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などらきの首 澤村伊智著 角川ホラー文庫(2018年10月発行)

初の短編集です。裏表紙のあらすじを見て知ったのですが、比嘉姉妹シリーズという人になっているみたいですね。野崎の立場は?と思いますが、まあいいでしょう。

六篇が収録されていてそれぞれが違う時系列で物語が展開します。全体の感想を一言で言うと

「面白さ倍増、怖さ半減」

という感じです。怖さ半減と書きましたが、まったく怖くありませんでした。むしろちょっと(霊的に)不思議な話を交えたミステリという感想で読み終えました。ホラー風味のミステリや、SF設定をいかしたミステリというのはよくありますが、これはホラーの中でのミステリですね。

だから、謎めいた出来事に対して一通りの論理的解決をしつつ、人間の論理でははかりしれない何者かの動きにより幕を閉じる、という物語がほとんどです。

順番にご紹介を

「ゴカイノカイ」
真琴が事務所を借りるきっかけとなったお話です。貸しビルの五階におきる怪異を真琴が解決します。

「学校は死の匂い」
真琴が三ツ角小学校に通う頃の、体育館で起きる幽霊騒ぎのお話です。主人公は美晴です。ちょっと悲しくなりました。

「居酒屋脳髄談義」
居酒屋でのオヤジどもによるセクハラ発言をめぐる物語です。名前は明かされませんが、登場するのはおそらく比嘉琴子です。

「悲鳴」
大学での映画同好会におきる悲劇と怪異が解き明かされます。比嘉姉妹も野崎も登場していないようですが、「ずうのめ人形」のあの人が主役なのではないかと想像しています。

「ファインダーの向こうに」
ずうのめ人形の電子書籍特典ということで、編集部メンバーが総出演です。もちろん時系列的には前で、野崎と真琴が出会うきっかけとなったお話です。ラストシーンでは心が温かくなります。

「などらきの首」
野崎が高校生の時のお話です。同級生が小学生の時の恐怖体験を野崎が論理的に解決します。「野崎よ、お前、そんなキャラだったのか」と突っ込みたくなります。


どれも面白くて、相変わらずの一気読みをしてしまいました。個人的にはこういう傾向は大好物ですが、もう一度「ぼぎわん」のように、タイトルを思い出しただけで背筋に冷たいものが走るような、ガチガチのホラーが読みたいです。

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