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《大人のための》共通テスト解答速報

こんにちは、カコタムエルムのいっくんです!
第1回共通テスト、先ほど終わりましたね。受験生のみなさんをはじめ、そのご家族や、教育に携わるすべてのかたへ、本当におつかれさまでした。

今年も予備校各社が軒並み解答速報を掲載していきます。自分も便乗して、でも少し違った視点で、独自スタイルの解答速報を掲載してみたいと思いました。そこで、「《大人のための》共通テスト解答速報」と題して、国語・地理限定で部長なりの考察や解説をnoteに残しておきたいと思います!

📚入試問題は、大人のためのものでもある📚

大学入試問題って、すごく社会的示唆に富んだ内容なんです。
その時々の社会問題や世界の変化をいち早くピックアップし、引用文献や大問のテーマとして取り入れる。そうして、この時代を生きるために必要なアイデアは何なのかを世の中に暗示する。大学入試にはこういった裏テーマがあると私は思っています。

3年ほど前まではSNSやAIなど、情報通信技術に関する話題がブーム。
近年ではジェンダー論や人種問題、ナショナリズムやグローバリズムなどの社会問題に対して、受験界も注目しつつあります。

こうした時代カラーが最も濃かったのはおそらく英文読解。しかし、共通テストからは英論文系の問題が廃止され、個人的には少し残念だな…と思っています(笑)

入試に出題された文章を受験生だけが一生懸命読むだなんてもったいない!いまを生きるためのヒントになるから、大学生や大人にも一生懸命読んで欲しい!」という思いで、必死になってこの文章を仕上げました。なお、私の大学の期末レポートの締め切r…(以下略)

📚国語 私たちは心に妖怪を飼っているのか…?📚

取り上げるのは論説文『江戸の妖怪革命』(著・香川雅信)
中世→近世→近代 という時代変化を、
神霊による支配→人間の理性による支配→理性の不完全性の発覚
という構造で説明するオーソドックスな構成です。この変化を読み解くアイコンとして妖怪が登場。「妖怪観」の変遷が印象的な文章となっています。

2020年は折しもアマビエが有名キャラクターとなった1年でしたね。中世において妖怪は、天災や疫病などといったような、人間には予見不可能な出来事を警告してくる、不気味で恐ろしくてリアルな存在でした。しかし近世に入ると、妖怪はフィクショナルな存在となります。人間が妖怪にキャラクター性をあてがい、妖怪は人間のコントロール下に置かれたのだと言います。

アマビエ人気も、近世的な認識で説明がつきますよね。アマビエが架空の存在であることはみんな知っていて、「疫病退散キャラ」として都合よくもてはやされている。まさに人間のやりたい放題です。

758px-肥後国海中の怪(アマビエ/アマビヱ)

そして、この先の段落にある重要なテーマが、これ。

《人間の内面=妖怪》なのか

「オバケより人間のほうが何考えてるかわかんないし、よっぽど怖いわ。」とかってよく言いますよね。人間の理性が妖怪や自然のなにもかもを支配できると思いあがっていた時代は終わり、近代は人間が人間自身すらもコントロールすることができず、不安に苛まれる時代になったと筆者は論じます。なぜなら、いままで完璧な支配者とされた人間の理性は不完全だとわかり、人類は自分の内面にこそ得体の知れない不気味さがあることを知ってしまったからです。

文中には明示されてないものの、「人間の内面こそが〈妖怪〉なのだ」というメッセージを残し、出題文は終わります。「Kindleの試し読みかよ」ってぐらいイイところで終わります。ぜひ買って続きも読んでみたい…(笑)

ちなみに、J-POPの世界ではしばしば妖怪が人間の内面に棲みつきます(笑)。星野源の「化物」や、Eveの「闇夜」YOASOBIの「怪物」などの歌詞を眺めながら、「世の潮流を見通してしまう香川さんの嗅覚、やばいな…16年も前の文章なのに」なんて思いました。

では本当に《人間の内面=妖怪》なのだろうか。たくさんの恐怖や不安に囲まれながらこの時代を生きる私たち。ときには自分も驚くような〈物の怪っぷり〉で感情を噴出させることだってあります。

重要なのは「《人間の内面=妖怪》かもね」という概念も、時代が過ぎれば変化しうるという点だと私は考えます。筆者はミシェル・フーコー(ポスト構造主義)の思想を援用し、「私たちの思考の枠組みは、時代ごとに変化してきたものなのだ」と主張します。誰もが抱えうる内面の歪さを妖怪扱いするのではなく、「それも含めて自分なんだ」と認めあえる時代が来た瞬間、〈妖怪〉は人間の心を離れていくのかもしれません。それは、いろいろなバックグラウンドをもった人たちが集う、私たちの学習支援団体Kacotamが目指す社会にもきっと当てはまることです。

社会を生きるうえで必要な価値観は、時代によって変化する。それにあわせて、妖怪観や入試の形態も刷新されていく。共通テスト時代の幕開けに、激動する現代社会への強いメッセージを添えたかたちとなりました。

📚地理 私たちはデータに飼い慣らされてしまう…?📚

ここからはおまけです。地理は自分が好きだから取り上げました(笑)
2018年のセンター地理では、ムーミンが登場して話題になりましたね。今年はトランプ氏とバイデン氏が登場(?)です。

地理の問題から読み取れるテーマは、

データから現代社会のリアルを読み取る

人々の新聞離れが進むなど、日常生活でグラフを見る機会は激減しました(例にもれず自分も)。その一方で、あらゆる社会問題を解決するツールとして、ビッグデータへの期待は日々高まっています。メディアリテラシーの観点からも、データを見て傾向をつかみ、問題解決に生かす能力を学校教育で養う必要があり、そうしたニーズが入試に反映されているといえます。

傾向としては
①単に暗記だけで解ける問いが減り、データの読み取りが増えた
②気候変動や産業立地、米大統領選など、時事・実用的話題が増えた

この2点が大きいかと思います。

アートボード 3

👆地理 第4問 B 米大統領選に関連する問い
今年は、タイムリーな話題を多く取り入れるなどの変化がみられた。

特に大統領選の大問については、二大政党がそれぞれに支持を得ている理由など、人種問題・経済格差・グローバル化などの人文地理的背景を総合的に問うものとなりました。時事ネタという観点では、今後もオリンピック・パラリンピックやサミットなどの開催に伴い、特定の地域が取り上げられる可能性は非常に高いと考えます。

📚大学入試って、ジブリ映画に似てる📚

いかがでしたか?「へぇ、面白いかも」とか、少しでも思っていただけたらうれしいです。

教育には「次世代を育てる」という一大テーマがあります。しかし、その営みのなかには、大人側にもまた「自己の考えを深めるという楽しさ」があるんだと思います。大人になってから改めて入試を解くと、新たな気づきや生きるヒントがそこにある。小さいころに観たジブリ映画を、もう一回観たくなる感覚にすごく似ているなと私は思っています。

教育・受験界の新たなスタートにことよせて、一人の大学生が思うこと。

「もういちど学んでみたい」

こうした意欲が、教育に携わる人たちの大きな原動力になり、あるいは社会を動かす大きなエネルギーになっていくことを願っています。

文責:いっくん 参考:河合塾HP 大学入試解答速報

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