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詩がみっつ

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ひと

悲しいだけで生きていけたらな。
きちんと順番に壊れていって、適切な悲しみを教えてくれる先生がいればな。
僕たちは植物や動物と違って特別に死を知っていて恐れていて神様を信じている。明日がくる前提だから自然と噛み合わない。
鳴き声を忘れた生き物を、神様は生き物と思っちゃいないよ。
死んでほしくないな。君が死んだあともそんな事言っていられるんだろうか僕は。

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部屋

我が家。子供部屋は棺桶と同じ構造。
みんながたくさん花をくれた
問題集はあるけど窓はなくて、だけど僕は太陽を知っている
木洩れ日を、温もりを、戦争を、恋人たちを知っている
誰かの目で見つめていた時代がそこかしこに
この部屋の壁に
美しい眼で見た世界がこの部屋にひろがる
たくさんの花に包まれて
死んでしまった少年を僕は知っている。

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冬の憂鬱は、春の緩やかさに少しずつ磨かれて、すっかり薄くなった僕のこころはあなたの薄茶色い瞳に張り付いた
いつの間にか桜は散っていて、それでもお日さまは明日が来ることを唄い続けます。
まだ冷たい匂いの残る僕の睫毛を花弁が滑り、少し眠たい。
あなたは、小さな、小さな爪を持っている。碧い星が溶けた海みたいに透明な膜を持っている。透明なあまり命が滲む。
その向こうのほんとうを僕は知らない。
あなたは、海が空を見上げ、ただ愛しく揺れるのと同じ周波数で、いつも、口の中でしゃべっている。息を漏らさないように。ひとつになってしまわないように。寄り沿い、いつか別れが来るように。口の中でしか言えない秘密を春風にしている。
それだけわかれば、僕はほんとうなどいらない。

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昨日書いた奴らです。昨日はほんとに書いてばっかりでずっとガム噛んでたから顎もげそう。