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【心に残るドラマ】「きのう何食べた?」(2019年 テレビ東京)

amazon primeで配信されたのをきっかけに、遅ればせながら観た。

原作マンガを読んだことはなく、ドラマも好評なのはなんとなく聞こえていたが、地上波オンエア中は、観るほどには関心が向かなかった。


その後primeビデオでたまたま「フルーツ宅配便」「宮本から君へ」とテレ東ドラマを続けて観た流れで、第1話を再生してみたのがきっかけだった。

その30分間でつかまれた。一気に観終わったいま、完全に「ロス」である。


相手のちょっとした言葉に傷ついたり、他人の視線が気になったり、両親の思いを負担に感じながらも感謝したり。なんてことはない日常が淡々と描かれているのだけど、主人公が中年のゲイカップルという設定であることで、自分にとっては「知らない世界」であり、始めはとても新鮮に映る。


でも、だんだんと気付く。人を愛することへの喜びとか苦しみは、相手の性別がどうであろうが同じだということに。そしていつの間にか、シロさんと一緒に思い悩み、ケンジに感情移入して泣いているのだ。


それにしても、主役の2人の演技が素晴らしかった。表情のひとつひとつが、それまで40年以上を同性愛者として生きてきた中年オトコとしての「人生」を見事に感じさせていた。


この作品について西島秀俊がインタビューを受けている記事を読んだのだけど、そのコメントからも、彼らがいかに正確に時代の空気をとらえ、その中で受け入れられるための表現をするために考え抜いていたかがよく分かる。


「これだけの人気を得た理由についてどう思うか」と聞かれたときの西島秀俊の回答を、ちょっと長いけれど引用する。


“厳しい世の中で、なんでもない日常を丁寧に生きる。ご飯を作って一緒に食べる温かい食卓は、安全な場所であり、2人の心の繋がりを感じる場所でもある。その心の繋がりを、自分が思っている以上に相手が思ってくれている、そういうことを食卓で改めて確認する。その守られた場所を皆さんが求めているのかなと思いました。日常のなんでもないことを大切にすることで、混沌とした世界を乗り切ろうという思いがあるのかもしれません。”

―西島秀俊、『きのう何食べた?』ロスで続編願う「ケンジに会いたい」
https://www.oricon.co.jp/confidence/special/53428/


このコメントを読んで、ふと思った。「厳しい世の中で、なんでもない日常を丁寧に生きる。」これはおそらく、ぼくがこの前に観ていた「フルーツ宅配便」「宮本から君へ」にも共通するテーマではないか。それぞれトンマナは異なるけれど、登場人物たちは、「なんでもない」けれど「厳しい」日常を懸命に、丁寧に生きていた。これらテレビ東京の深夜ドラマには、平日仕事が終わり、つかの間のほっとする時間に、西島秀俊が言うところの「心の繋がり」を感じさせてくれる「守られた場所」を提供する、そんな志があるのかもしれない。だとすれば、昨今バラエティに富んだ良作を連発していることもうなずける気がする。


そして、気付けばこれらの作品にどっぷりハマっているぼくも、ちょっと疲れているのかもしれないなと思った…

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