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ヒステリックスリラー系女優、カゴを車内に置き忘れる


またカゴを買った。だって、春だし。これでリネンのワンピースを着てカゴ持って街へ繰り出せば、晴れてナチュラル系女装の完成ね(麦わら帽もお忘れなく)! キランっっ☆
…言うてる場合か! 女装にならないよう、コーディネートしなきゃね…。
でも、男がカゴを持った方がかわいいと思うのは、あたしだけかしら? フランスの市場でおじいちゃんがカゴを手に買い物してるのとか、かわいいじゃない? そう、あくまであのイメージです。全身レディースの日だってザラにあるけど、女装ではないからね、あしからず。
(でも、女装になってたら教えてね、kaiさん、大柄な女性にしか見えませんよ今日のお洋服、と)

そのカゴを持って、今日は東京へお出かけ。
あれね、カゴ持って大男が歩いてると、道行く人はギョッとするのね。慣れたけど。
頑丈で軽いから、買ったものとかガンガン入れてたらめちゃくちゃ重くなっちゃって、このままずっと手に持っているのもキツイので、帰りの電車は網棚に乗せた。普段は忘れたら怖いから乗せないのだけど、今日は電車も混んでるし、床に置くと場所取るからね。
鎌倉駅に着いて通勤で混雑した車内をなんとか抜け出てふぅーっとひと呼吸ついてたら、ハタと手にカゴを持っていないことに気が付いた。
ひゃだ!! 車内に置き忘れてる!!!!! ひぃーーーーー!!!!
車内に戻ろうと慌てて振り返るも、目の前でドアは無情に閉まって出発。
私のカゴがスーッと視界を流れていく…さようなら、私のカゴ。短かったあなたとの時間。ありがとう、ありがとう!!!
…言うてる場合か!! 財布も全部入ってるのにヤバイやないか!!!! ひとまず駅員室に駆け込む。状況を話したら、ここから先はどの駅も駅員さんが1人しかホームにいなくて、停車してるわずかな時間で車内点検まではできないんです、と言われる。じゃぁ終点ではわかるの!? と聞いても、すぐに折り返す電車だから車内点検しないらしい… じゃぁいったいどうしたらいいのよ!?(取り乱すオネエ)と聞いても、いやぁそう言われても…と力なく答える駅員さん…
いやいやいやちょっと待ってよあの中には財布も手帳も最近買ったiPadも今日買ったあれもこれぜんぶぜーんぶ入ってるんですよあれがなくなったら僕は一巻の終わりなんだからちょっとなんとかたのむわほんまに!! …ひゃだ!! 心の声が全部漏れ出てる! 気づいたら駅員さんの前で白目で叫んでいるあたし。実写版楳図かずお的ヒステリックスリラー。そのままあたしはこれ見よがしに頭を抱えて床にしゃがみこむ。「一巻の終わり」を身体で体現。スリラー映画主演女優として当然ね。それにしても、ちょっと前にパートナーが網棚に荷物を置き忘れて全部盗られちゃった事があって、やはり電車の中は危ないんだな…と思ったばかりだったのに。あのプリチーなカゴも手癖の悪いおっちゃんに取られる可能性大… そうなったらあたし、あたし… 一巻の終わりや一巻の終わりや、ともはや呪いのように駅員さんの前でぶつぶつ呟く楳図かずお系ヒス女優。見兼ねて(呆れて? 観念して?)、なんとかしますから、と駅員さん(マジやざじい…)。駅員室の奥からもう1人若い駅員さんも助っ人でやってきて、手分けしていろんな駅に車内点検を無線でお願いしてくれる。たしか僕が乗ってたのは3号車、隣にはグリーン車が見えた。と、いうことは…3号車と4号車のあいだだね、と駅員さん推理する。いやんその調子よ! 逗子駅は間に合わず、東逗子駅もダメ、連絡を取っている間もどんどん電車は進んでいく… 次は横須賀駅!と若い駅員さんがすぐに無線で連絡してくれる。横須賀駅は少しホームに停まるから見てくれるかも、と。もう1人の駅員さんと僕で固唾を飲んで状況を見守る。駅員さん達と僕との妙な一体感。若い駅員さんが電話口で、あ、そうですか、ありがとうございます、と笑顔になる。わぁ、車内点検してくれるんだ!! もう1人の駅員さんも、良かったねぇ、と嬉しそう。もしカゴがあれば数分後に連絡がくる。なかなか連絡が来ない。主演女優はキリストに祈るように顔の前で両手の平がっしり組んでお祈りをし続ける。
横須賀駅から連絡。若い駅員さん、「そうですかぁ!」と顔が華やいだ!
あったんだ!!!!! バンザーイ!
駅員室で万歳三唱。楳図ヒス女優(もはや誰?)の女装カゴのために大の大人3人が一致団結した数分間… ヒステリックスリラー、最後はハッピーエンドにてフィニッシュ。駅員さんもホッとして、なんだか嬉しそう。無くなるはずのなかったものが無くなるかもしれなくなって、でもちゃんとあった、という考えてみたらプラスマイナスゼロのなんでもないストーリーなんだけど、あった、ということがとんでもない奇跡のように思えてくる。じゃぁ横須賀駅まで取りに行っておいで、と、超やざじい駅員さん。深々と頭を下げてホームへ向かう。興奮冷めやらぬまま電車を待っていたら、なんだか幸せな気持ちになってきた。
神様ありがとう!奇跡をありがとう!って。
なんだろうね、ほんとなんでもないただのオッチョコチョイなエピソードなんだけど、人の優しさに触れたからかな、奇跡が起きたからかな。僕がいちいち大袈裟なだけ? てゆーか楳図の白目に慄いてたん?
でもいいよね。こんなことで一喜一憂できることが幸せだし、考えてみたら僕の日常の中の不幸ってこんなことくらいで、しかもその少しの不幸も、すぐにこんな幸せが滑り込んできて帳消しにしてくれる。僕はきっと、今まで生きてきて今が一番幸せなんだろうなぁ。横須賀駅へ向かう電車の中で、そんなところまで思考が巡る。まぁとにかく、良い1日だし、良い日々だな。
駅に着いて駅員室に向かうと、奥のデスクに女装カゴを見つけた。よかった、本当に無事だった。さて、ヒステリックスリラー映画はこれにておしまいです。エンディングはあの "平松 kai理" が歌う名曲「カゴと女装癖とわたし」をアコースティックver. でお届けします。(ヒット曲がアコースティックver. で歌われた時のあの残念感も合わせてご堪能ください)


2016. May
Photo & Writing by kai


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マンモスうれぴー♡ ひゃだ、古い?
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アーティスト、文筆家。鎌倉在住。東日本大震災を機に霊的感覚の目醒めを体験し、2012年よりスピリチュアルカウンセリングや瞑想の講座、執筆や芸術表現を行う。現在は文章表現やニューエラ・アート(新しい時代のアート表現)の提案を通して、新時代の生き方を伝える。k-a-i.info
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