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ずうのめ人形 澤村伊智著 角川ホラー文庫(2018年7月発行)

「ぼぎわんが、来る」で鮮烈なデビューを果たした著者の第二作目です。

今回は不審死を遂げたライターの自宅から見つかった原稿を中心に話が進みます。主人公はオカルト系雑誌を発行している出版社の若手編集者、藤間。

この出版社には前作にも登場している「岩田くん」がアルバイトとして勤めていますが、この藤間と岩田くんが不審死の第一発見者となります。現場から発見された原稿を勝手に持ち出し、一足先に読んだ「岩田くん」が藤間に原稿を読めとしきりにせっついてきます。

この展開とホラーというジャンルからわかるように、この作品は「リング」を意識した作品となっています。

このあと、作中作として原稿と、それを読む藤間の描写が交互に現れます。最初のうちは、作中作に登場する女子中学生が、父親のDVから逃げて母親や弟妹とこっそり暮らしている描写が続きます。ホラーをイメージさせるのは女子中学生が極度のホラー好き、というぐらい。

読んでいても最初のほうはつらいですね。女子中学生の父親に怒りを感じさえするのですが、そんななか、女子中学生が友達から「ずうのめ人形」のはなしを聞かされます。

そうこうしているうち、先に原稿を読んだ岩田くんが無残な状況で殺されます。「人形が見える」という言葉を残して。

そして、原稿を読み進めている藤間にもその人形が見えるようになり、彼は野崎と比嘉真琴に助けを求めるのですが・・・。

この作品も三章に分かれています。第一章でも結構な展開を見せるのですが、第二章以降では「どんでん返し」の連続です。

第二章では意外な事実が次々と明らかになり、藤間・野崎・真琴の三人がいよいよ、人形(呪い)の正体に迫っていき、第三章ではいよいよ対決、となりますが、「どんでん返し」は終わりません。

ああ、書きたいけど書けないこのもどかしさと言ったら・・・

第一作目と同じく、行間から迫ってくるじわじわとした恐ろしさ。登場人物たちが抱える心の闇の恐ろしさは変わらずですが、今回はほぼミステリ的な面白さが勝っています。今回も読み始めたが最後、次が気になって、他のことが手につきませんでした。

第三章の最後は、とても意外な人が呪いとの勝負に挑みます。本作最大の驚きです。でも、そのあとの終章のほうが驚き度は低いものの、背筋にひとつ冷たいものが走る怖さがありました。

というのは・・・やっぱり書けない。とにかく読んでみてください。損はないと思います。

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