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日本人は世界で最も助け合わない国民らしい

 日本人は見知らぬ人を助けることが苦手です。中には弱者にあからさまに冷たい態度を取る人さえいます。外国人には親切といわれる日本人が、実は世界で一番不親切だとランキングに出ているのはなぜでしょう。
 


日本の助け合いは最下位


 英国の慈善団体「Charities Aid Foundation」が毎年行っている世界人助け指数ランキング(World Giving Index)があります。内容には「見知らぬ人を助けたか」「寄付をしたか」「ボランティアをしたか」という項目があり、日本は2022年度の調査では142か国中総合139位という結果で(カナダは8位)、毎年底辺にいるらしいのです。特に「過去1か月間に助けを必要としている見知らぬ人を助けたか」に関する調査で、日本は最下位(世界平均60%・日本21%)でした。この「助け」の内容とは、「荷物が重くて困っている」「階段で補助が必要」などの簡単なことですが、日本人はちょっとした手助けもあまりしないようです。
 

障がい者や子持ちに冷たい

 
 先日日本の番組で、車椅子に乗っていたりベビーカーを押している人が駅でエレベーターに乗ろうとしても、場所を空けてくれない、追い越される、と言うのを聞いてたいへん驚きました。乗せてくださいと言っても怒鳴られたり後をつけられたりしたことがあり、声を上げるのが怖いという信じられない状況です。

 対照的に、パリのデパートで満員のエレベーターに乗っていたとき、扉が開くとベビーカー3台のママグループが待っていました。とっさにそのグループの1人のママが、先に乗っていた若者たちに向かって「降りて」と言い、若者たちはぞろぞろ降りて行きました。もし若者たちが渋ったら、きっと周りの大人が彼らに降りろと言ったと思います。

 私が行った海外の国々で、子どもを育てている人、障がい者、老人に席を譲らない、場所を空けない場面に出会ったことがありません。私もカナダで先日初めてバスで若い女性に席を譲られましたが、ありがたく座らせてもらいました。 

なぜ助けないのか


格差社会:
 1990年代のバブル崩壊後から日本の格差社会は顕著になり、有効な政策もなく、賃金は30年間上がりませんでした。貧しい人はより貧しくなり、残業も多く皆疲れていて、心に余裕がないのかもしれません。
 
拒絶が怖い:
 助けたいという気持ちはあっても、「迷惑かもしれない」「断られたら恥ずかしい」と考え、足が出ず声が掛けられない人もいるでしょう。日本人は拒絶(=意見の相違)を極端に恐れる国民性です。他人との意見の相違を個人攻撃と捉えるので、せっかく人助けしようとしても、断られると不快に感じる傾向があるように思います。

 トロントで私はあまり出歩かないので、バスの乗り継ぎ方がわからないときに運転手に聞いたりします。親切に教えてくれる人もいれば、ぶっきらぼうな人もいます。それでも、乗るときと降りるときには必ずハローとサンキュウは言います。返事を返してくれる人もいれば、何も言わない人もいますが、それでもかまいません。その一言で運転手の気分が上がればいいからです。
 
男女差:
 統計には出ていませんが、他人を助ける人が21%の日本人の中でも、男女で差があると私は考えます。日本女性は男性社会で生きるために気遣いを求められるので、日本の男性よりはあきらかに他人に親切です。一方、成人日本人男性は幼いころから気を遣うことを教えられていないため、周りが見えず、困っている人に気づくことができないのかもしれません。
 
自己責任意識が強い:
 海外に住んでいると、自分の責任なのに他人のせいにする人がたくさんいて、日本人の責任意識からは理解できないことがよくあります。日本人ほど自己責任感が強い国民もめずらしいのではないでしょうか。貧困も自己責任、障がいがあるのも自己責任、果ては性被害に遭うのも自己責任だそうです。

 自己責任理論ほど政府や権力者にとって都合のいいものはありません。政府の長年の失策によって国が貧乏になっても、「自己責任で老後のために2,000万円貯金してください」や「自己責任で副業しましょう」と言えばいいからです。将来に不安を持っていると、財布の紐が固くなり、消費が低迷するとお金が流通しないという悪循環になります。
 
社会の一員という意識が低い:
 日本人はウチとソトを区別して、ウチさえよければソトには無関心です。知っている人には必要以上に気遣いを見せますが、見知らぬ人には冷たい態度を取ることに平気です。前述のエレベーターに乗せてくださいと頼んだ人たちも、見返される目が怖いと言っていました。

 日本人が政治に関心がないことも、社会の一員という認識が低い理由かもしれません。カナダに住んでいると、「良い社会、良い地域、良い市民」という言葉をよく聞きます。社会の一員として奉仕することを子どものころから教えられて育ち、政治に関心を持ち、また、気軽にボランティアをする人が多い印象です。
 

利他は自分のためになる


 社会的弱者の生活を保障し、人に親切にし、助けが必要な人には気軽に申し出たり、必要なときに助けてほしいと声に出せることは、社会に安心をもたらします。ある日突然自分も社会的弱者になるかもしれません。今の30代も30年後には老人です。将来に対する不安を和らげることは、人に幸福感を与え、社会全体の質を向上させ、自分の生活も向上することに繋がっていきます。

 目先の損得ではなく、見知らぬ人の幸せを願い行動する利他の精神が、ひいては自分のためになるのです。
 
参考:World Giving Index 2023, https://www.cafonline.org/docs/default-source/about-us-research/wgi_report_2023_final.pdf?sfvrsn=402a5447_2

この記事はカナダ日本語情報誌『TORJA』連載コラム『カエデの多言語はぐくみ通信』2024年3月号に寄稿したものです。 ☞ https://torja.ca/kaede-trilingual-49/

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