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『鼻毛和牛暴れ祭』

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『鼻毛和牛暴れ祭(下ノニ)』

『鼻毛和牛暴れ祭(下ノニ)』

 鼻の穴から突如として顕現した太い毛。
 無意識のうちに抜こうとしていたのだろう。

 神崎は僕を見て首を振り「ダメ」という唇の動きをともなってそれを止めた。

 僕はまるで親にたしなめられる子どものようだった。

 金田は上條の鼻毛を今すぐに引き抜いてやりたかった。しかし、その衝動に塗り潰されるのを拒むように水槽を見つめながらこう言った。

「あなたはどこまで知っているのです?」

 それは僕で

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『鼻毛和牛暴れ祭(下ノ一)』

『鼻毛和牛暴れ祭(下ノ一)』

 弦月の浮かぶ夜空でも見せようと、也彦はおさよを誘う。

 さぞかし不安であろう。
 少しくらい気晴らしになるやもしれぬ。

「おさよ、具合はどうだ、まだ痛むか」

「大丈夫、日の光りに当たらなければ、どうということはないみたい」

 確かに目の症状は治まっているし、火傷のような爛れもすっかり消えている。

「お月さんが綺麗だ。少し縁側へ出てみるか」

 也彦には別の思惑もあった。

 月の光でさ

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『鼻毛和牛暴れ祭(中)』

『鼻毛和牛暴れ祭(中)』

 あれから一月。

 雨が降る気配は無く、蓄えも底を尽きかけた。

 山菜の時季はとうに過ぎ、文字通りの野草を摘んできては腹の足しにした。

 反して順調に伸び続ける鼻毛の疎ましいこと、このうえない。しかし、おさよが「お告げ」と言う以上、おいそれと切る訳にもいくまい。

 それは筆で描かれた悪戯の如く、右の鼻の穴から太々しく伸びていた。

 田畑に引く水は既になく、仕事も一向に進まない。乾いた土塊

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『鼻毛和牛暴れ祭(上)』

『鼻毛和牛暴れ祭(上)』

 氏神にお参りでもしようと也彦は涸れかけた谷川で手と口を濯いだ。

 此処の水まで少なくなっていやがる。
 こう、日照り続きじゃ無理もねえか。

 気を取り直し石段を数えながら登る。

 ひい、ふう、みい、よっ。

 やっぱ、めんどくせえ。
 一段飛ばしで駆け上がる。

 昼なお暗い社に人の姿はない。

 適当なところで足を止め、柏手を打つ。
 誰でもいいからたまの願いくらい、聞いてくれや。
 身

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