2021.02.16 連休の過ごし方





彼の連休に、一緒にいることになった。
会うとなるといつも彼が2時間かけて車で静岡まで来てくれる。非常に申し訳ないという気持ちがあるが、本人が楽しんで来てくれているので有難い。社会人になって遠距離が難しいとなった時はいつでも近くに引っ越すよとも言ってくれている。大人になってそれぞれの生活がある中でなかなか言い切れないことだと思う。
ピンポンが鳴り、扉を開ける。髪を切っていた。とても似合っている、そもそもの顔がいいので別にどんな髪型をしていても関係ない。彼は、会えない期間が続いてやっと会えるとなった時、前日などに必ず、容姿気にしないで、というような内容の文章を送ってきて、わたしは気にしないよ、と返すんだけど、会ったらいつも通りかっこいいので毎回、あの会話まじでなんだったんだよ、と思う。
このご時世なかなか人混みには行けないので、家でお酒を飲むか、車で田舎へ行くかになる。今回の連休はお互いの友達に会わせようがコンセプトで、山梨まで車で行って、わたしの親友・小柳とお茶することになっていた。
運転は休み休みで山梨へ向かった。途中寄った忍野八海で携帯を見失い、探して歩く時間があった。わたしはよく携帯を見失ったり、ホテルの外に出てから室内履きスリッパなことに気づいて部屋に戻ったり、全て揃っているか確認せずに提出物を送り不備があって戻ってくる、というおっちょこちょいテへペロムーヴがあるんだけど、彼はそういう時も怒らないで待っていてくれる。気の長い優しい人だ。
山梨へ来たのだから、志村に所縁のある場所に行っておこうかということになった。はじめて会って飲んだ時、フロントマン5人あげるとしたら誰?という話になって、バンプの藤くんやラッドの野田さんが出る中、わたしは志村をあげていた。彼も最近特によく聞き返していたらしい。
志村のお墓があるお寺に到着し、墓地へ向かうが広すぎてなかなか見つからない。近くでお墓参りをしていたご家族に訊くと連れて行ってくれた。人に聞かなかったらなかなか見つけるのは難しいところにあった。ネットの情報通り、コーラがたくさん備えてあって、手ぶらで来てしまったことを後悔したりした。死後10年以上経って尚愛されていることに嬉しくなったり、それでも生きていてほしかったと胸を痛めたりした。隣で彼も何も言わずに手を合わせていた。
フジファブリックへの愛には、苦しみが伴っているので、書くのに勇気がいる。
誰しも一曲くらいは、聞くと思い出が溢れてくる曲というものがあるのではないかと思う。わたしにとってそれがフジファブリックの『エイプリル』で、だいすきだけど、なるべく聞かないでおくようにしている。聞くとフラッシュバックする記憶があるし、「何かを始めるのには何かを捨てなきゃな」の、わたしは捨てられる側だったんだな、とか、そういう無駄な感情が動いてしまう。胸の奥に鍵をかけてしまった思い出の、内容は何も思い出せないのだけど、当時の辛さや悲しみだけは身体に残っていて、それを誘発してくる。
それほどまでに人の心を揺さぶる曲たちということだ。
お昼ご飯は志村がよく行っていたカフェで志村がよく食べていた大根スパを食べることにした。といっても、わたしは炭水化物が食べられないので、彼だけがそれを食べてわたしはポークステーキにした。

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どちらもおいしかった。車内でも志村の声が流れていた。
小柳と純喫茶で待ち合わせ、好きな人と好きな人を会わせることに成功した。嬉しくてふたりを並べて写真を撮ろうとしたら小柳に全力で拒否られた。ふたりはウインナーコーヒーを、わたしはレモンティーを頼んだ。小柳はセブでアルコール中毒になって病院に運ばれた次の日にバトミントンをしたけど具合が悪くなり温厚な友達に怒られた話や、携帯が壊れた後にタクシーに轢かれた1日の話をして場を沸かしていた。小柳くらいフリートークの強い女をわたしは知らない。恋人の好きなところを聞かれ、いつものように顔と答えてしまったの、親友の前なのだから本当のことを答えたらよかった。わたしは照れ屋なので、恋人の好きなところを聞かれた時には顔とえっちですと答えることに決めている、本当のことなんて2人だけが知っていればいいから。
あっという間の2時間だった。帰りに店主のおじいさんがティッシュをくれた。車に乗ってから、写真で見るよりかっこいいでしょ、と言うと間伐入れずに、かなが好きそうな顔だよね、と笑っていた。小柳を家まで送り届けてから彼にも、かわいかったでしょ、と言うと、かなの次にね、と彼。わたしが今言ってほしかった言葉だな、と思って、流れゆく夜の街をじっと見つめていた。
彼には、一回目付き合ってくださいと言った時は僕のことは気にせず他で探してくださいと言われ、お互い好意が確認出来てからも恋愛以外の関係性でいいと言われていたのを、押し切って押し切って付き合ってもらうことになったので、振り返ってみるとそんなに恋愛関係に固執する必要がなかったかなとも思うけど、なかったら今はないわけだから、当時のわたしの努力はあっぱれだし、受け入れてくれた相手に対してもありがとうが絶えない。
ゲストハウスのようなアパートの一室のような宿が、わたしたちはとても気に入り、ここに住みたいねと話していた。山梨の夜は寒くて、ひとつの布団に入って眠った。布団の中での会話が途切れ途切れになってきて、彼からも寝息が聞こえてくるくらいの時に、いつか結婚して、とこぼれ落ちてしまって、慌てて拾おうとしたけど、彼は聞いていたのかたまたまタイミングが合っただけなのか、体を引き寄せて背中をさすってくれた。
翌日、また交代交代で運転しながら彼の家の方へ向かった。途中リニアモーターカーの見学施設に行って、興味ないと言っておきながら通った後は誰よりも興奮しているという落ち振りのお手本みたいなことをして遊んだ。高速に入る時や車線変更でスムーズにいかず一回止まって流れが途切れるのを待ってたら、高速で止まる人初めて見た、と言われた。3回くらい死ぬかと思う瞬間があった。
今度は彼の友達に会う番だった。職場の人と窓越しで顔を合わせたり、彼の友人2人にも会った。ひとりの友人は彼の服装がちゃんとしていることに驚いていて、普段どんな格好しているんだよ、と思った。カードゲームをしたりした。言葉で伝えるのが難しいくらい盛り上がった。その日の夜酔っている時に、一緒になって楽しんでくれて嬉しい、今までの子は見てるだけでいいとか、そういう感じだったから、と言われて、色々考えるところがあった。たぶんわたしは恋人間で片方だけが楽しいとか、片方だけが辛いとか、そういうことはできるだけない方がいいと思っていて、だから彼が楽しいと思うことはやってみたくなるし、仕事を介護にしてみたのもそこの延長のような気がする。もしやってみれないことだとしたら想像したり知識をかき集めたりすることはできる。わたしが男だったとしたら、彼女が妊娠中はずっと石を詰めたリュックサックを背負って生活していただろう。
タトゥーもその要素が強い。どれくらい痛いのか、どんな痛さなのか、どんな感情になるのか、一緒にいるのであれば、わからないよりわかっている方がいい。彼に白インク入れました、と報告したら、え、え、え、ちょっと待って、しか言わない人になって、2分間フリーズしていた。俺の好きになる人は最高だと思ってくれたらしい。これからは彼が痛かったと言った時に、電気やレーザーの痛みじゃなくてドリルで穴彫られてる方が近いな、とか思いながら聞ける、それがほんとうに嬉しい。
彼のお兄さんにも会った。同世代じゃなくていいんですか、とか、最初ホテルに泊まりましょうという約束で会ったという話をしたら、よく行きましたね、と言われたりした。お兄さんの部屋の窓からは富士山が見えた。
彼が素敵な人に囲まれていること、その人たちに愛されていることを知れて、自然と笑みが溢れる。
彼と付き合っていることを言うと、彼を知っている人たちには必ず、変わってるから大変でしょう、みたいなことを言われる。わたしと出会う前に人でも殺したのか?と思う。一緒にいても常にわたしよりもまともだし、走ったり食べ物に気をつけていたり健康的な生活をしているし、仕事も皆勤賞で、わたしからは何も言うところがないし、わたしの前では基本名前を呼んで好き〜しか言っていないので、そんなに特別大変なところはない。むしろ向こうのほうが大変だと思うくらい。
気になって、どういうところを見てそう思ったんですか、と聞くんだけど、全員が全員何も教えてくれないので笑ってしまう。みんなわたしに彼の情報を投げてください。
人に続けて会ったので少し気疲れしてしまい、普段なら彼から提案してくる別行動の時間を今回はわたしから言って1時間取ってもらった。その間トイレにゆっくり入ったり夜飲むお酒を買ったりして、残り時間は短編集の誤字脱字チェックをしていたのだが、集合時間の10分前くらいに彼から、いつになったら会えるの?とラインがきて、少し早めに再会を果たした。別行動の時間は日に日に少なくなっていっている。最初は手を繋ぐのも嫌いなのかなと思ったり、人といるのが苦手だからと一緒にいてもどこかのタイミングで別行動の時間を挟んだり、一緒に住むとかもやめておこうかって話をしていたんだけど、最近は向こうから手を繋いでくれるし、別行動の時間も短くなってきたし、3月一緒に住んでみようかって話になっている。
連休最後の夜に、わたしはどうしても餃子が食べたくなってしまい、スーパーに行ったんだけどフライパン調理のものしかなくて諦めかけていたら、彼が少し先にある餃子の王将まで走って買いに行ってくれたりした。目を瞑ってレモンサワーを飲んで何か当てる、効きレモンサワーのようなことをしたけど、彼は1回も当たらなくて、めちゃくちゃ笑ったしめちゃくちゃ酔った。地震があった時ふたりとももう寝ていて、ハッと起きてわたしが背中にくっついて、次起きた時にはもう5時を回っていた。
またね、と言いながら、また会えますようにと思う。これで最後になりませんようにと、未だに思ってしまっている。彼の車が見えなくなるまで手を振る。彼にも見えているだろうか。
当たり前に会える幸せもあるけど、一回一回楽しみにして会いたいし会えたら感謝したい、これからもずっと。

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