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キングクリムゾン〜紅い王国への招待

キングクリムゾンはイエスと並び現在も活動するプログレバンドである。
年末には来日公演も予定されている。
本来からいけばキングクリムゾンの全貌を記事にしなければならないが、筆者はこのバンドに関してはいわゆる第一期、1974年のアルバム「レッド」までしか聴いてない。

プログレの中でもピンクフロイドと並ぶ横綱級であるが、キングクリムゾンはデビューアルバム「クリムゾンキングの宮殿」を送り込み、ビートルズの「アピーロード」をチャート一位から蹴落としたことでも知られるバンドだ。
初めてのアルバムが最高作品であり、完成作なのである。
プログレに限らずほとんどのバンドはデビューを経て音楽性や技巧性を広げて普通上昇していくものだが、彼らは違っていたといえる。

元々の音楽的な主導権は管楽器担当のイアン・マクドナルドが握っていて、リーダーのロバート・フリップが総合的に取りまとめた編成だったと思う。
この作品は即興演奏で曲が展開するムーンチャイルドを除いた後の三曲はプログレッシブ史上に残るものだ。

○21世紀のスキッツオイドマン
禁止用語が訳されてついてたが現在はカタカナ名が使用される。
ヘビーなサウンドでメタルやハードロックの原点に位置付けられるナンバー。
ブラスセクションが加わってるところが一味印象が違う。

○エピタフ 墓碑銘
グレッグレイクの悲哀を感じさせるボーカルにメロトロンが絡む。
オーケストラなしでドラマチックなサウンドを聴かせる高度なテクニックに驚嘆する。
西条秀樹やザ・ピーナッツといった日本のアーティストらもカバーした名曲。


セカンドアルバムも延長線上にあるが、イアンマグドナルドやグレッグレイク脱退のマイナスはインパクトに欠けるが幻想味あふれるサウンドは維持出来ている。
その中でもタイトル曲の「ポセイドンので目覚め」は筆者は最高傑作だと思っている。

○ポセイドンの目覚め
エプタフやクリムゾンキングの宮殿と同じくドラマチックなスケールの曲。
イアンマグドナルドの穴を埋めるべくフリップ教授が弾くメロトロンは完璧。
5分50秒あたりから入るエンディングと繋がる演奏はアトランティス大陸の幻想感が100%だ。

そして3作目のリザードはヒロイックファンタジーを元にしたやはり幻想感あふれるプログレサウンド。
演奏には不参加だが、作詞面のスタッフと支えててきたピート・シンフィールドの影響がかなり大きい。
イエスのボーカル、ジョンアンダーソンが参加したタイトルの組曲リザードは圧巻。
そしてブリティッシュジャズのキースティペット一門が参加してプログレと前衛的ジャズを展開する。

○サーカス
メロトロンとブラスセクションを取り入れ幻想的で前衛感たっぷりの演奏を聴かせる。
ラストは渾沌とした目眩くイメージに幻惑されるだろう。

筆者にとってのクリムゾンはここでほんとは終わりである。
というのも次の作品、「アイランズ」は小品的で幻想感が欠けるのだ。

このあとピートが脱退してロバートフリップ一色の体制になり、インスト色がかなり高まり、前衛色が高くメタル度もアップしていく。
「太陽と戦慄」「暗黒の世界」「レッド」はダークサウンド3部作といえそうだ。
筆者はキングクリムゾンはこの時点でついていけなくなったのだが、初期キングクリムゾンの最終作、「レッド」については衝撃が大きかった。
ゲストを迎えてはいるが、基本は3人で作り上げたサウンドなのだ。
そして今も後期といえるキングクリムゾンの柱になってるのがこの作品であり、到達地点であると確信できる。

○スターレス
2016年のライブか?
メンバーも違い即興演奏が混じる演奏なのにほぼスタジオ盤と変わらぬ曲の正確さにまず驚く。
違いはトリプルドラムを導入してるところ。

もう一方の横綱、ピンクフロイドが内なるダークサウンドを取り入れていたとすれば、キングクリムゾンは外なるヘビーでメタルなダークサウンドを取り入れたといえようか。

最初に戻るが、デビュー時点で完璧だったバンドはメンバーが次々と去っていった。
しかしリーダーたるロバート・フリップは信念を曲げず、商業主義からも背を向けた。
メンバーが変わろうが自己の目指す音楽を追求していった結果が彼のいうところのヌーボーメタルなのだろう。

こだわりのプログレサウンド、それこそがクリムゾンキングの正体なのである。

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