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横浜国立大学のYGSAで建築を学ぶ学生 建築のこととか、旅のこととか、アートのこととか…

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横浜国立大学のYGSAで建築を学ぶ学生 建築のこととか、旅のこととか、アートのこととか、本のこととか、写真のこととか 好きなものを

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じいちゃんの一周忌とノルウェイの森と

2021.08.07 じいちゃんの一周忌 去年の夏、突然でバタバタと何度も山梨と行ったり来たりして、慌ただしい中でなんだかこれまで輪郭なくボヤッと自分の中にあった死というものが急に明確な線で描かれ出している感覚があった。でもその時は忙しさに感けて、よく見ないまま通り過ぎてた。 それで最近、村上春樹『ノルウェイの森』,1987 を読んだときに、一年前のあの感覚が不意に現れてきた。主人公のワタナベ君が親友の死から学んだこと 「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んで

    • 多様性とは抽象性

      「多様性とは、つまり抽象性の問題なんだ。」 西沢立衛さんがスタジオで私に言ってくれた言葉。これがなかなか難しい。 つまり、西沢さんが言いたかったことは、 みかんが入った箱を遠くから見たら全て同じに見えるけれど、近づいてみたら大きさが違ったり、傷があったりと違いが見えてくる。 多様性とはコトモノを見るキョリというのが重要な問題なのではないかということだった。キョリによってはそれらは一様に見えるし、また違うキョリでは多様に見えてくる。 その話は感覚的にもよくわかるし、納得

      • 横尾忠則というアーティスト

        東京都現代美術館で開催されている「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」に行ってきた。 展示物は全く写真が撮れなかったけれど、すごくよかったので簡単にレポート。 この展覧会は横尾忠則の初期の作品から今年描かれた最新作まで網羅されていて、彼のアーティスト人生を歩いているようだった。 彼の作品をあまり知らなかったけれど、 多くが自身の人生の中で大きな経験がモチーフとなっていた。例えば、子供の頃に見た映画や飼っていた猫など。そのモチーフたちを連作で描くことで

        • 9.11.2021

          Netflixのドキュメンタリー「Turning Point: 9.11 and the War on Terror」を見た。 9.11はあの日の102分間に起きた出来事ではなく、冷戦時代のソビエトアフガン侵攻から2021年まで半世紀弱続く歴史の中の出来事なんだとハッキリと感じた。 私の“今”は私が生まれる前から描かれた物語の中にあると見直すきっかけとなるものだった。

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          推し、燃ゆるラベル社会

          宇佐見りん「推し、燃ゆ」,2020 の序盤で主人公のあかりが鬱になり、病院で診断を受けて、ふたつほど診断名を受ける。そこであかりは 「肉体の重さについた名前はあたしを一度は楽にしたけど、さらにそこにもたれ、ぶら下がるようになった自分を感じてもいた。」 と語っている。 この文章は現代社会の癌のようなものを私に突きつけた。 それはこういうことだったと思う。 現代においては全てのものごとに名前がつけられラベルを貼られる、名前を持たないものは得体の知れないものとなってしまう。けれ

          推し、燃ゆるラベル社会