「映画館の闇」

先日、京都シネマという小さな映画館で「チア・アップ」という作品を観た。
ダイアン・キートン主演、平均年齢72歳のチアリーダーの物語である。
最高の仲間と夢に向かって挑戦する姿に、観客は共感を覚え、胸を熱くし、時には頬が緩み、涙が滲んでくるのであった。
映画館の闇の中で、周りの観客の息遣いや小さな笑い声が聞こえてくる。映画館全体の空気感を作品が次第に支配してゆくのはわかる。極端なことを記せば、観客の血の流れや呼吸の音などとともに、作品を楽しむことになる。
これは優れた演劇やコンサートに接した時と同じ感情である。
あくまでスクリーンの中で繰り広がられる物語で、現実ではないのだが、いつの間にか、現実を超え、一つの世界が僕たちの想像力をかき立ててくれるのであった。これは自宅でDVDやネットで映画を観ている時とは異なる感覚だ。
映画館の闇がもたらしてくれた物語を愛おしく思うのである。



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