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私の住む某国で、ウィッグ、増毛、育毛等の広告がやたら目立つようになってきた。世界的な傾向のようだ。例えば中国では、かつら市場が6年連続で20%以上成長しているらしい。整形もそうだが、それによってコンプレックスが解消されるのなら、価値ある商品・サービスだと思う。
近年、日本でも偏見が弱まってきたようにみえるが昔はそうでなかった。
以前の職場での話。
かなり薄くなっていた先輩(仮に鈴木和彦先輩としておく)が、一夜にしておかっぱ頭になって会社に来たことがあった。今であれば徐々に増毛するなどして出来るだけ自然に見せるノウハウ、情報も充実しているのだろうが、当時はそれほどなかったのかもしれない。
本人から一言切り出してくれれば救われるのだが、終始何事もなかったかのように平常運転で仕事する先輩。このようなときは見て見ぬふり、気づいて気づかぬふりをするに限る。誰もが同じように考えたようで、少なくとも本人の前ではいたって自然にふるまっていた。
そんな折、別部門から入電があり、若手の私がそれを取った。
「鈴木さんのメールアドレス教えてください」
会社共通ドメインで@の前が個人アカウントだ。個人名のところは鈴木和彦なら、kazuhikosuzuki、k_suzuki、k-suzukiなどが考えられる。わからないときはイントラネットで調べればよいのだが、当該部門に電話をかけて聞きだす方が早い。
先輩のアドレスはksuzuki@.....だったので、
「アンダーバーもハイフンもなし。suzukiのあたまにkをつけるだけです」
ここまで口にしたところで、むかいの席の同僚が「ぶっ」と吹き出した。
あっ。やばっ。
その日から私と同僚は先輩からランチに誘われなくなった。
巻き込まれ事故である。
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