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「なりたい自分」と「ありのままの自分」の物語

いまでは心理学の研究者でなくても、それが学問的には正しくないということを知っているマズローの「自己実現」という概念。「なりたい自分」にたどり着くことは、それでも現代を生きる人たちにとってこころの拠り所になっています。

「なりたい自分」とは、オリジナルで、好きで得意なことで社会の役に立っている自分なのでしょうか。一方で「ありのままの自分」という概念もあります。「ありのままで」っていう歌が大ヒットしましたけど、「自分探し」をして、「ありのままの自分」を見つけ、その自分が社会に受け入れられたら幸せになれるという希望が、多くの人の生きるこころの拠り所になっています。

「なりたい自分」も「ありのままの自分」もオリジナルな自分が社会に認められるまでの物語です。僕たちは「海賊王」になる若者や、世界を凍りつかせる女子が成長したり、その独自性を認められることにカタルシスを感じてしまいます。それが現実の世界では奇跡のようなものだと知っているからです。

現実には、社会のなかで「なりたい自分」や「ありのままの自分」のような独自性が価値になる前に、まず必要とされているのは社会や組織と協調する力です。それが過剰になったときは同調圧力と言ったりします。

「ピンチのときは不良が活躍する」というのは野村克也さんの言葉ですが、協調性の高い人が多い日本の組織では、ピンチのときに違うやり方のできる、いわゆる「不良」がとても少ないので、方向転換しにくいことを野村さんならではの言葉で語っています。

「なりたい自分」になるのも「ありのままの自分」が認められるのも、ひとりぼっちでいられるからかもしれないですね。「不良」でいるのも寂しいですよね。

物語論のなかでは、「なりたい自分」を追求するのが「男性神話」で、「ありのままの自分」が受け入れられるまでの物語が「女性神話」といわれます。『スターウォーズ』が「男性神話」の典型、『シンデレラ』や『アナと雪の女王』が「女性神話」の典型と言われてますよね。最近は「女性神話」の方に大ヒットが多い気がします。


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