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アイム ホーム

わたしは川崎フロンターレのサポーターだ。

だが、2019年とごく最近からだが、横浜FCも応援している。
当時はJ2だった横浜FCを応援し始めたのは、別にフロンターレに飽きたわけでもなく
ただ、J2の試合も見てみたいなぁ…という気軽な気持ちだった。
練習場が近所だったし、見てみたい選手がいたのと
前年にフロンターレから、ベガルタ仙台にレンタル移籍をしていた板倉滉選手を見に三ツ沢に行ったこともあり、
その試合は雨で人生初の滝行デビューを果たし、その際に一度訪れていただけだが家からも遠くないので、
三ツ沢に少し親しみを抱いており、一人であるが見に行くようになった。

初めての滝行。雨をものともせずビール飲むサポに戦く。

フロンターレのシーズンチケットホルダーなので、等々力の試合が最優先だが、アウェイの試合の時や日程が被らない時には、三ツ沢に行った。
LEOCカレーを食べながら、のんびりと観戦しながらも、間近に迫るアウェイサポの圧にディヴィジョン関わらずのサポの熱さに微笑んだりした。
中村俊輔選手が移籍してきてからは、試合も練習場も人が増えて驚いたりしながら、ゆっくりと少しづつ、三ツ沢もホームの感覚がゆるゆると育まれていった。
連勝を続ける時の三ツ沢の試合はとても雰囲気もよく、盛り上がっていたと思う。
そして、J1昇格。
にわかサポみたいな自分は、申し訳ないが「マジか!」という驚きが大きかった。
そして、J1はフロンターレ、J2は横浜FCと二足のわらじを楽しんでいたわたしは少し動揺した。
けれど、

三ツ沢の距離感で、フロンターレを見られるのはご褒美のようだし
等々力で横浜FCを見られるのは、晴れ舞台のようで誇らしかった。

それが世の中に蔓延るコロナの影響により、声援を送ることが出来なくなり、あの大好きな大旗がはためき、チャントの響くスタジアムでの試合ではなくなってしまった。
それでも、わたしは等々力ではフロンターレのユニフォームで、三ツ沢では横浜FCのユニフォームで、それぞれのホームでホームのサポーターとして参戦した。
去年はそれぞれのホームで見られることが夢のようで、正直、応援するという気持ちよりも、目の前の状況に恍惚としたまま、興奮状態のままでただ其処にいるだけだった。

そして、今年。
横浜FCも昨年降格がなかったこともあり、J1でわたしが見るのも2年目だ。
三ツ沢で他のJ1チームを見るのも、とても楽しい。
等々力だと敵チーム!負けないぞ!という気合いがやたらに入ってしまうのだが、三ツ沢だと距離感もあり相手チームの選手も
こんな選手いるんだ、とか、思ったより大きいな、とか選手個人も観察出来て、それもまた楽しく、それぞれ違った魅力を堪能している。

去年の途中から、無料券や半額券を所持していたこともあり、友だちを誘って一緒に見るようになり、それもまた、三ツ沢で試合を見る楽しさを増やしてくれた。
友だちもまた同じくフロンターレサポーターなので、彼女と一緒に三ツ沢で応援するチーム対決を見るのをとても楽しみにしていた。
昨年の興奮を思い出して、それを共有出来るのか!と楽しみで仕方なかった。

そんな楽しみな気持ちに水を差したのは、またしてもコロナの脅威。
試合の開催が危ぶまれた。半分は期待しながら、半分は諦めながら、15時が過ぎることを怠惰に待っていた。

Twitterを眺めていると開催の知らせ。
さて!と横浜FCのユニフォームに袖を通し、化粧を済ませて電車に乗り込む。
横浜駅で友だちと落ち合い、三ツ沢へ向かう。
電車の中からもフロンターレのサポーターがいて、横浜FCのユニフォームを着ている自分は微妙に意識してしまう。
いつもなら仲間意識を抱くサポーターなのに、今日は戦う相手チームのサポーターなのだ。
なんだ、この気持ちは・・
今、思うと去年はアウェイサポーターを入れていなかった。アウェイのゴール裏も全てホームの観客のみだったのだ。
去年は抱かず、今年発生したこの気持ちは、そのせいだ。

慣れた道を歩き、公園内を通って三ツ沢に到着する。
早く到着したのもあるが、スタジアムに入ってもホームのサポーターが少なく見えて、若干の心細さがあった。
それを感じてしまうくらい、アウェイの川崎サポーターが多かったこともある。
けれど、いつもはアウェイサポーターの多さなんて、そこまで気にしてない。
確かに昨年の最終節マリノス戦の時は多かったけれど、こんなに意識していなかった気がする。

等々力で横浜FCを迎えた時には「いらっしゃい!よく来たね!」と、何処か親戚のおじちゃんおばちゃんめいた気持ちだったが、その逆は、同じ気持ちではなかった。
自分の席の目の前で、フロンターレの選手がアップを始めて、その時には距離感にドキドキしたのだが、どこか気持ちが淡々としていて、選手紹介の時も横浜FCのメンバー紹介に、いつも以上にはしゃいだりした。


フロンターレも代表召集でいつもと違う顔ぶれだったけれど、横浜FCも色々な影響でいつもとは違う面々だった。
中盤なんかは始めての組み合わせだったし、気持ちが落ち着かない。
落ち着かないのであって、去年感じた興奮とはまた違ったのだ。

基本のルールは理解しているけれど、戦術を語れるような知識もないので、試合を見るときは、試合全体を客観的に見るというよりも、どちらかのチームに肩入れして、そのチーム寄りの目線で見るのだが、やはり、横浜FC寄りになった。
それでも、勿論フロンターレの面々も知っているから、初出場初スタメンのゼインくん緊張してるな、けれど、やれてる、などは思うものの、基本は初スタメンの理久くん頑張れ、と強く思うのである。

結果、横浜FCは敗戦したので、わたしは悔しかった。
それでも好きなフロンターレが勝ったので、嬉しいというか複雑だった。
勝負の世界だし、当たり前なのだけど、好きなチーム同士の対戦なんてドリームマッチ!という短絡的な捉え方をしていたこともあり
なんだか、心が晴れなかった。
出場のメンバーはがんばっていたけれど、今日不在だったメンバーとの試合も見たかったな、とも思った。

こういった心境になるのも、当初は場所の影響が大きいだろうなと思っていた。
ホームスタジアム、という感覚。
けれど、実際はそれと共に着ているユニフォームにも心は左右されるのだと気づいた。
胸に抱くエンブレムを眺めて、選手がエンブレムにキスしたり叩いたり握りしめたりするけれど、こういう感覚があるのかもしれない。
それは、一つのチームだけを応援しても育まれて行くものだと思うけれど、違うチームのユニフォームを着ることで「自覚」なのだと気づく。
選手たちと同じエンブレムを抱くことで、大きな連帯感や親密な気持ちが生まれるんだな。
このチームのサポーターだという自覚が刻まれて、誇りや愛ってものが培われるのだろう。

もしかしたら、横浜FCのユニフォームを着ないで観戦していたら、もっともっと中立な気持ちでいたかもしれない。
それと共に初めてフロンターレのユニフォームを着たときの高揚と興奮を思い出したりもした。

後は、やはりサポーターの存在だ。
チームというのは、やはりサポーターありき。
至上主義という意味ではなくて、選手とスタッフさんたちとサポーターで成り立っていると思う。
選手がサポーターに一緒に戦ってください、などと言うけれど、実際にピッチにサポーターが降りれる訳でもない。応援という形で応戦するのだ。
負けないで!!というよりも、負けないぞ!!という当該意識をぶつけ合う。

昨年は応援というよりも、単なる傍観者だったのだと思う。
目の前のエンターテイメントに興奮するだけの観覧者。
今年は目の前に相手チームのサポーターもいる、という視覚的も聴覚的にも敵対心を起こさせる刺激があったからこそ、自分はこちらのチームを応援している、という自覚が生まれた結果の晴れない気持ちなのだ。

自分でも、こんな気持ちになると思わなくて、一緒に観戦した友だちにも、なんだか申し訳ない気持ちにもなり、この堆く残る曇りは、等々力でフロンターレのユニフォームで思いきりフロンターレを応援し、三ツ沢で横浜FCのユニフォームで横浜FCを精一杯応援することでしか晴らせないな、と思う。

アイムホーム!!!!と曇りなく、大きな声で叫ぶような気持ちを、さあ、またぶつけよう。

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