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「真夜中の自動販売機」

真夜中に目が覚めて
急にどうしても
酸っぱいジュースが飲みたくなって
そっと玄関を開けて外へ出る
ひんやりした風が
わたしの頬を撫でていく

コンビニに行くつもりだったのに
何だか、その明るさが眩しくて
入りそびれてしまう
少し離れた場所に自動販売機
このくらいの明かりなら怖くないね
真夜中の自動販売機はどこか優しい

酸っぱいジュースを選んでボタンを押す
ゴトンという音がして
500mlのペットボトルが落ちてくる
誰もいないのをいいことに
その場でキャップを開けて
ひと口ゴクリ、ふう

またキャップを閉めてから
ペットボトルを両手で抱えて
お月様を見ながら
夜道をゆっくりと帰る
ささやかなる真夜中の冒険は
こうして密やかに終わる


台所の椅子に座って
買ってきた酸っぱいジュースを
コップに入れてコクンコクン
小さく息を吐いて豆電球の下

これで眠れるだろうか
それとも本を読もうかと
迷っている


【詩集】「黄昏月幻想」つきの より

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