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なぜ高級レストランのテイクアウトは失敗するのか?価格と価値の違いから解説します

新型コロナウイルスの影響により外出が規制され、多くのtoCビジネスは甚大なダメージをうけました。

売上への影響が前年比-50%ならまだいいほうで、TDB(帝国データバンク)の調査によると、2020年5月28日時点で全国192件の※1 「新型コロナウイルス関連倒産」が観測されています。

そのような状況下、飲食店は大打撃をうけEC(ネット通販)、出前、テイクアウト等さまざまな施策を展開しなんとか売上をたてようとしています。

そしてテイクアウトの中でも話題になったのが ジョエル・ロブションのテイクアウトボックス(¥83,000/4名様分)です。

「いや高すぎでしょう。ぼったくりかな?」

そうとっさに考えてしまったのも無理はありません。

これはロブション自身が自分たちの店の価格が何によって決められているか理解できてないからこそ起きてしまう出来事だからです。

今回の記事では、価値と価格の違いについての観点から「なぜ高級レストランは1食で数万円し、テイクアウトでは高く感じるか」について解説します。

テイクアウトの件に限らず「一食で5,000円~10,000円払うなんて意味がわからない。なんで?」と高単価の食事そのものに疑問を持っている方や飲食店経営者の方にも発見のある内容になっています。

是非、読み進めてみてください。

価格と価値の違いについて

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※2 価格と価値は同じように見えて、実はまったくの別物です。

たとえば、100万円のダイヤモンドが宝石店で売られているとします。

このダイヤモンドの「価格」は100万円で、ダイヤモンドの「価値」を知る人々にとってはむしろ安いくらいの代物です。

ですが「ダイヤモンドの価値をしらない子ども」にとって、光る石ころの「価値」はおやつのチョコボール(100円)にも劣ります。

ダイヤモンドの「価値」を知る人からみた「価格」=100万円
ダイヤモンドの「価値」を知らない人からみた「価格」=100円

お気づきでしょうか。

「価格」は「価値」を図る人間の主観で決められているのです。

ダイヤモンドがもたらす価値は以下のようなものがあります。

きれい、求愛に使用できる、社会的な地位を表す、換金性がある、ファッションアイテムになる、希少性

複数の「価値」がつみかさなり、「価格」をつくっていくわけです。

なぜ高級レストランの料理は高いのか

では高級レストランの価格はどういった価値からなっているのでしょうか。

食事がおいしいから?それも必須要素ですが、それだけでは不十分です。高級レストランの価値には以下のようなものが挙げられます。

高級レストランの価値

料理がおいしい、非日常を感じることのできる内装、料理説明のサービス、高級レストランに相手を連れていける経済力の証明、こんな所に連れて行ってもらえるという自慢、ムードの演出、立地

このような価値を理解できる人にとって、数万円の価格は妥当なものになるのです。

逆を言えば、料理がおいしいという価値のみでは数万円という価格は高すぎるということになってしまいます。

※3 実際にロブションの弁当を頼んで食レポをした方の記事によると、スーツを着た方がテイクアウトボックスを運んできて商品の説明をしてくれるとのこと。

人件費はかかっていますが、ロブションは自分たちの本質的価値を理解しきれていないと言えるでしょう。

「うまい料理と商品説明を提供すれば、お客様は買ってくれる」

かなりお客をなめていると思うのは、わたしだけでしょうか。

高級レストランの食事は食費ではない

※4【動画】 家で食べる料理は食費だが、家族以外と一人でなく食べる食事の費用は交際費。

こういった言葉があるように、高級レストランで食べる食事は食費ではありません。

どこで、だれと食べるかによって料理の価値が変わってくるのです。

家に持ち帰り一人で食べるなら、料理がもたらす価値は味、情報、テイクアウトした経験程度でしょう。

ですが外で誰かと食べるなら、料理がもたらす価値は一気に広がります(前章の「高級レストランの価値」参照)。

それゆえ、家で食べる場合は比較対象が「腹を満たすための食事」に限定されるため、バカ高く感じてしまうのです。

「吉野家の牛丼の100倍以上の満足度はないなあ」

となるわけです。

まとめ

以上が、高級レストランのテイクアウトが失敗する理由についてでした。

おさらいすると、以下の通りです。

1 価格と価値は違う
2 高級レストランの価格が高い理由は食事の味だけではない
3 高級レストランの食事は食費ではなく交際費

値決めは、自分のサービスがもたらす価値によって決めていきます。

仕入れを工夫し、安価である程度の水準を越えた食事をたのしめる現代では食事のみを提供する飲食店は廃業必死でしょう。

料理というモノではなく、料理を通じて体験を与えるコト消費にシフトしていくことでファンの獲得につながっていきます。

今回の一件は、飲食店の在り方をあらためて考えるおもしろい事件だと言えるでしょう。

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では、また次の記事でお会いしましょう。

参考文献
1 帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産」
2 日税経営情報センター「M&Aにおける価値と価格の違い」
3 日刊SPA「ロブションのデリバリーを自腹で食レポ!」
4 田端大学 動画「高級店のテイクアウトが高く感じる理由」



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