推しへのプレゼントが届かなかった話

はじめに
・非難や糾弾の意図はありません
・許してないけど具体的な企業名は伏せております
・めんどくせぇオタクの自分語り日記としてお読み頂ければ幸いです
・でも二度とあの店では買わねえ

推し声優は甘いものが好きと公言している。
推しが演じているキャラクターにバレンタイン生まれがいる。
という理由で、バレンタインチョコを選ぶのには熱が入る。
事務所は食品を送るのOKだけど、本当に推しに届くかは分からないし、食べるかどうかはもっと分からないし、きっと同担がもっとセンスの良いチョコを送っているけど、一瞬だけでも推しの目に止まるものを贈りたい。そんなやや後ろ向きのオタク心で選んでいる。

というわけで今年も都内某所の百貨店でそこそこのチョコを買い、日付指定で送ったのが2月上旬のことだった。
バレンタイン前後は各種ソシャゲのイベントをひたすら走り、イベントが終わったと思いきやリアルイベントが立て続けに延期・中止になって凹んだり気分転換に楽しいことをして生きたりしているうちに時間は流れていき、ホワイトデーも近付く3月中旬、コンビニでプリンを買うか悩んでいるところで電話が鳴った。
スマホの画面にはアドレス帳に登録していない03から始まる番号が表示されていた。どうせ勧誘か何かだろうと思い電話をとった。
電話の相手は、都内某所の百貨店の食品部門の偉い人だった。

曰く、先月購入頂いたチョコレートの発送が漏れていた。
曰く、返金か同等品の発送をしたい。
曰く、直接訪問でのお詫びがしたい。

「は?」という声が出た。
いや、お前の店舗、一等地にあるよな?それなりの場所でそれなりの価格帯のものを売るというのは信頼を売っていることではないのか?チョコ送るって行為だけしたいならレターパックライトで板チョコ送ることだってできるんだぞ?そうせずに高いところで買うっていうのは贈る相手に喜んで欲しいとかラッピングとか味とか到着日前日に発送してくれるとか、そういうのを信頼してるんだぞ?は?人間不信になるぞ?病むぞ?診断書出して賠償金タカってやろうか?SNSでお気持ちスクショ出して燃やしたろか?
こみ上げる感情のまま早口で怒鳴り付けたいのを堪えながら、何も買わずにコンビニを出た。夕方の風が冷たかった。
宅配伝票の控え見て、ちゃんと届いてるのか追跡かけとけばよかったかな。自分で発送かければよかったかな、日付指定かけずに送ればよかったかな。ひたすら自責の念に囚われながら、少し離れたベンチに腰を落ち着けた。
電話の向こうは物凄く恐縮した声で、送り先にも謝罪の電話と事情説明をしますか、と言い出したのでそれは止めた。厄介になりとうないし、電話を受けるのは推しではなく事務所の事務員さんだからだ。届かない言葉には意味が無い。

・返金だけでいい。クレカ決済だったから取り消し処理をしてくれればいい
・送り先に指定している人間への同等品の発送や連絡は不要である。送り先は芸能事務所であり、今回の贈答は誕生日も兼ねていたからホワイトデーに送っても意味がない

この2点をつっかえながらも伝え、訪問日時の調整をし、電話を切った。同時に涙が溢れた。頭の中はぐちゃぐちゃで、涙は止まらなくて、寒いから風邪引く前にさっさと帰りたいのに、足がうまく動かせなかった。落ち着くまで、話を聞いてくれそうな友人や夫に怒涛のメッセージやスタンプを送りまくった。寒い屋外で泣きながらスマホをいじっている様子は今思い返せば不審者だったろうけれど、知らない人間に見られてどう思われるかについて考えられる余裕は無かった。
べそをかいている内に天才的な友人から「推しのラジオにこの話を送れば?」という天才的なアイディアが来たので、天才に文章を見てもらいメールを送った。重くない、笑いになる文章を考えてアウトプットしているうちに気が紛れていき、無事に送信できた頃には歩けるようになっていた。ほんのり風邪を引いたけど。

それから3日後の責任者の来訪時は、万が一がないように背後に夫を立たせたが、無事に一滴の血も流さずに完了した。
名刺になんかごつい肩書きが書いてある責任者2名のエンドレス頭下げと返金の他に、私が推しに買ったのと同じ価格のホワイトデー限定ギフトを受け取った。
こういうものは泡銭と同じでパーっと食べてしまうに限ると思い、作り置きしている水出しコーヒーを片手に一つずつ味わいながらも蛮族のように食べた。5分もかからずに一粒1000円オーバーのチョコレートたちは全て腹の中に収まっていった。チーズおかき(好物)を食べる時の方がまだ味わって食べてるってぐらいの雑さで食べた。
高いものは高いだけの理由がある。美味しい。雑に食べても舌と鼻腔に余韻が嫌味ではない形で残る。情報を食べているだけかもしれないけれど、香料ではなくきちんと果物を使っていることがわかる甘酸っぱさやほろ苦さは五感に鮮やかに突き刺さる。
こんなに美味しいブランドが出してるチョコなら、バレンタインギフトも素敵な味がしただろうと思っていたら涙がこみ上げた。
届くかわからないと思いながら送り続けているけど、送らなくていいとは一言も言ってないぞ。そんなことを思いながら、結局少しだけ泣き、喪失感で精神が沈んだ。

オタクとしてはやらかした店員を一族郎党ひとり残らず人間として生まれたことを後悔させたいと、こうやって文章にしている今も尚思ってるけれど、社会人としては謝罪を受け入れたのだからもう先方を許さなければいけいないと理解していて、正反対の意見なんだけどどっちも自分の頭から出ている考えで、でも両立はできなくてという事実がハチャメチャにメンタルをガタガタにしていくのが分かった。下手をしたら最初の一報を受けた時よりも菓子折を完食した直後の方が凹んでいたのかもしれない。甘いものが人を幸せにするのは、幸せになろうという下地があるからなんだな。私デブだからずっと甘いもの食べれば幸せになれると思ってたよ。
日が経つ内に許す、ことは絶対にないけど悲しみは薄れていくのが自分でも分かって、時間の流れって優しいけど残酷だなと笑えるぐらいの余裕はできたけど、落ち着くまでの数日間は修羅場だった。

そして。
べそかきつつ天才に校正お願いしつつ送ったメールは、幸か不幸か不採用になった。難しいね。
でも、こっちは送信完了の自動返信メール来たから、推しの目には届いてると思うから、べっ別に読まれなくても悔しくないんだからねっ!
あーでもチョコ届いてたら一番よかったんだけどなー!
来年は今年送れなかった分上乗せして贈るさ。やってやるとも。

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