ノベルゲーム(ヴィジュアルノベル)の歴史をまとめてみた

美少女ゲーム業界に24年もいるジジイとして、ちょっとエロゲーの世界のヴィジュアルノベルについて考えてみた。

美少女ゲームにおいて、ヴィジュアルノベルは、サウンドノベルをベースにして生まれた。それは間違いない。だが、サウンドノベルとヴィジュアルノベルの違いを明確に指摘している人をほとんど見ない。サウンドノベルがあって、その強い影響の下、Leafのヴィジュアルノベルが生じたと記されるだけ、ってのが凄く多い。両者の違いを明確にしなければ、まともな議論にはならないのではないだろうか。

1992年に『弟切草』によって始まったサウンドノベルは、形式上、

・全画面的に文章を表示(小説的な文章)
・映像は背景CG
・「背景+立ちポーズ」はない

という特徴を持っていた。形式ではないが、内容面の特徴として、

・ストーリー性が高い

というものも持っていた。ノベルと言うためには、それなりの高いストーリー性が必要だったに違いない。

一方、Leafが1996年に『雫』で始めたヴィジュアルノベルは、形式上、

・全画面的に文章を表示(小説的な文章)
・映像は「背景CG」&「背景+立ちポーズ」(主観ショット)&イベントCG(客観ショット)

内容面の特徴として、

・ストーリー性が高い

こんなふうになっていた。

サウンドノベルでは、映像は

背景CG

オンリー。
Leafが1996年に始めたヴィジュアルノベルでは、映像は

背景CG
背景+立ちポーズ(主観ショット)
イベントCG(客観ショット)

このように映像が豊富となり、映像が強化されている。「ヴィジュアル」と冠された所以である。この「映像の豊富さ」という違いは注意しておきたい。

さて、『MOON.』の制作者たちは、ヴィジュアルノベルを捉える時にささやかな換骨脱体を行った。「全画面的に文章を表示」というのを条件から外したのだ。『MOON.』制作者たちは、ヴィジュアルノベルを次のように捉えた。

・小説的な文章(全画面表示という形式は問わない)
・映像は「背景CG」&「背景+立ちポーズ」&イベントCG
・ストーリー性が高い

表示形式がメッセージウィンドウ表示に切り替わったことにより、制作上の難易度が下がり、ノベルゲームの興隆を引き寄せることになる。

少し整理し直す。

ヴィジュアルノベルは、あくまでもサウンドノベルを踏襲する形でヴィジュアルを強化したもの(ヴィジュアル要素を豊富にしたもの)

サウンドノベルを踏襲しているので、厳密な意味でのヴィジュアルノベルは、全画面的に文章を表示する。メッセージウィンドウで文章を表示することをしない。

『MOON.』がヴィジュアルノベルと把握したものは、

・メッセージウィンドウ表示(小説的な文章)
・映像は「背景CG」&「背景+立ちポーズ」&イベントCG
・ストーリー性が高い

Leafのヴィジュアルノベルとは、若干異なっている。また、ヴィジュアル面での強化は、まったくない。比較してみよう。

●Leafのヴィジュアルノベルの映像

背景CG
背景+立ちポーズ(主観ショット)
イベントCG(客観ショット)

●『MOON.』の映像

背景CG
背景+立ちポーズ(主観ショット)
イベントCG(客観ショット)

まったく同じである。両者の違いは、

●Leafのヴィジュアルノベルシリーズ
・全画面表示

●『MOON.』
・メッセージウィンドウ表示

つまり、テキスト(会話と文章)の表示形式だけである。そして、後にメッセージウィンドウ表示形式のものが圧倒的な主流となっていく。

よって、こんな素描ができるのではないか。

1996年、ヴィジュアルノベル誕生。当初は全画面的表示

1997年、メッセージウィンドウで表示するヴィジュアルノベルが誕生(?)

(?)年、メッセージウィンドウで表示するタイプが圧倒的な主流

(?)年、ヴィジュアルノベルから「ヴィジュアル」が外されて「ノベル形式」という表現が誕生

(?)年、ノベル形式のジャンルは「ノベルゲーム」と言われるようになる

したがって、ノベルゲームという呼称を標準として記すならば、次のように言えるのではないかと思う。

1992年、ノベル(小説)的なストーリー性の高さを売りにして、サウンドノベルが誕生

1996年、サウンドノベルをヴィジュアル的に強化して、Leafが全画面表示タイプのノベルゲームを創始。

1997年5月、『To Heart』の記録的ヒットにより、ノベルゲームが一躍注目のジャンルへ

1997年11月、『MOON.』で、泣きを主眼とした、メッセージウィンドウ表示タイプのノベルゲームが誕生

1998年5月、『ONE 〜輝く季節へ〜』がヒットし、ノベルゲームがアドベンチャーゲームを凌駕してエロゲーの主流へ向かう

2000年、『Air』の記録的なヒットにより、エロゲーのメインストリームはノベルゲームに確定、以降、継続中。

こんなふうに歴史を書くことができるのではないか、と思う。
個人的には、

・メッセージウィンドウ表示タイプの最初のノベルゲームは何だったのか?
・エロゲーのメインストリームがノベルゲームに確定したのは、『kanon』? 『Air』?

この辺りが気になる。是非、ご意見を……!

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作家。ゲームシナリオを書いて24年。中世国際政治が舞台となるゲームをつくっています。高校生が城主になって活躍するラノベも書いてます。ゲームシナリオのハウツー本も書いています。拙著『非実在青少年論』の中で、東浩紀のデータベース消費を乗り越えるウロボロス消費を提唱しています。
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