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他学部卒のための臨床心理士指定院入試対策 応用心理学(+α)編

序文

この記事は、私が臨床心理士指定院入試を経験する中でなんとなく感じた事や、今後目指される方にはこのような事を意識するべきなのではないかという事を、個人的見解のもと、つらつらと書くものである。

以下のマガジンに過去に(院試関連で)書いたものをまとめているので、興味のある方は参考にしていただければ。。。

もう一つ最初に書いておくと、心理系院試における専門科目の勉強範囲は、

  • 基礎心理学

  • 応用心理学(精神医学含)

  • 心理統計

に分けられると思う、と前回の記事で書いた。

今回はその応用心理学編であると述べておこう。(追記:応用心理学というか、専門科目の臨床心理学+α編という感じになった)

私について

私は(地方国立)他学部を卒業した年である2022年5,6月から勉強を始め、秋に3校受けて全落ちし、その後心理系院受験予備校に入って3,4ヶ月必死になって勉強し、2月入試で2校に合格(私立と国立)。

心理系院試における専門科目とは何か

まずは、以下の過去問群を見て欲しい。心理系院における問題の幅がむちゃくちゃ広いことを知って欲しい

「教育支援センター(適応指導教室)」について説明しなさい。

東京学芸大学院・2021年

メンタルヘルス不調を理解するための心理臨床学モデルと精神医学モデルについて理論および実践の観点から違いを述べなさい。

大阪大学院・2022年

あなたが今カウンセラーであると想定します。担当のクライエントから、担当カウンセラーを交代して欲しいと間接的に伝えられた時、あなたは何を考え、どのように対処しますか? 800字以内で述べなさい。

北海道大学院(改題)・2016年

自分の趣味的に難しい院の問題ばかり引用してしまったが、いわゆる中堅どころの大学院でも難しい問題を上げることが多々ある。ぜひ志望校の問題を確認して欲しい。

上で引用した問題でいうと、「適応指導教室」は応用心理学というか臨床心理学の範囲であるが、ぶっちゃけ臨床心理学の範囲というかほぼ教育心理学領域の単語である。ただ「適応指導教室」は、河合塾KALSの赤本に載っている単語なので(=基本的な単語)、

受験生全員書けると思われる(落とすとアウト)。

二つ目の阪大院の問題は(過去問を見れば分かるが)、阪大院の問題の中では比較的解きやすい。とは言え臨床心理学と精神医学の理論と実践の相違について尋ねているので、少なくとも記述におけるポイントが4つある(臨床心理学と精神医学の、理論と実践それぞれ相違点)。丁寧に書かないと失点しやすいんじゃないかという気がする。

北大院は、私が(半分趣味で)心理系院の問題を色々と見てきた中で、最も難しいと感じた院だ。北大院は毎年このような抽象的な論述問題を出題している。予備校の心理系講師に北大院の問題について尋ねたところ、「問題を通して現場感覚を問うてる」らしく、まあ私(心理支援経験なし・他学部卒)にはちょっと、自信をもって書けないな〜と思わされた。

つまり

何が言いたいかと言えば、各院によって傾向が全く異なるということだ。用語説明で基本的な事を問うてくるところもあれば、抽象的で教科書には全く載っていないような事を問うてくる院もある。東京学芸大院のための勉強をしていても、北大院には通用せず、その逆も然りという訳だ。

受験勉強を開始した時点で志望する院を決めるのはきっと多くの人にとって難しいと思う。なので、最初は(臨床心理学と精神医学について)基本的な勉強(全大学院に通ずる勉強)から始めていって、試験本番の2,3ヶ月前から志望校に沿った勉強をすると良いのではないかと私は思う。秋季ならば7,8月、春季なら12月くらいからやると良いのではないだろうか。

専門科目の基本的なところでのお勧め

まず前提として私は、10月後半から通い始めた予備校のテキストに非常に助けられた。なので私は、それらのテキストの補助教材として以下を使っていた(他学部卒の人には、心理系予備校に通う事を強く勧める)。

臨床心理学

この本をまるっと覚えれば臨床心理学における基本的なところは◎である。文章がとてもわかりやすく、理解しやすい上に網羅性があるので、個人的には河合塾KALSの赤本よりずっとお勧めである。またよくわかるシリーズに通じて言える事だが、各ページにある図が異様に分かりやすい。縮小コピーしてノートに貼るのも良いかもしれない。

ただこの本はあくまで基本的な事なので、応用的な事となるとやや足りない。したがって応用的な部分は他のwebサイトであったり、参考書で補っていくと良い。

精神医学

自分の母が持っていたので、借りて読んでいた。これをもとに勉強するというよりは、辞書代わりに使うと良いのではないかと思う。

↑このサイトはとても纏まっていて、特に精神医学のページは何回も見た。このサイトをもとに学習するのは、結構お勧めである(誰が書いているのか分からない不安はあるが)。

専門科目の一歩踏み込んだ理解のために

ここから先は志望校の傾向に大きく依存する話なので、人によっては全く合わない可能性がある。一応自分の志望レベルとしては、難関(?)国公立くらいである。

全てに言える事

ここらへんは大学受験と変わらないのだが、良き勉強法とは、その分野における良書を読むことだ。大学受験なら良い参考書を反復させる事で知識の定着が出来る。院試は予備校のテキストを何回も回したり、あるいはその分野の良書を読むことが適切な勉強法だと思われる。

教育・発達系の問題を出してくる院志望の人にはお勧め。たとえばK-ABCはどういう児童に用いられそれは何故なのか、とか、適性処遇交互作用が教育において大事な理由とか、一歩踏み込んだ理解をしたい人にお勧めである。

https://chabonavi.jp/column_glossary/

↑何故か埋め込み出来なかったが、『社会的養護』関連の用語集サイトである。児童虐待をテーマにした問題が出題される院を受ける人は読んでおくと良い。

論文検索における便利サイト、Google Scholarである。これが何かというと、何か勉強に詰まった時は、論文を検索すると良いですよという話である。

スマホ上で出来る

スマホでスクショを撮って、トリミングして、画像編集でマーカーを引けるのだが、自分はそういう事を夜寝る前にやってた(本番1ヶ月前から)。

↑の画像はまさにそれをやったやつで、スカラーで論文検索して、スマホで拡大して見て、スクショしてマーカーして、あとはLINEやDiscordの自分専用グループに画像を投稿。朝起きた時にそれを見返して記憶を定着させる……そんな感じの事をやってた。

ぶっちゃけ深い事を聞いてこない(穴埋め問題だけ出題するような)院では、この勉強法はやるだけ無駄なのだが、論述問題があるような院を受験される場合は、こういった勉強法もお勧めである。

論述対策としては上の本もかなりお勧めである。かなり実践に即した問題集であると言えると思う。解説も丁寧だ。ただ、ちょっと首をひねりたくなるような事もちょくちょく書いてある(論述の回答は専門用語を散りばめた難解な文章にするべきだ、みたいな)ので、この本だけで論述の勉強を済ませるのは危険かなと私は思う。また、その問題に対する模範解答集になっているので、体系的な学習がこの本では出来ない。

司法領域・保健福祉領域の出題がなされる、つまり公認心理師領域の出題がなされる大学院を受験される人にお勧めである。+αとして足りない知識を補うのにうってつけだ。

補足的な話

合格ラインは何割なのか?

結論から言うと、7〜8割取れていれば問題ない。少なくとも、9割や8割後半が求められるような高得点レースではない。この点については私も一受験生であり、強く確信しているものの根拠がある話ではないので、あくまで参考程度にとどめてほしい。

まあ一般的に厳しいとされる春入試でそんな感じだったので、もしかすると秋入試だともう少しボーダーラインは下がるかもしれない。知らんけど

どの程度まで覚えると良いのか?

心理アセスメント法や心理療法に関しては、真っ白な紙に対して、主要なものの一覧を書けるようになれば良いのかなと思う。何かのヒントに頼る事なく、勝手にバーーッと書ける(提唱者や対象者、具体的内容等含めて)ようになる事が最終目標だ。同じ感じで、主要な精神疾患や発達障害に関しても、0から書き出せるようになれば、最早勉強する必要がない。

筆記試験の裏話

私は秋入試の時に一次落ちを2回経験した訳だが、そのうちの一つの大学院では、問題に「障害者福祉に関する記述問題」が出た。いま考えると、公認心理師範囲を聞いてたんだなと思うが、あの頃は、こんなの分かるやついるのか、、、??? と思っていた。

また秋入試で受けた別の大学院は、例年過去問の傾向が決まっており、どれもまあまあ簡単な部類だった。そこで私としてもここで決めてやる、と思って臨んだのだが、本番になってみると、問題傾向が150度くらい変わっていた。これもいま考えると、傾向と違うと言えどもその領域では超基本的な単語を聞かれていたので、書けないとそりゃマズイだろうなという感じだったが、私は見事に書けず、不合格だった。志望校の問題傾向に頼り過ぎず、超基本的な単語なら、心理系院で出る全領域分書けるくらいの実力をつけるべきだと痛感した。

某院春入試で受けた衝撃

春入試でとある国立院の試験に望み、マジでビックリした事が二つある。一つは研究計画立案の問題が出た事と、もう一つは用語説明で全く心理学に関係の無い単語が出たことだ。

心理統計/研究法については別の記事で書こうと思うのであまり触れないでおくが、計画立案の問題は試験時間中最も解答に悩んだ。

用語説明に関しては、心理学に関係ない単語が出てきた事が衝撃的だった。社会学? の単語になるのだろうか、、、字面から伺える雰囲気? からで回答するしかなかったが、後で調べたら奇跡的に意味が合っていた。

結局どれだけ勉強しても試験本番では分からない単語が出てしまうものであり、そう考えると、基本的な問題を落とさない事が心理系院試においてはベターな戦い方なのかなと個人的には思った。

あとその第一志望の院の用語説明で、私は5問中2問書けなかったが、何とか合格を頂けたので、試験中知らない単語が出てきて絶望しても、諦めないで欲しい

まとめ

よくわかるシリーズは本当によくわかるのでお勧めである。あとは読みっぱなし、ノートにまとめっぱなしではなく、何度も復習させる事が一番大事だ。5,6月の時、私はエリクソン•ピアジェも知らなかったのだが、翌年2月で、何とか2校に合格を頂けるまでに漕ぎ着けた。

絶望するような事があっても諦めずに、自分にとって最善とは何かを常に考えながら頑張っていただきたい。