魚講S2 レポート#1:琵琶湖と近づく暮らしとは~漁師による景観づくり~
海洋水産技術研究所(KAIKEN)の取り組みの一つである「魚講」が2024年10月より再開しました。
noteでは、その「魚講 Season2」の各講演内容を簡単に振り返り、講演に参加できなかった方にもその学びをお届けしたいと思います。
「魚講」についての詳細は以下の記事をご覧ください。
はじめに
2024年11月12日に開催された魚講では、
『琵琶湖と近づく暮らしとは~漁師による景観づくり~』
というタイトルで、“琵琶湖の漁師” でありながら “フィッシャーアーキテクト” の代表を務めておられる「駒井健也」さまから講演をいただきました。
駒井さまは、「琵琶湖の中から淡水の暮らしを届けます」という理念のもと、琵琶湖で採れる湖魚や地域資源を活かし、漁業体験や地域のマルシェへの出店、EC販売などを通じて、琵琶湖の自然と文化を伝える活動を行っておられます。
駒井さまのご活動内容などについては、下記のXのアカウントよりご確認ください。
漁師との出会い
まずは駒井さまが琵琶湖の漁師になった経緯についてお話していただきました。
大学時代、環境建築デザインを学んでおられた駒井さまは、東日本大震災の被災地訪問をきっかけに漁師という存在と出会い、その方々の「生きるたくましさ」に惹かれて漁師を志すようになったということです。
その中でも “琵琶湖” を選んだ理由としては、「田と湖(うみ)が近く存在する」、つまり「人が生きるために必要な場所と魚が生きるために必要な場所が共存している」という、海では見られない風景を見ることができ、この景色を守っていきたいという想いを持ったからと仰っていました。
琵琶湖における水産業の現状
続いて、琵琶湖で行われている漁業や漁獲される魚種など、琵琶湖における水産業についてご説明していただきました。
琵琶湖は湖であるのにも関わらず地形が多様であることから、行われている漁法も多く、その数約20種類にも及ぶとのことです。
その中でも「定置網(えり)漁」「底引き網漁」「刺し網漁」が多くを占めており、駒井さまは「えり漁」を専門とされています。
それら漁法によって漁獲される魚種については、二ゴロブナやビワマスといった琵琶湖固有種をはじめ、こちらも非常に多様です。
しかし、漁獲高を見てみると、その約8割がアユ(食用のコアユ・河川放流用のアユ苗)であるとのことです。
そのため、琵琶湖の水産業における主な収入源は「アユ」であると仰っていました。
湖魚の普及に向けて
突然ですが、琵琶湖などの湖で漁獲される魚 “湖魚” に対して皆さまはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
滋賀県がアンケートを取った結果、
「良い食材だが、価格が高い」「海の魚の方がおいしい」「何のイメージもわかない」といったネガティブなイメージが多いという課題が浮き彫りになりました。
この課題を受けて、駒井さまは湖魚のイメージをポジティブに変換するために取り組み始めたのが、
「湖魚を届け、食べていただくことを通じて、滋賀の価値を高める “KOGYO EAT”」と「漁業体験を通じて、琵琶湖に生きている地元の当事者の暮らしの魅力を共有する “BI-WAKE UP”」です。
これら取り組みの詳細(ECサイトでの湖魚の販売など)や、その他の取り組み(“BIWACO WORKS” など)について、講演では詳細に説明していただきましたが、ここでは省略します。
ご興味ある方はぜひ下記のフィッシャーアーキテクトのサイトをご確認ください。
講演を聞いての感想
最後に、講演を聞いて感じた筆者の感想です。
講演の中で駒井さまが、
「漁業が仕事として成り立たなくなると、魚食文化が無くなる。」
と仰っていましたが、私もその通りだと思います。
そして、この話は琵琶湖だけではなく全国の海面・内水面漁業に関わる話であると思います。
それでは、その対策として何をすればよいのか。
このヒントも講演の中にありました。
琵琶湖で漁獲される魚の一種である「ニゴイ」は、獲っても0円にしかならない、いわゆる外道として扱われていました。
しかし、食べると美味しい魚です。
そこで駒井さまは料理人らと協力して、究極の血抜き等の丁寧な下処理や調理法の発信、湖魚料理の提供など、ニゴイの価値を高める活動を積極的に行った結果、最大1500円まで価格を向上できたとのことです。
「獲れた魚をできるだけ商品にして未利用魚を無くす」
これこそが、漁業を仕事として成り立たせ、かつ魚食文化を伝承するための最適な方法であると、講演を聞いて強く感じました。
この考え方を心に刻み、今後の活動に生かしていきたいです。
最後に
本記事では、2024年11月12日に開催された「魚講 Seson2」にて、駒井健也さまから講演いただいた内容について簡単にご紹介しました。
さらに詳しい内容や聴講者からの質疑応答、講演後のトークセッションをご覧になりたい方は、下記のサイトからログインした後にアーカイブ動画を視聴できますので、ぜひご覧ください。
特に琵琶湖の漁業について、あるいは漁師への就職について興味関心のある方にとって大変参考になる内容だと思います。
次回の魚講は12月12日(木)に開催されます。
講演者は明石だこ専門 金楠水産の「樟 陽介」さまで、タイトルは「究極のたこ体験をあなたに~こんなに官能的な食べ物があっていいのか~」です。
詳細は下記のサイトをご確認ください。
今回も現地(神戸三宮)とオンラインのどちらでも参加できますので、奮ってご参加ください。
皆さまとお会いできることを楽しみにしています!
それではまた次回の記事で🐟