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自分でできる決算分析④楽天グループ(損失は減少、でも資本欠損は増大)

 会社自身やマスコミが公表する決算数値は、損益計算書の情報が中心です。でも、損益計算書以外の、包括利益計算書やキャッシュフロー計算書情報も掲載されています。それらを見れば会社の別の姿が見えてきます。
 本稿では,財務諸表の数値を使って自分で会社の経営分析ができるよう,経営指標の比率や数字が何を示すかを学ぶことができます。分かりやすく書かれていますが,決して内容が初歩的なものに留まるわけではありません。本稿で身につけた知識だけで充分,自分で企業を分析し,診断することができます。
 楽天グループの2023年1月1日から2023年6月30日と2024年1月1日から2024年6月30日の第2四半期決算(決算短信)について分析します。 
楽天グループの「決算短信」データの入手法は以下の通りです。  

 「決算短信」の1ページの赤枠に損益計算書の主な項目が示されています。そして、その下には資本合計(楽天グループは国際会計基準(IFRS)で連結決算を行っているので「純資産」ではなく、「資本」となります)が示されています。その後のページに財政状態計算書(国際会計基準で決算する場合、「貸借対照表」ではなく、この名称になります)、損益計算書そして包括利益計算書が掲載されています。


 まずは、損益計算書上の「売上収益」(「売上高」)と各種損益および「資本合計」は以下の通りです。

 上からの4項目が損益計算書項目です。 「売上収益」(「売上高」)は増えていますが、各種損益は赤字です。中間包括損益は黒字になっています。「資本合計」は、一番下の行の日付の金額です。
 次に資産合計等、貸借対照表項目については以下の通りです。

 この表で、「(利益剰余金)」は、「資本」の内訳項目なので、カッコを付けています。また、金額がマイナスなので、金額の前に△を付けています。これは、実は、「負債・資本合計」が「資産合計」より大きくなっているので、これを調整するために「利益剰余金」をマイナスで表しているのです。
 表の一番下の行は、「負債・資本合計」に「利益剰余金」をプラスした金額です。「利益剰余金」のマイナスについては、図で表すと分かりやすくなります。図は、2024年6月30日の数字です。

 損益計算書に損失が計上されると、その分、貸借対照表上の資産が「痩せる」のですが、楽天グループは、連続して「当期損失」を計上しているので、ついに左側の「資産合計」が、右側の「負債・資本合計」より小さくなっているのです。この差額を「資本欠損」といいます。つまり、「利益剰余金」のマイナス額は、「資本欠損」の金額であるということです。各種損失は減少していますが、依然として損失計上なので「資本欠損」は増大しています。

 「利益剰余金」の額をマイナスで計上しているのは、スライド上の下から2行目の「負債及び資本合計」を1行目の「資産合計」と名目上一致させるためです。つまり貸方の出っ張り部分を「利益剰余金」の額をマイナスで計上することによって、「負債及び資本合計」を「資産合計」に名目上一致させているのです。
 この借方と貸方のアンバランスを解消するためには、今後、利益を計上する必要があります。利益が計上されると、その分、借方の資産合計が「厚く」なるからです。しかし、赤字続きなので、アンバランス解消は相当難しいと思われます。
 次に、損益計算書上の損益について売上収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上収益」(「売上高」)に対する2行目の「営業損益」の比率は以下の通りです。

 「売上収益」(「売上高」)に対する「営業損失」の割合になるので、△を付けています。「損失率」なので小さい方が良いため、比率が改善していることが分かります。
 続いて、「営業収益」(「売上高」)に対する4行目の「中間損益」の比率を見てみましょう。

 「中間損失」の「営業収益」(「売上高」)に対する比率も改善しています。
 次に、「中間包括損益」の「自己資本」に対する比率を計算してみましょう。楽天グループは、国際会計基準(IFRS)で決算しているので、「資本合計」が「自己資本」を示します。

 左の期間は、「中間包括損失」だったので、△を付けています。
 次に、セグメント別の「売上収益」と「セグメント損益」を見てみましょう。楽天グループは、「インターネットサービス」、「フィンテック」および「モバイル」の3つのセグメントに分けています。

 「モバイル」だけが、損失を計上し、その結果、合計も損失となっていることが分かります。

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