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桜と恋は咲くまでが華

昼間の柔らかい陽光に口説かれて、
夢見がちに胸元をピンクにほどきかけた桜は、
夜の冷たい風に心覚めて、
その襟元を固く直している。

グラスに氷を放り込んで、焼酎をそそぐ。
ちょっとだけ水で割る。
肴はおみやげに貰った佃煮。
グラスにキス。佃煮ともキス。

何度目かのグラスへのキスで
小さくなった氷が舌に絡んだ。
佃煮の味が冷たく薄まって、
口になかを満していく。
夏のそうめんの香りがした。

桜との会瀬はまだ始まっても
いないのだ。
まだ夏の気分はいらない。
彼女の花びら色の服を脱がしたら、
夏よ、また会おう。

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