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アルルの街歩き

年中、観光客の多いアルルだが、冬はだらだらと長くいる場所ではない。ほどよい時間に来てさっと引き上げるのがよい。ひと気のない寒々した時間は店も閉まっているし、これは寂しい。よい時間帯にさっさと街のいいところ巡りをして、いい思い出を持ち帰るのが一番だろう。


わたしにとっては、寒い時間を長く過ごしたというのがアルルの一番の記憶だが、来て良かったことはいくつかある。

その第一は、ローマ時代の円形闘技場である。

近づいていくと、野球のスタジアムを外から見上げる感じだ。入ってもこれは現代の野球場のスタンドに上がったスケール感がある。これはまるで神宮球場だ。

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修復はしてあるが、構造は紀元前のものなんだ。一番高いところに上がると、アルルの街が見渡せる。きょうも好い天気だ。気持ちよいねえ。南フランスは、ニースの城山からの家並み、リュベロンにある丘の村々や、アヴィニヨンの高台から見たローヌ川の眺め、円形闘技場のスタンドのてっぺんから眺めたアルルの街と、ほんとうに風景がすぐれている。

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闘技場に近い古代劇場は、外からでも十分にも雰囲気はわかるのだが、闘技場と共通券になっていたので入った。

円形闘技場とワンセットのように入った古代劇場だが、ときをゆったりと心地よく過ごすのには、こちらの空間のほうがよいのかもしれない。血なまぐさい見せもののようなショーに沸き立った闘技場よりも、劇場のほうが芸術性が高い空間となっている。

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狭い街に人が押し寄せてきた。

お昼前から午後2時ごろにかけ、アルルの狭い街はとても混雑した。

この人々はどこから湧き出てきたのだろう。駅と、旧市街の入口にあたる城門の近くのローヌ川の堤防脇の広々とした場所(伊勢神宮の内宮やおかげ横丁に近い五十鈴川の駐車場をのぺっと広くしたようなところ)がバスの駐車場になっているのがあとでわかった。

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ローヌ川を巡るクルーズ船も朝から2隻停泊していた。午後の遅い時間、団体で歩いてきた乗客が整然と桟橋を渡って乗り込んでいった。動くホテルだ。わたしが朝見たときはまだ眠りについていたか、朝食の時間だったのだろう。船内にはドレス・コードが決まっていそうなレストランのぴしっとした白いテーブルクロスの上に食器が整然と並べてあるのが見えた。


観光バスでやってきた団体客は、先頭のガイドさんのあとを集団が付いて歩いている。わたしは、路地を間違ってばかりいるので、人々の流れに沿って歩くことにした。そうすれば、行きたいところにはおおむねたどり着くことができる。



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