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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2020年9月の記事一覧

異語り 009 ハーメルンの笛男

異語り 009 ハーメルンの笛男

コトガタリ 009 ハーメルンノフエオトコ

ある夜、外から口笛が聞こえてきた。
千と千尋の神隠しの『いつも何度でも』
しかもめちゃくちゃうまい!

そっとカーテンの隙間から外をうかがうと
三軒となりの家の前に自転車にまたがった人影が見えた。

荷台にゴムバンドを巻き付けた自転車
作業着っぽい上着に野球帽
顔までは見えないがシルエット的におっさんっぽい

三軒となりは松本さんと言う若いご夫婦が住ん

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異語り 008 河童小僧

異語り 008 河童小僧

コトガタリ 008 カッパコゾウ

息子の通う小学校は創立100年を超える古い学校です。
さすがに創立当時の校舎は残っていませんが、旧校舎は50年越えのかなり年期が入ったもの。なによりトイレが暗い、臭い、汚いの三つ揃えでした。

今年、ついに市で予算が付き改修工事が行われることになりました。
工事期間は約半年。
何かと不便にはなるものの先生も子どもたちも大喜びで工事を見守ります。

ところが、工事

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異語り 007 外影

異語り 007 外影

コトガタリ 007 トカゲ

学生時代に暮らしていたボロアパートの話

時々アパートの前を走っていく人がいた。それも結構遅い時間
なんでこんな時間に?
はじめはそんなことを考えていたと思う。

当時住んでいたアパートは住宅街の中でも結構入り組んだ奥の方にあった。
太めの通りから1本中通りに入り、さらにそこからコの字に周回するような細い道 その角っこにアパートが建っている。
ちょうど部屋の窓の前に、

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異語り 006 手稲山の神隠し

異語り 006 手稲山の神隠し

コトガタリ 006 テイネヤマノカミカクシ 

今住んでいる所から海は見えない。でもカモメは時々見かける。
庭にはキツツキやエゾヤチネズミが遊びに来るし、近所には雉や鹿も出没する。
自然豊かでのんびりした所だ。
そんな地元の怪談はないかと探してみると、意外とぽろぽろと見つかった。
中でも毎日のように眺めている手稲山は心霊スポットの宝庫のようだった。

手稲山の中腹には昔 オリンピアランドという遊園

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異語り 005 瓶詰め

異語り 005 瓶詰め

コトガタリ 005 ビンヅメ

ある日ビーチコーミング中に大きな酒瓶を見つけた。
ランドセルくらいありそうな大きな瓶
ガロン瓶と言われるやつだろうか

その中に何か入っている。
「もしかしてたこつぼ状態?」
ちょっとわくわくした気分で、ずっしりと重いそれを抱えるようにして拾い上げた。
薄茶色に所々黒っぽいところがあるぶよぶよとした質感の物体がみっちりと瓶に詰まっている。

タコはこんな細い口からで

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