して、スポルディングの名前で日本で売りたいと思っていました。
帰国後、何度かメールのやり取りをして、見積もりをもらいましたが、あまりに高い価格だったので、その時はあきらめざるを得ませんでした。

シュワルツェネッガーターミネーター2

1985年5月に日本でターミネーターが公開されると、シュワルツェネッガーが掛けているあのサングラスは何か?と話題になりました。

それが、ラスベガスで見たガーゴイルズだったのです。

当時、会社には別部門として、メガネ小売店が難波 虹の町
(今は難波ウォーク)にありました。

サンプルが企画室にあるので、お店の宣伝を兼ねて
ターミネーターのポスターとガーゴイルズを数点展示したのです。
すると、日本には無いガーゴイルズだったので、アット言うまでに売れてしまいました。
また、残りのサンプルも全部売れてしまったのです。

そこで、会社の貿易部はガーゴイルズ社と正式に代理店契約を結び、
輸入販売を始めたのです。
これは、単品のサングラスとしては爆発的な人気と売り上げを残しました。
それ以降も、このレンズを生かした、メタルタイプの商品も開発し、
一つの大きなビジネスにつながりました。

失敗談もあります。
夕方、勤務時間外に電話があり、突然、「ピストルで撃ったらサングラスが壊れ た。どうしてくれる! 」
といった内容でした。

この サングラス のレンズは ポリカーボネートで作られており、
 耐衝撃性が抜群で、
アメリカ 陸軍等の兵士にも多く使用されているモノです。
小口径のピストルの弾丸だと防ぐことが出来ると
英文の取り扱い説明書に書いて ありました。
それを翻訳時に、口径を間違えて、壊れない等と
日本語取説に書かれたのです。

日本でピストルを撃つか?
と冷や汗ものでした。
こんな エピソードもあっ たガーゴイルズ サングラスでした。 

ガーゴイル


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