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わたしの野球観戦の景色

プロ野球の開幕が6月19日に決定した.
先の見えない日々を過ごしてきた選手,チームスタッフ,球団関係者の方々には何よりの知らせだと思う.
そして,開幕を待ち望んでいたファンにとっても.
わたしもその一人だ.
しかし,残念ながら球場で野球を観ることはもう少し先になりそうだ.そんな寂しさと,球場に行ける日を楽しみにする気持ちをこめて,わたしのみている球場の風景を書いていこうと思う.

わたしは電車で球場に向かうことが多い.家からの最寄り駅でもチラホラとユニフォームを着た人をみかける.球場に近づくにつれて,ユニフォームを着た人たちがどんどん増えていく.中には,相手チームのユニフォームを着た人もみかけるようになる.「今日は楽しみましょう」,「今日は勝たせてもらいますんで」とその人たちに念を送りながら,球場へと足をすすめる.この時点で既に,気分は高揚している.

休みの日であれば,試合開始2時間前に球場に到着する.2時間前でも,球場の外周には人があふれている.その人波をかき分け,球場グルメとビールを選ぶ.球場のクラフトビールはとても美味しい.

球場グルメとビールを買ったら,さっそく席に向かう.ゲートをくぐり,少し歩くと,視界が広がり,緑の天然芝のグラウンドが目に入ってくる.デイゲームでは太陽に,ナイターでは照明に照らされた天然芝はとても清々しい.

相手チームの打撃練習をみながら,腹を満たす.ベンチ入りの選手を確認し,水分補給用のミネラルウォーターを準備していると,贔屓のチームのシートノックが始まる.プロのシートノックは流れるように無駄がない.限られた時間で各選手が次々と,ボールに関わっていく.グラブ捌き,送球のスピードと正確さ,セカンドゲッツーのベース回りなど選手の動きだけでなく,コーチの正確なノックにも目が奪われる.「プロだな...」と思う瞬間である.

スタメンが発表され,国歌斉唱,メンバー表交換を経て気持ちを整え,試合に入っていく.
声を張り上げ,応援歌を歌うこともあれば,試合の流れにどっぷりつかりフィールドやベンチにいる気分でみていることもある.どちらのスタンスでみていても,ホームランや得点が入ったときには,自然と立ち上がって,声を上げて喜んでしまう.

ちなみにこのときのお供は,ビールよりもかりんとうが多い.ピーナッツ味がお勧めだ.

今では,あちこちに試合を中継しているテレビがあるので,試合中でも買い物に行きやすい.試合開始前に比べると人波は減るが,外周やコンコースを試合中にめぐり,グッズやおつまみを探す時間も楽しい.そしてこの時間は,よく知人に遭遇することが多い時間だ.この遭遇する時間も球場で野球をみることの楽しみだ.

試合の合間に行われるグラウンド整備もプロの仕事だ.選手たちが最大限の能力を発揮できるよう,黒土が均されていく.一つ一つの試合が,色々な役割によって成立していることを実感できる瞬間だ.

5回終了後のグラウンド整備が終わると,ラッキーセブン,7回裏への準備が始まる.7回表のアウトカウントが増えるたびに,チームカラーの赤いジェット風船を膨らます音がきこえてくる.ツーアウトからの四球で焦らされたりしながら,7回裏を迎える.球団歌に合わせてジェット風船を上下させ,得点への期待を膨らませて飛ばす.もしかしたら,この光景はもうみれないのかもしれない.そう思うと寂しい限りだ.

試合も終盤に差し掛かる.競っていれば競っているほど,プレッシャーを感じる時間だ.どちらのチームも,勝利の方程式を形成する投手たちが投げると更に緊張感が増す.勝利を強く意識した作戦となるためだ.
そんな中,白星を意味する白いジェット風船を飛ばし,祝福の花火があがる勝利の儀式ができることを心待ちにしている.

勝利の儀式のあと,ヒーローインタビューをみて,余韻に浸りながら帰路につく日もあれば,相手のヒーローインタビューを横目に帰路につくこともある.帰路の景色は,勝った時のほうが明るくみえる.自分の気分,周りの人たちの表情,スタッフの人たちの雰囲気...チームの勝ち負けが,多くの人の感情に影響を与えることを体感する時間である.

球場から離れていくにつれて,次の試合のことに思考を巡らせる.このとき,野球が好きなことを再確認する.さっき終わったのにまた考えているなと.

野球を好きになってから,これほど野球がない生活は初めての経験だ.この状況でも野球のことを考えている自分は,根っから野球が好きなんだと,心の中で照れ笑いをしている.球場で野球をみれる日を楽しみにしている.

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