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バズ図解の裏側

1.バズった図解

まずはこちらをご覧ください。2.3万いいね、1.2万RTを獲得しております。これは世界でも有数のいいねとRTを稼いだ図解ではないかと思います。これの裏側を解説します。

2.色弱との出会い

僕は重度の色弱です。緑と赤と茶、青と紫、桃と灰などの組み合わせが全く分かりません。皆さんにとっては違う色だと思いますが、僕にとってはほぼ同じ色です。見え方が違うので正確ではないと思いますが、黄とオレンジくらいの差です。

日常生活には、実は大した影響はありませんが、僕はこの色弱に悩まされてきました。トラウマでもあります。

幼稚園のお絵かきの時間に、幼稚園の庭の風景で木を書いたのですが、僕は、葉っぱを茶色に塗りました。今なら知識として緑を選ぶことは分かっていますが、そういう知識がなかった子どもの頃は、純粋に見えた色、「茶色」を選びました

茶色で葉っぱを塗った僕は総スカンです。まぁ、バカにされます。

「なんで茶色なのー?」
「葉っぱって普通緑じゃん、おかしいのー」

などなど、純粋な好奇心から、子供ならではの遠慮のない表現がダイレクトに心に突き刺さります。ただ、子供のころからポジティブだった僕は別にこういった言葉で落ち込むことなく、「そう見えたから塗ったんだ」と返しますが、この手のシチュエーションを色弱仲間に共有したら、

「自分だったら泣く」
「耐えられない」

と、こういう反応です。まぁこれが一般的な感想ですね。

しかしトラウマはここではありません。この絵を家に持って母に見せたときに僕は心に一生消えない傷を負うことになります。

母は優しい女性で、少なくとも子どもの頃は、いつも僕を褒めてくれました。幼稚園の工作や絵を毎日持って帰っては、「良くできたね」と満面の笑顔で褒めてくれたものです。

この日も当然褒められるものだと思っていたのですが、母が見せたのは今にも泣きそうな悲しい顔でした。いつも笑顔の母が始めて見せた顔。眉をひそめ、泣くのを抑え、口元を手で押さえ、必死に笑顔を取り繕っていました。この母の狼狽した顔が僕のトラウマです。

後で分かったのですが、母は、このときに自分の息子が色弱であることを知ったのです。

色弱は主に男性に症状が現れます。日本では男性の20人に1人が色弱です。クラスに1人はいた換算になります。女性は500人に1人程度。男性に比べると症状が現れるケースは少ないです。

しかし、症状が現れなくても女性は色弱の遺伝子を持ちます。この遺伝子を持つ女性が子供を産んだとき、男の子に症状が出るケースが少なくありません。

子どもが色弱かどうかを知ることは、生まれたときには分かりません。コミュニケーションが取れるようになって違和感を感じ、病院などで検査を受け発覚するケースが多いです。

母は知識としてこのことを知っていて、僕が色弱でないことを望んでいたのでしょう。しかし僕が葉っぱを茶色で塗った絵を見せたとき、僕が色弱であることを知り、その特徴を一生背負うことを嘆き、ひどく狼狽したというわけです。

3.色弱を隠す

幼稚園で色弱を知り、小、中、高、大学と成人し、ものすごく苦労したわけではないですが、色が分からず苦労したことはあります。具体的には、以下のようなことがありました。

地下鉄(首都圏)の路線図が分からない
図工や美術が苦手
色分けした地図が読みづらい
焼肉の焼き加減が分からない
屋根や看板の色が分からず、道順を説明できない
落とし物をしても「何色か分からず」形状だけで説明するしかない
信号が分からないので普通自動車免許を取得できない

日常のあらゆるものを色で認識することは多いです。色弱は、判別できない色が多いだけで、決してモノクロなわけでなく、カラフルな世界ですが、色の定義はあいまいです。通常色覚(C型)の人とその定義を共有することは難しいです。

そしてその定義を共有できないことで以下の質問に答えることが出来ません。

「どう見えるの?」
「何色なの?」

この質問は今なら、図解やガイドラインを見せますが、当時は知識もないですし、色を言葉だけで説明する術はありません。答えられない質問を受けるのもストレスですので、自然と自分が色弱であることを隠し、生きるようになります。

私は性格がポジティブなので、この程度の認識ですが、もう少し弱い人は多くの人から上の質問を受けるだけで、大変なストレスですし、泣いてしまう人もいるでしょう。

というように色弱は多くの人にとって、ものすごくストレスでトラウマです。これが男性の20人に1人が色弱と割と多いはずなのに、世にその存在が浸透しない理由です。

4.図解で伸びるTwitter

フォロワー

これがTwitterを始めてから3か月の僕のフォロワー数伸びです。最初の1か月は鳴かず飛ばずでした。とはいえ微増しているのですが、今見返すと、まぁ伸びないツイートばかりしていました(笑)

当時は伸びない理由なども分からず、このままやっていても微妙かなと思い、流行りの図解に手を出してみることにしました。図解に手を出そうと思ったきっかけは以下です。

・会社で役員向けに資料を作っていたので伝わる資料作りは心得ている
・パワポやGoogleスライドは手馴れている

読書は習慣としてなかったのですが、技術書は職業柄(IT系です)読んでいますので、抵抗はあるわけではなかったので行けるだろうと考えました。

とはいえ、手元に本があるわけではないので、初の図解は自分の経験からのオリジナルです。実は恥ずかしくて僕のモーメントにも入れてないです。本邦初(?)公開(笑)

アフィラさんや猫森さんにメンションして、RTもらおうという浅はかな作戦ですが、まぁそんなうまく行くはずもなく、いいねもいただけませんでした。ただ、今見返すと、深く交流のある方たちからいいねいただけてますね。

そして次の図解。初の書籍チャレンジ。ロジカル・シンキング。会社の本棚から拝借しました。とはいえ、これは僕のバイブルで、この考え方が仕事でも私生活でも常に根底にあります。答えのない課題を導くのにすごく有用。

4枚目は完全オリジナル。このフレームワークでTwitterを絡めると伸びるだろうと踏んで挑みました。結果成功。履歴を見るとこの日フォロワー数129なので300近い「いいね」は快挙でしょう。

そして次の図解。これは自分で本を買って図解した初のタイトルです。職場でも話しづらさからストレスを感じている人は多く、悩みを聞くことも少なくないのですが、僕はこの心理的安全性を心得ていたため、幸いなことに僕が率いるチームから心を病む人は出ていません。そんな体験を踏まえて紹介したかったので図解しました。

フォロワー数は263人。これでこのいいね数もまた快挙でしょう。今見ても割とよくできた図解です。自画自賛ですね(笑) どうしてこれだけのいいね数を稼げたのかというのは別の機会に語るとして、ここで重要なのが4枚目にある「のび太力を見せる」の中にある「弱みを見せ、頼る」という部分。これは少しあとの「最強チームを作る方法」にも出てきます。

2枚目に「弱さを認める」3枚目に「リーダーが弱さを見せる」とあります。弱さを見せるという表現が複数の書籍で出ていて、且つ共感を得やすいという知見を学んだ僕は、冒頭の色弱でやってみることにしました。

5.弱みを見せることで始まった出会い

この時の記録によるとフォロワー数600弱で、このツイートで70人近く増えました。そしてその一人に僕の運命を変える人がいたのです。

まろみんさん。個人的に以前からフォローしていましたが、このツイートがきっかけでフォローいただき、交流が始まります

翌日のツイート。興が乗って、主な色覚4つの見え方について1枚の図解を掲載しました。反応はイマイチですが、そこでもまろみんさんのリプをいただけました。

それがこちら。

その返し。

ちなみに「今日まろみんさんのツイートにリプ」というのは以下です。

これがきっかけで色弱と向き合い始めます。

6.カラーユニバーサルガイドライン

まず色弱の割合を調べました。知識として知っていましたが、以下であることは間違いなさそう。

日本では男性に20人に1人が色弱
学校ではクラスに1人の割合で存在する

これは割と多い方だと思います。ここまで多いということは、ハラスメントやコンプライアンスにうるさい昨今ですから、支援するための何かが必ずあるはずだと踏みました。

するとNPO法人カラーユニバーサルデザイン機構 というところに辿り着きました。ユニバーサルデザインのカラー版です。こちらによるとカラーユニバーサルデザインとは、以下になります。

人間の色覚の多様性に対応し、より多くの人に利用しやすい配色を行った製品や施設・建築物、環境、サービス、情報を提供するという考え方

こちらを図解してもよかったのですが、文章が多く、やや分かりづらい。「CUD」や「カラーユニバーサルデザイン」で検索すると、東京都のガイドラインに辿り着きます。

東京都カラーユニバーサルデザインガイドライン

これだと思いました。このガイドラインには以下が含まれています。

・色弱とは何か
・色弱の見え方
・色弱者のための対応

そして程よく文章が長く分かりづらい(笑)。これは自治体あるあるで、要約しすぎると、重箱の隅をつつく人がいるので、ウソや欠落がないように冗長にならざるを得ないのです。

これを要約し、図解することに需要があると踏みました。

7.東京都に電凸

ガイドラインに書いてあった電話番号から東京都に電話します。担当の人は図解を存じ上げなくて、Twitterについても危うかった。だから数日かけて丁寧に説明しました。

役所のPCではインターネットに接続できないそうで、ただし、メールではOKだったので、いくつかの図解をメール添付で送りました。

で、当然意図を聞かれます。広告収入などが目的なのかどうか。つまりお金を儲ける意図があるのかどうか。まぁないわけはないです。複業が目的でもあるので、Twitterを伸ばす意図はあります。ただそれは延長線上にありますが、今ではない。

色弱を分かりやすく、そしてその対応も分かりやすく知ってもらう。純粋にそういう意図があると伝えます。誤解がないように丁寧に、何回も。

具体的には以下を伝えました。

・営利目的ではないこと
・自分も色弱であること
・ガイドラインの意図を尊重し、支援したいこと
・Twitter(の図解文化)が支援に向いていること
・Twitterとは何か、図解とは何か

そうして熱意が伝わったのか、先方からサンプルを送ってくれとメールが。飛び上がるくらいうれしかったのを昨日のことのように覚えています。

熱意は伝わります。きっかけは一本の電話、そしてその後のメールからです。思っているだけでは伝わりません。また、どう思われるかも関係がありません。少なくとも問い合わせ先を掲載している相手には、話を聞く意志がある。相手を尊重する姿勢があれば、相手は話を聞きます

8.ガイドラインを図解する

もう一度掲載しますが、これがガイドラインの図解です。

ガイドラインはこちら。

まず、ガイドラインの構成を変更します。最初に色弱の説明。そしてガイドラインの意図へ。これは「ガイドラインが何か」から説明しているガイドライン本体の構成よりも、そもそも色弱を知らない層に向けて、「色弱が何なのか」から説明した方が理解しやすいと判断したからです。

色弱が分からないのにガイドラインの説明しても伝わりません。伝えたい内容によって引用元の構成を変えるのはありです。

最後は具体的な対処方法を掲載します。図解する上でここは重要。要約には抽象的な表現が書きやすいですが、抽象的な表現で終わることはなるべく避けます。なぜなら抽象的な表現を読んでも頭の中にイメージが湧かないからです。

特に最後の4枚目が抽象的な表現だけだと、結局何が言いたいのか分からない図解になります。抽象的な表現は使ってもいいですが、その近くに具体的な置き換えを添えると分かりやすくなります。

ちなみに図解自体は楽でした。ガイドラインは論理的に書かれていますし、ガイドラインの図は引用しても良いということだったので、いわゆるコピペができるので、アイコン探しも(ほぼ)不要でした。

・図解は引用元の構成を変えてもよい
・図解の際に抽象的な表現は避ける
・抽象的な表現のそばには具体的な表現を添える
・ガイドラインなど論理的な引用元は図解が楽

9.掲載許可までの長い期間

実はすんなり掲載とはいきませんでした。完成した図解をメール添付して送ってもなしのつぶて。たまらず電話したところ、「もう少し待ってください」とのこと。これは袖にされたかなと思いきや・・・

いくつかの改善点を細かに指摘いただきました。どうやらお役所なので、関係各所への通知と回覧に時間がかかったようです。詳細は知る由もありませんが、少なくとも私の応対した担当者はすごく真摯で懇切丁寧に応対いただけました。

10.投稿。バズへ

そして翌日のAM6:00に投稿。本当に知ってもらいたかったので、拡散(RT)して欲しいとツイート文に書きました。いつも通りの朝ルーティーン。終わってAM10時過ぎまでは何も起きません。

しかし次第にRTの通知が増えてきました。RTしてほしいと書いたのでRT率高めです。いいねに対し、6割くらいのRT。通常は2~3割以下です。RTがRTを呼び、実は投稿後丸二日ほど通知が止まりませんでした

どうやら私と同じで色弱に悩んでいた人は多かったようです。本人のケースもあれば、職場で色弱への対応に悩まれている方、何より多かったのが色弱の子を持つ母親です。冒頭に書いた通り、女性は色弱にはなりづらいですが、色弱者が親にいればその遺伝子を持ち、隔世遺伝するケースが多々あります。自分には分からない見え方なので悩む人も多かったようです。

最後に図解の反応を上げるためのテクニックを列挙します。皆さんの参考になれば幸いです。

・図解は頑張った功績が高評価される
・ゆえにいいね、RT下さいとツイート文に書くべき
・投稿前に予告ツイートして見てもらう確度を上げる
・投稿日前日、投稿日はアカウントの肩書に書いておく
・RTしてくれそうな人を普段から増やしておく
・図解を投稿したので見て欲しいと思い切ってリプする

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