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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2021年4月の記事一覧

異語り 039 浄玻璃の鏡

異語り 039 浄玻璃の鏡

コトガタリ 039 ジョウハリノカガミ

女子は占いが好きだ。
早ければ小学生の時から、たいがい高校の頃には、学校に占いの本や心理テストの本。
場合によっては自分のカードを持ち込んで友達を占う子もいる。

私の友人にも占いが得意で、よく当たる子がいた。
それほど活発なタイプではないのだが、男女問わず好かれるような、感じのいい子だった。
みんなからは、モナカと呼ばれていた。

モナカはタロットが得意

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異語り 038 クレマチス

異語り 038 クレマチス

コトガタリ 038 クレマチス

植物を育てるのがうまい人は緑の指を持っている。
そんな話を友人のかすみから聞いたので
「じゃあ、私はすぐに枯らしちゃうから茶色の指だな」
と笑うと
「私も同じ、サボテンも枯らしたことあるし」
と、かすみもカラカラと楽しそうに笑い飛ばしてきた。

かすみは1人暮らしをはじめて最初にできた友人。
さっぱりとした性格で自分ともうまがあった。
家も近くて、よく一緒に出かけ

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異語り 037 育つ座敷わらし

異語り 037 育つ座敷わらし

コトガタリ 037 ソダツザシキワラシ

1人暮らしをしていた頃はよく引越しをしていた。
2年ごとの更新時には必ず。時にはそれを待たずに移ることもあった。
こだわりの条件は家の古さ。

新築だと壁にピンを刺すのもためらわれるが、古い家なら釘も打ち放題。
模様替えが趣味だったから、とにかく自由に弄れる部屋を探していた。

そんな理由で古い物件を探していると、事故物件的な部屋を紹介されることもある。

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異語り 036 入学式

コトガタリ 036 ニュウガクシキ

小学校低学年の記憶はほとんどが断片的でおぼろげなものばかりだ。
けれどもなぜか入学式の記憶だけは鮮明に覚えている。

その日は珍しく父もいて、私は朝からはしゃいでいた。
新しいピンクのワンピースに白いボレロを着て、ピカピカの真っ赤なランドセルを背負って小学校へ行った。

教室の机には自分の名前が書いてあるシールが貼ってあり、新品の教科書が積んである。
6年生の

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