私が仕事の9割をやめて、「自分で決めてやってみる」がコンセプトの10代向け教育事業を立ち上げたワケ
我が家の子どもたちは、12歳と9歳に育ちました。もしあなたが親で、同じような年代の子どもがいるなら、しんどいかもしれないのですが、ちょっと想像してみてほしいんです。
親である自分(たち)が急にいなくなったとして、子どもたちは、自分の足で立って、しっかり生きていけるだろうか?
毎日は目まぐるしく、ときに退屈で、あっという間に流れ去っていきます。が、事件、事故、大地震……実はいつ終わりを告げるかもしれない、危ういバランスの上に成り立っていると自覚する瞬間が私にはあります。
新型コロナウイルス禍もそうですし、東日本大震災や阪神大震災のような大きな天災もしばしば現実に起きています。
日々を生きるのは大変ですが、目の前のことに囚われすぎず、"本当に大切なこと" に目を向けてみると、私はまず誰よりも子どもたちのために、ほとんどすべてをなげうってでも、「asobi基地ユニバーシティ」という教育事業をやらなければいけないと思うのです。
明日、死ぬとしたら。子どもたちに「何を差し置いても身につけてほしいこと」が浮かび上がる
私も、もし自分が事故に巻き込まれるなりなんなりして、明日から子どもたちを見守れないと仮定して(残された子どもたちや、妻の心情を想像すると、締め付けられるような気持ちになりますが)じっくりと考えてみました。
12歳の娘は、すでに、世の中の様々なものに興味を向け、自分で世界を広げていく力が備わっています。
地頭がよく、自分でなんでもできてしまうし、自立心もあり、自分の居場所を、自分で見つけることができると思います。不安はほとんどありません。
ただ親から見ると、人が良すぎるところが、(もちろん長所なのですが、ある側面では)ウィークポイントになるかもしれないと感じます。
彼女にはこのまま、自分で計画して行動する、さまざまな経験を積んでほしいということが一つ。そして社会の表も裏も知り、清濁併せ呑むような懐の深さを身に付けてもらえたらなと、願ってやみません。
それと、自分らしく思うように生きるのが性に合っているでしょうから、お金の流れを知り、価値を提供する代わりに報酬を得るやり方を身につけることで、人生の自由度が高まるはずです。
9歳の息子は、この年頃の男子らしく、ちょっと抜けているところもありますが、ただこれは年齢なりではあると思うので、時間が解決してくれるでしょう。
できないからと言って、自己肯定感を下げるようなダメ出しするんじゃなく、認知をうながす声掛けをしてくれる、あたたかな人たちに囲まれて成長していってほしいです。
身体能力が高く、責任感が強く、自分でこれと決めたモノ/コトには頑固なまでにこだわります。好きなものに熱中する力も、やり尽くして次のステージに移る決断力もあります。このまま健全に成長して行ってくれたら、強固な「じぶん」を持った大人になってくれるはずです。
私が彼に願うのは、喧嘩や、複雑な人間関係など、たくさんのトラブルを経験してほしいということです。価値観の異なる多様な他人の存在を知り、様々な考え方を知り、揉まれることで、強固なだけではない、しなやかな強さを身に付けてくれれば、言うことはありません。
学力よりも重要なはずの「身につけてほしいこと」を学ぶ場が見つからない???
「明日、自分が死ぬとしたら、子どもたちは……」こんなふうに考えて興味深いのは、テストで100点を取ってほしいとか、オール5の成績をとってほしいとか、学力についての心配は微塵も出てこない事実です。
みなさんはどうでしょうか?
もちろん、学力はあるにこしたことはないでしょう。けれど、「何を差し置いても身につけてほしいこと」に該当する親は、それほど多くはないのではないかと想像します。
一昔前ならいざしらず、いま現代に生きる私たちは、「学歴さえあれば幸せに生きていける」と短絡的には考えてはいないからです。
さて、次にやってみていただきたいのは、将来に必要なものを、いったいどこで身につけるのか、リストアップしてみることです。
学力は、学校や学習塾で伸ばせるでしょう。
では、その他はどうでしょうか。私の場合は、自分で計画して行動してみることや、社会を広く見て回ること、お金、ありのままでいることを認めてくれる場、多様な人間関係あたりになるでしょうか。
他には、超一流の仕事に触れること、熱中できるものを見つけること、さまざまな価値観を知ること、などなど。
そもそもの話、私は12歳の娘に関しては、不安がほとんどないのですが、最大の理由は、世の中の様々なものに興味を向ける力が備わっていると実感するからです。
私たちは、学校を卒業して、大人になってからも、ずっと学び続ける必要があります。常に新しい状況に直面し、適応を迫られ、答のない決断を繰り返さなければならない。
だからこそ、新しいことを学ぶのを苦にせず、これはおもしろいなとどんどん深堀りしていけるかどうかが、なによりも大切な能力になってくるはず。
12歳の娘は、どうしていいかわからない場面に遭遇しても、自分で答を見つけられる――そう確信できるからこそ、親として心の底から安心できるんです。
そしてこれらを、どこで学び、どこで身につければいいのでしょうか。
まず、塾ではない。たぶん、習い事の大半も役に立たないでしょう。スイミングスクールに通っても、大人になってうまく生きられるわけではありません。では学校……???なにかしっくりきません。
私たちの多くは、重要ではあるけれど、最優先事項ではないはずの「学力」を伸ばすために、せっせと学習塾に通い、あるいは習い事に通い、大切な時間のほとんどを使ってしまっています。
親子共ともども納得ずくであれば、もちろん問題ないのですが、「何を差し置いても身につけてほしいこと」を伸ばしたいとは思いつつも、具体的な手段を見つけられず、なんとなく塾に行かせてしまっている、という方も少なからずいそうです。
私は、東日本大震災をきっかけに、時間を自由に使うためにフリーランスになっているので、わりと労力をかけて、「これだ」と思う、(学校や塾では学べない)生きるために必要なことを、子どもたちに経験させるように努めてきました。
それでも、一つの家庭、一人の親にできることには、明確に限界があります。
会社員として勤めている家庭なら、比較にならないくらい、できることには限りがあるでしょう。
だからこそ、「asobi基地ユニバーシティ」という教育事業に価値があるし、ここを課題とするプレイヤーはそれほど多くない実感があり、私が自分でやるべきだと思うのです。
教育の新スタンダードはこれになる、という確信。コロナ一斉休校があったらからこその気づき
2020年前半、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国の学校が一斉休校になりました。
そのとき、我が家では、学校から出された課題なんかガン無視して、「なんでもいいから、興味のあることや、おもしろそうなことをやりなよ」と子どもたちに自分で時間割を作らせました。
すると、毎日毎日、目に見えていろいろなことができるようになっていくし、知らなかった知識(ときには親すら「へぇ〜そうなんだ」と感嘆するような)を吸収していく。
オルタナティブ教育の一つ、サドベリースクールでは、「人は、本当にやりたい、必要だと感じたときに一番よく学ぶ」という考え方をします。
考えてもみてください、小学校から帰ってきた子どもに、今日の授業どうだった?と聞いて、手応えのある答が返ってきたためしがあるでしょうか。
我が家では、つまらなかった、退屈だった、フツーだった、という感想しか返ってこないケースがほとんどでした。
本人の意欲の有り無しで、こんなにも違うのかと、本当にびっくりしました。
そしてさらに驚くべきは、こうして好きなことに夢中になったり、没頭していくうちに、次第に興味の範囲が、学校の教科にも波及していくんです。
12歳の娘の例だと、漢字、歴史あたりが顕著です。算数もずっと「嫌い」と明言していたものが、自分から探究学舎の「算数図形編(テーマは三角比)」を受講したいと言い出すまでになりました。
(ちなみに、この自宅学習がきっかけで、現在は、基本的に登校はしつつも、休みを積極的にとって学校外の学びを模索する "ハイブリッドスクーリング" に落ち着いており、欠席日数が多いのですが、テストの点はまんべんなく普通に取ってきます。補講などは一切していません)
"ニワトリが先か、卵が先か" ならぬ "知識が先か、興味が先か"。
これはもう明確に、興味を持たせるほうが先であるわけです。なぜなら、知識が先では、学習効率が極めて悪いから。
「子どもが自分で決めて、自由にやる」というと、放任しましょうと言っているように聞こえるかもしれません。が、逆です。"やらせる" よりも世界が広がるし、知識を吸収するし、学力も結果として伸びるから、好奇心を全力で育てましょうということなんです。
そして、きっかけとなる入り口は、遊びでもゲームでもいいんです。大切なのは、夢中になること、没頭すること=満ち足りた体験だと知ること。
なんの意味があるの、などと言っては絶対にダメです。行為そのものに意味がなくても、没頭する体験には、プライスレスの価値があります。
「やってみたい」「気になる」から出発して没頭することを、当たり前の自分の武器にする。世の中の様々なものに興味を向ける力を育て、世の中にある魅力的なものを見つけ、自分の足で社会へ飛び立っていく。
私は、この方向性の教育が、これからの新スタンダードになると確信しています。
実際、学習指導要領にもアクティブ・ラーニングが盛り込まれましたし、私立や中高一貫校を中心に探究学習は当然の教科になり、受験ですら、ただ答や解き方を知っていれば回答できるタイプの問題の重要度は、年々低下しているように見えます。
「自分で決めてやってみる」こそが、小学校高学年〜中学生の10代前半に何よりも必要なもの
私と有志たちが、2020年の半年以上をかけて準備をし、2021年にリリースした教育事業は「asobi基地ユニバーシティ」と言います。
一般的な学習塾に通えば、私立中学、高校に合格できるかもしれません。一方で、「asobi基地ユニバーシティ」が提供する価値は、
大人があれこれ言わなくても、自分からおもしろそうなものを見つけ、驚くようなスピードで世界を広げ、いつしか自分らしく社会へ羽ばたいていく……
そんなふうに子どもが成長する環境を用意し、きっかけを提供することです。
対象は、小学校高学年〜中学生の10代前半の子どもたちです。彼らは、思春期真っ只中で、大人になりかける微妙なお年頃です。
自立心が育ち、親をはじめ大人に口出しされるのを嫌がるようになり、同世代の子ども同士のコミュニティを求める傾向があります。
国語や算数ではなく、「何を差し置いても身につけてほしいこと」を学んでほしいわけですが、大人の都合ではなく、他ならぬ子どもたちに求められるプログラムに昇華するにはどうすればいいのか、考えに考えました。
asobi基地ユニバーシティのすべてのプログラムに共通する最大の特長は、「自分で決めてやってみる」。思春期真っ只中の子どもたちにとって居心地がよく、お年頃だからこその自立心を活かして、学びにつなげるには、なくてはならないものです。
そして、きちんとできるかどうかではなく、自分で考えて、自分の責任でやってみて、失敗したり、成功したりする中で、様々な「実感」や「気づき」を得るということ。
やりたい事を自分で計画し、行動する訓練になるのはもちろん、没頭すること=満ち足りた体験だと知り、世界を広げていく力を身につけるために、これ以上のものはないはずです。
アウトドア、お金や仕事、メディア、ITにまつわるプログラム
具体的に、どのようなプログラムを開発しているのか。
まず、順次リリースできているのが、アウトドアがテーマの「アドベンチャー学部」です。
これまで、全国のアウトドアフィールドに年間100日近く出る生活を続け、親子引率のべ1,000名超の経験もある私が、小学校高学年〜中学生のお年頃の子どもたちにとって、本当に価値があり、夢中になれる体験とは何か?を突き詰めて考えた、渾身の企画です。
一つは、世界自然遺産や、それに匹敵する、国内最高峰の自然がある非日常フィールドでの、1週間単位の留学や、2泊3日の旅・キャンプ。
もう一つは、関東近郊の近場フィールドでの、「自分で決めてやってみる」によりフォーカスしたプログラム。
さらに、お金やビジネス、働くことそのものに興味を持ってもらう目的の「働く学部」。これはトライアルを重ねている段階です。
仕事とは、嫌なことを我慢するかわりにお金をもらうことではなく、価値を提供するかわりに対価を得ること。そして、ただ価値を出すだけではなく、それを必要としている人のところに、どうやって届け、どうやって買ってもらうのか?
これを社会に出る前から知っていれば、20代前半を有効に使えますし、なんなら10代のうちから活躍できる可能性すらあります。
入り口として、誰もが気軽にスモールビジネスにチャレンジできる疑似マーケットプログラムをテスト中。
最初は「お金をもうけたい」「●●がやりたい」という、シンプルな理由からスタート。うまくいったり、いかなかったり、様々な実感や、気づき、発見の過程の中で、やりたい事を自分で計画し、実行できるようになる子も出てくるでしょう。
(ですがこれは、どうしても人を集める必要があり、新型コロナウイルスとのにらめっこが続いています)
また、大人がどのようにお金を稼いでいるのかを知ったり、プロの仕事に触れたりするプログラムも展開していきます。2021年春には、プロのWebデザイナーとロゴ&HP制作をするオンライン企画を実施しました。
そして3つ目が、プログラム開発を進めている、メディア学部です。「自分だけのメディア(Webページ? YouTube? SNS?)を作る!」を入り口とします。
一つは、インターネットの世界を覗きつつ、Webを身近なものに感じてもらう体験。そして仮想空間と言えども、眼の前の社会と同じルールやマナーを守らなければならないことや、匿名を使ってもバレてしまうこと、ネット特有のリスクなど、楽しんでいるうちに、“いろは” が身につくような仕掛けを用意するつもりです。
そしてなにより大切なのは、インターネットをどう "活用" すればいいのか、という視点。メディアも、自分の都合で作っただけでは誰も見てくれません。やりたいことを実現する武器にするためには、どうしたらいいのか?を伝えたいと思っています。
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