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#8 Ph.D. seminarに参加させてもらった話

先週,現在お世話になっている研究所の部門主催の合宿” Ph.D. seminar”に参加させてもらいました.今日はその合宿に関する記事.

そもそも皆さんPh.D.ってご存じですか...?対応する日本語としては,"博士課程在籍学生"といったところでしょうか(Ph.D. はDoctor of Philisophy(哲学博士)で,学術的に修士相当とみなされているところから派生して学術系全般で使用されるようになった言葉みたいです).所謂”ドクター”と呼ばれる学生がこれ.日本の教育課程の果ての果て.一番最後まで行くとここにたどり着く.今の僕がそうなんですけど.

ただ,日本語で対応する言葉はあってもその存在は雲泥の差(これについても徐々に口述しようとは思います).

1. ”Ph.D.を無事に終えるために必要なこと”とは

"self management",”time management”,”stress management” 等々,Ph.D.を無事に終えるために必要と思われる項目がいくつも用意され,Ph.D. student 2名がそれぞれのthemeに割り当てられる.担当が事前に調査したり色々準備をし,セッションを管理する.科学的な論証もいくつか紹介されたのちに,メインパートのグループワークに突入し,各グループが議論した内容を共有する.

ざっくり会の流れを紹介するとこんな感じでしょうか.

モチベーションを維持するために必要なこととか,D論を効果的に書くために必要なことを,教授や先輩ドクターを交えて議論する,そんな場でした.

2.そもそもこの”seminar”が存在するということ

そもそも無事に終える必要があるのか.僕らは好きでやっているわけであって,そのことをケアしてくれる人なんているのかよ.

これが僕の率直な感想です.教授の先生が何度も言っていたからこれは間違いないと思うのですが,”辛いことがあったらすぐに言ってくれ.君たちが苦労して研究を進めることは僕にとっていいことではない”,と.

こんなこと指導教官に言われたら,天と地がひっくり返りますよ.別に言ってくれと頼むつもりもないんですけど.

とにかく,大切にされていることを感じたし,Ph.D. studentはこの機関にとって重要な研究戦力である.これを身をもって感じました.日本でこんなことやっている博士課程学生っているのだろうか...いたら単に僕の経験不足です.ごめんなさい,と同時に教えてほしいです(学会では似たようなもので,若手研究者の議論の場所が設けられているパターンがありますけどね.ただ実際の研究に反映されずに日々の愚痴を言う会にとどまっている気がしてならない).

3. 全く機能しなかった僕の思考回路.必死にコメントを振り絞り,presenceを示した一週間.

”そんなもん好きでやっているんだから悩みようがないし,それを自分で解決するのがこの課程に求められていることではないのか.”

僕は向き合ったことのない問に頭が真っ白になり,思考が停止してしまった.しかしグループの議論はどんどん進んでいく.

すっかり置いていかれてしまった僕.ただでさえ外部の人間なのにここでpresenceを示せなければ完全に孤立してしまう.それだけは嫌だ.そう思って必死に議論に食いつきました.とにかく思っていることを言葉にしてみる.それだけでも周りのみんなは話を聞いてくれ,ディスカッションに混ぜてもらった気分になれたので,効果はあったと思っています.

圧倒的に不足しているディスカッションすることに関する経験値,そしてそれを英語で実行する英語力,そして向き合ったことのない問への対面,このトリプルパンチは相当ストレスフルな出来事で,様々なショックを受けました.いい意味で.

4. 日本の"博士課程学生" vs. "Ph.D. student"

扱いが全然違う.

そう実感しました.明らかに戦力として重宝されている”Ph.D. student”.彼らが行っているのは”work”であり,教授も彼らのパフォーマンスを期待している.給料もしっかりもらっているから立派に仕事をしていると言えるだろう.だからこそこのような機会が成立するし,双方真剣に議論する.

一方で博士課程学生はどうなんだろう.僕らはあくまで"学生"であり,世間からの評価も”学生の延長線上”という見方が強いのも事実だと思う.さらにもっと悪いのは,これは完全に先生に依存してしまうこと(僕はそのようなことを感じたことがないからいい先生に恵まれたとつくづく思う)だけど,環境が整っていないままにパフォーマンスを要求する先生もいるという話だから困ったものだと思う.学生は学生らしく”study”してればいいという反面,パフォーマンスは要求されるという理不尽.

ただ主観的な話をしてしまうと,僕は現在の環境に全く不満を抱いていないし,むしろドイツの研究生の待遇に少し疑問を抱いてしまった.自分で目標を設定して,自分で手法を考えて自分で行動を起こす.問題解決の一連の動作を全て一人で出来るこの素敵な時間を,そこまで監督者にケアしてもらう必要があるのか,という疑問だ.

ただ日本の博士課程学生が全員このように思っているかどうかは定かではないし,環境はもう少し整えられて然るべきだ,とは思う.この先研究力を失って日本に何が残るというのか.自分で言ってしまうと大変違和感を感じてしまうが,若い研究者を育てないと日本はお先真っ暗だ.実際僕もこの先研究を続けるかどうかは迷っているし,”就職は修士まで行っていれば大丈夫”などと言い就職を全ての学生の究極目標に据えてしまっているこの現状は変わるべきだと思う.

みんなもっと研究しようよ.そのための環境はもっと整っていいよね.

これが今日の僕の結論ですが,みなさんいかがお考えですか.そこのあなたの考えを聞きたいです.こんな脈絡のない主観満載の文章を最後まで読んでいただいて本当にありがとうございます.もう少し力を振り絞って,スキやコメントを頂けると大変嬉しいです.よろしくお願いします.

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