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SFのなかのネオアジア②/上海発 高速鉄道とその駅

早朝の地下鉄2号線はその車内も駅の混雑ぶりも、新宿へ向かう京王線を思い出させた。

おまけにこの国では電車に乗る前に必ずX線の手荷物検査がある為
全員が残高不足か期限切れのICカードで入場しようとしていると考えてもらえればわかりやすい。

"貨物輸送の費用をけちって手荷物で花火等の危険物を輸送する人が増え、それによる事故が相次いだ為"

という中国人ですら誰も信じていないあからさまな作り話。

現地で知り合った中国人は「国を一番信用していないのは我々自身ですよ」と自嘲気味に笑う。

現在のところ特に命を掛けて戦うような思想も信条も持ち合わせていない日本人さらりまんである僕の鞄には当然銃も爆弾も入っていないので
ニコリとも笑わない係員の前を無事に通り過ぎ10秒ほどで僕の手元に戻る。

車両間にドアが無く、本来ならきっと開放的で見通しの良いであろう車両の中で人々に揉まれ壁面に映し出される映像広告の漢字が読めないフラストレーションと戦いながら数駅。
分かっていても止める事が出来ない日本人チョップで人を割り、乗り換えの駅へ降りた。


高速鉄道の駅へ向う道は更なる混雑を見せるがこの国ではエスカレータは左右均等に立つのがマナーらしい。

簡体字と~zhenや~guanなど日本人にあまりなじみの無い英語併記によって歪で穴だらけの脳内地図が作製されていく。
もっとも、現地日本人Yさんとその部下である中国人Tさんの後をくっついて歩いているだけなので結局使う必要の無い労力ではある。

高速鉄道の構内に入る前に再び手荷物検査が行われる。
滞在期間中、これを何度繰り返すのだろう。フイルムを焼かないか少しだけ心配だ。

過剰なまでの監視社会は、昼間でもディストピアSFを感じるに余りある。

あまりにも広大な空間。
かつてあった駅を拡張して巨大化していった駅とは違い、はじめからこの大きさで作られている。
日本だったら、中央の空間をこんなに遊ばせては置かないだろう。
これは春節や国慶節の大移動に備えたバッファだ。
形からにじみ出る文化・思想、充満する異国が体内に取り込まれてゆく。

到着した駅ではいつカタナを持ったモーターサイクルに襲われてもおかしくないような景色に出会うことができたし
自律型の監視ロボットというこの上なくディストピア感溢れるアイテムにも遭遇できた。

この国の、この先にあるものは何だろう。

沢山の映画や本で見てきたそれ、ではないことを祈るばかりだ。

女を守りながら走り回るには、

この国は広すぎる。

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