「剣を学ばずに既に剣の師範」と柳生但馬守
徳川家光の指南役となった但馬守の元に、ある武士が「御指南願いたい」とやって来た。但馬守は武士を見ると、指南を断った。
「そこ元は既に、剣の奥義を会得されておられる。どちらの流派をお納めでござるか」
「それがしは、剣は一度も習ったことはござらぬ」
「そうは申されるが、どの流派でござるか」
「まことに剣は習ったことはござらぬ。強いてあげれば、幼き頃から死を恐れぬ心を持ちたいと常々思って生きて参ったことでござります」
「それです。剣の奥義は死を恐れぬことです。そなたは、剣を学ばず