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60'sロンドンの音楽とファッションとタイムリープサスペンス『ラストナイト・イン・ソーホー』

『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督の『ラストナイト・イン・ソーホー』を観てきました。これね、行くまで「タイムリープ・サイコ・ホラー」だということを知らなかったので、導入部分で60'sに憧れるデザイナー志望の学生がタイムリープして、『The Knack』で描かれたような、スウィンギング・ロンドンで自己実現のきっかけを掴むというようなストーリーを予測しながら観ていたら、いい意味でとんでもないことになりました。

現代では引っ込み思案で、自分が自分らしく生きられない女の子が、タイムリープした60年代のロンドンで自分らしく生きるヒントを得るという話になっても、それはそれで、とてもカタルシスのあるストーリーになったと思います。ところが、そこにホラーの要素とサスペンスの要素が入ってきて、エドガー・ライト監督の60年代の音楽趣味が絡むと、ミュージカルのような展開もあり、だんだん混乱してきて、その混乱が最後にきっちりと回収されるという気持ちいい展開でした。ファッションと音楽を楽しみながら、タイムリープ・シンデレラを楽しもうとしていたらそうはならないので、少し心の準備が必要かもしれません。

僕らが大学に入ったときはバブルが弾けかけていたけど、バブルのときは良かったという人もいっぱいいるし、昭和30年代の高度成長期が希望に満ちていたという人もいるし、自分が生きていたわけじゃないのに江戸時代を理想の時代とするような人までいます。でも少なくとも僕が大人だったバブルの日本は今よりもいっぱい嫌なことがあって、社会というのは確実に進化しています。

この映画は世界の憧れだった60年代のスウィンギング・ロンドンだっていいことばかりじゃなくて、いろいろな意味で現代のほうが良いところが多いんだよっていうことを言っているところがあって、そこもクールで、ベタベタの60年代礼賛になっていないところがよかったです。

「暗黒と希望の60年代」っていうのが、さっきのミュージカル的に、とても明るい曲とものすごく残酷なシーンをシンクロさせているっていう演出があって、これにやられます。明るいポップスにのってる残酷シーンは怖さが増すっていう感じです。

『クイーンズ・ギャンビット』のアニャ・テイラー=ジョイが60年代の歌手に憧れる女性を演じてるんだけど、すごく魅力的です。イギリスっぽいスタイルの美しいホラー映画。見るべき一本だと思いました。

『ベイビードライバー』も最高の映画だから、観られるうちにどうぞ。

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