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【書評的な】グレーゾーンとその周縁の子ども支援

 2007年(平成19年)4月1日付けで施行された、学校教育法等の一部を改正する法律により、以下の文言が学校教育法に追加され、「特別支援教育」がいわゆる普通の学校でも取り組まれるべきものと位置づけられるようになりました。

小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び幼稚園においては、次項各号のいずれかに該当する児童、生徒及び幼児その他教育上特別の支援を必要とする児童、生徒及び幼児に対し、文部科学大臣の定めるところにより、障害による学習上又は生活上の困難を克服するための教育を行うものとする。

 そんな社会背景もあって、教職課程を履修した大学時代も、公立(普通科)高校の教員時代も、「特別支援教育」と名のつくアレコレはよく耳にしたり、所謂グレーゾーンの子と関わる機会が少なくなかったりしたこともあり、何かと関心事の一つとなっていました。

 NPOでの学習支援の活動を初めてからも、所謂グレーゾーンの子だったり、学習に対する困難を抱えた子と対峙することが少なくありません

 そろそろ「特別支援教育」の復習というか、情報のアップデートをしなければと思っていたところ、以下の本が目にとまりました。出版されてまだ1ヶ月余りのようです。

漫画+まとめで圧倒的な読みやすさ

 教育界隈の解説書はなかなかにヘビーな文体のものが多くて、読み進めるのが大変なことが多々。日々の実践の中に落とし込めるぐらいにかみ砕いて読み込もうと思えばなおさらです。

が!

 この本だと、漫画で具体的なケースが示されて、その中で対応方法や考え方が示されているので、「あー!あるある!」と思いながら読み進められます。

 4章立てになっていて、各章末には、その章で紹介された内容のまとめ(見開き1ページ分)が必ずついているので、ざっと要点の確認もしやすいです。

 なかなかゆっくりと書籍を読む時間を作れないという、ハードワークをこなす、子どもと関わるアレコレをしている人に、オススメです。

ちょっと時間がつくれるなら......

『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』の「おわりに」の部分には次のような記述がありました。

”教育系の一般書については、これからは漫画が主流になるかもしれない” 本書を作成するに当たり、そう感じました。これは拙書『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮社)に寄せられたネット上のレビューなどを見て思ったのですが、こちらが意図したことを違った風に理解されている、一番して欲しくない読み方をされている読者が、教育を職業としているであろう方々に多かったことでした。(※太字は斉藤によるもの)

 『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮社)は、キャッチーなタイトルも相まって、界隈のみならず結構話題になった本なんじゃないかと認識しています(50万部越えの大ベストセラーらしい)。そんな話題本がミスリードされるなんて!と思いながら、気になってしまったので勢いで読み始めました(元々読もうとは思っていたんだ)。

 それなりのボリュームの新書なので、普通に読み進めるとそれなりにヘビーですが、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』を読んだ後だと、重なる部分も多く、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』の内容で物足りなかった気がするような部分に、学校教育現場以外での事例から補足がされている感じで読み進められます。

 一方で、タイトルにある「非行少年たち」の方面にだいぶ話は引っ張られていて、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』ほど、広く子どもと関わる活動の中で、現場レベルに落とし込みながら理解しやすいかと言われると、ちょっと難しいところがある気はしました。

 それでも、斉藤としての収穫としては、
 〇 漠然と抱えていた「褒める指導」への疑念感に対する一つの答えを提示してくれたこと
 〇 支援の連続性(その先を見据えること)の重要さを再認識できたこと
などがあったので、グレーゾーン(とその周縁)の子と関わる機会の多い人が、なんとなく抱えているモヤモヤに対する何らかの答えか、考え方の方針は提示してくれるのではないかと思います。

◇◆◇◆

 特別支援教育やら、子どもを取り巻くあれこれやら、スクールソーシャルワークやら、アウトリーチやらなんやら、今の活動の基盤になるであろう情報を得るための積ん読本が増えてしまっていた中、『境界知能とグレーゾーンの子どもたち』は、それらの本を消化しなくては!という何か元気をもらえるような一冊にもなった気がします......。

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