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書店員のイチ押し小説 第7回 大盛堂書店・山本亮さん

書店員さんが「イチ押し」だと思う本は、どんな本なのだろう?
毎日たくさんの作品に触れている「本」のプロたちに、カドブン編集部がイチ押し小説を聞いてみました!
連載第7回は、渋谷センター街前に店舗を構える大盛堂書店の山本亮さん!
渋谷のランドマーク的存在でもあるスクランブル交差点からすぐの場所にある大盛堂書店は、目利きの書店員たちによる文芸作品のセレクトや、バックナンバーも取り揃えた雑誌コーナーなど豊富なラインナップが魅力的。
今回は大盛堂書店で長年文芸作品を担当する山本さんに、イチ押しの本についてメールにてインタビューを行いました。

今回のゲスト
大盛堂書店・山本亮さん

山本さんが書店員になったきっかけは、学生時代のアルバイト。当時は渋谷西武百貨店の前に旧・大盛堂書店の店舗があり、もともと本が好きだった山本さんはそこでアルバイトを始めたことで、書店員としてのキャリアをスタートさせました。現在は書店員歴20年を超え、同店で文芸書など2階売場の責任者として日々さまざまな本の魅力を読者に届けています。

――働いているお店の魅力を教えてください!
当店は渋谷のスクランブル交差点、センター街の入り口に立地しているので、日本人だけではなく訪日される観光客がとても多いです。店内では各国の言語が飛び交い、さながら世界の縮図を見ているようで個人的にとても面白く感じています。

店舗の2階にはさまざまな小説が。
スタッフのみなさんが作成したPOPにもぜひ注目してみてほしい

――現在の山本さんの担当ジャンルはありますか? また、お好きな小説のジャンルを教えてください。
担当ジャンルは文芸、ノンフィクション、スポーツ、イベント関連など。
好きな小説のジャンルは、ミステリ、歴史・時代、青春、恋愛小説などです。

――山本さんのイチ押し小説を教えてください!
『彼女がそれも愛と呼ぶなら』一木けい(幻冬舎)

近年、パートナーや家族の在り方についてさまざまな場面で語られることが多くなりました。人によって異なる意見や考えがあるなかで、一木けいさんの『彼女がそれも愛と呼ぶなら』はまさに一石を投じる作品です。個人的には主人公の女子高生に注目したいです。女子高生の母のポリアモリー(関係者全員の同意を得て複数のパートナーと繫がり合う恋愛)によって、人間関係に翻弄されたり、他人にはなかなか言えない違和感や想いを、逆に母のパートナーたちに慰められたり意見されたりする様子から、今まで慣れ親しんだ価値観とはまた視点が少し違う気づきが出てくると思います。それは恋愛や人間関係だけではなく、一人の女性として生きることとは? また恋愛を通して互いを想い合い、尊重することとは? という問いに通じるのではないでしょうか。みんなが納得する明確な答えはなかなか出ないかもしれませんが、読んだ上で改めて人間の生き方を見つめ直す価値のある小説だと感じています。

――この作品はどんな人にオススメでしょうか。
これまで体験してきた、または現在進行形のパートナーや家族との関係について疑問や違和感がある、また恋愛について考えを深めてみたい方にオススメです。

――そんな『彼女がそれも愛と呼ぶなら』の隣に置いてオススメしたい作品はありますか?
『新しい恋愛』高瀬隼子(講談社)

一木さんの作品を読んでみて、では他の人の恋愛ってどうなの?と興味が出てくる方も多いはず。でも恋愛話はそれこそ数多く世の中にあるし、また友人たちと話はするけれど、結局自分ごとではないし、実際のところよく分からないのではないでしょうか。高瀬隼子さんの『新しい恋愛』はそんな方にお薦めです。登場人物たちの恋愛がきっかけとなって、色んな愛情にかき回された人の思いも寄らない行動が、読みながらなぜか愛おしく見えてしまうのです。今まで生きるって何?というモヤモヤ感に向き合ってきた高瀬さんならではの説得力があって思わずニンマリします。そして登場人物の恋が連れてくる色々な感情を無理なくゆっくりと読者自身の身体に馴染ませることで、形を決めず人と人が繫がり、今の自分にふさわしい最適解を見つける手助けをしてくれる小説だと思います。

――“恋愛”をテーマとした素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます! コミュニケーションの根幹にも関わる「人を愛するという気持ち」について、どちらの作品もさまざまな視点から味わうことができそうですね。
普段恋愛小説を読む方も、なかなか機会がないという方も、ぜひ手に取ってみてください!

大盛堂書店
住所:東京都渋谷区宇田川町22-1
営業時間・定休日は公式ホームページをご確認ください。
公式ホームページ:https://www.taiseido.co.jp/

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