見出し画像

編集の芸術『コンフィデンスマンJP 英雄編』

脚本と編集のアートだと思った。すべてのキャラクターのタイムラインを書き出して整合性を取った後に、編集で「結果」→「原因」の順番でシーンをつないでいったのだろうか。マトリョーシカのように次から次へと詐欺の仕込みが明らかになっていくのが痛快だ。相手を騙そうという場面は、今回も大げさ気味の演技で不思議な「インチキ臭さ」を醸し出している。「英雄編」では騙そうとしている人が多すぎて、全員が怪しいって感じで、見てる方の混乱が誘われ、それがまた面白かった。

正月の興行ということで顔見世的な部分もあるかと思いきや、すべてのキャラクターがストーリーに絡んできて、重要な役割を担っている。キャラクターが多くても物語が薄まってないのでどっしりと見応えがある120分だった。 英雄編では、ダー子、僕ちゃん、リチャードの3人がチームではなくライバルとして競い合うという新機軸があり、それが新鮮だ。

しかし、この映画のレビューを書こうと思ってみたものの、ネタバレせずにこれを書き終わるのがひどく難しい。なので一般論を少し書こうと思うが、短期で見た場合、世の中には騙される方と騙す方のニーズが一致している場合がある。真実を知るということは「怖いこと」でもあるから。そういう気持ちと、水戸黄門のように「騙すことで懲らしめる」という種類の騙し方がある。TVシリーズでもあったように、騙して救ってあげようとしていた一般人がよりしたたかであったという展開は『七人の侍』の農民たちのように、地に足のついた生活者が強いということを思わせる。ということで定番の型を使った王道のエンタメになってる。

それと主題歌になってる Official髭男dism の『Anarchy』がポップな Joy Divison みたいで映画の雰囲気によく合ってた。

だれもが嫌うような「嫌な奴」にも、そこに至る納得できる物語があり、そういう歴史によって個人は自分の「正義」を獲得する。この作品もそうやって騙される方の「嫌な奴」を丁寧に描いている。それは最近大ヒットしている『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』のようなジャンプのマンガにも共通するエンタメの基底となってる感じがする。誰もが自分の「正義」をもっている。

コンテンツについての発信もしてますので、よかったらフォローを


この記事が参加している募集

映画感想文

読んだり、観たりしたコンテンツについて書くことが多いです。なのでサポートより、リンクに飛んでそのコンテンツを楽しんでくれるのが一番うれしいです。でもサポートしてもらうのもうれしいです。