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インパクト投資のもやもやを考える(2):始まりは、ABC

前回、インパクト投資がインパクト投資であるためには、「社会的・環境的インパクトを生むという意図」が必要、ということを確認しました。今回は、この「意図」について考えてみたいと思います。

インパクトに対する意図は、3つに分けられる

企業や投資家がインパクト(事業活動が、社会や環境に与える影響)を気にする理由には、いろいろなものが考えられます。あるところは、規制に引っ掛からないため、事業リスクを減らすため、かもしれません。またあるところは、ブランド力を高めたい、イメージアップを図りたい。またあるところは、それが自分たちが仕事をする意味だから、存在意義だから、と考えるかもしれません。

このようにインパクトに関する「意図」は様々だけれど、それらは、A、B、C の3つに分けられる、とIMP(Impact Management Project)は言っています。

IMPとは、インパクトをどう測り、経営や投資にどう統合していくか、について国際的な基準づくりを進めている国際イニシアティブです。国連開発計画(UNDP)、国際金融公社(IFC)、経済協力開発機構(OECD)、国連責任投資原則(PRI)を始め、2,000もの組織が参画する、いわば総本山のようなところ。ちなみに当社ケイスリーは、日本初のIMP加盟組織で、戦略パートナーとなっています。

インパクトの'ABC'

さて、ABC とは、この3つです。日本語だと、うまいこと「あいう」や「いろは」にならず残念です。

コメント 2020-03-13 005903

Act to avoid harm (悪影響を避ける)
Benefit stakeholders(利害関係者を利する)
Contribute to solutions(解決に貢献する)

さて、一般的に「インパクト投資」というと、まずが連想されるかもしれません。貧困問題を解決するためのマイクロファイナンスや、環境問題を解決するためのグリーンボンド、子供たちの命を救うためのワクチン債、ソーシャルベンチャー(社会的起業)への創業期の投資など。それらはインパクト投資のもっともコアな部分に位置づけられていますが、それだけに限られていません。

反対側の には、武器・ギャンブルなど反社会的(もしくは反倫理的)なものには投資しないという社会的責任投資や、リスク低減の観点でのESG投資(たとえば、ガバナンスがしっかりしていない、環境や人権に配慮していないことはビジネスリスクが高いから投資しない)など、いわゆるネガティブ・スクリーニングと言われるものもインパクト投資に含まれています。

その間のは、少し分かりづらいですが、顧客(利用者や消費者)、従業員、取引相手、地域住民などの事業関係者、はたまた環境にとって、プラスの影響(価値)を生む、というもの。Cが「この課題を解決(マイナスの状態を、ゼロやプラスの状態に)するぞ!」だとすると、Bは「いまより良くしていこう!」という感じでしょうか。

企業の目線でいえば、消費者にとってより安全・安心な商品をつくること、ゴミの少ない商品に変えていくこと、従業員の労働環境を良くすること、能力向上を支援すること、原料調達を人権や環境に配慮したものに変えていくこと・・。いま多くの企業が取組んでいることは、ここに属するのではないかと思います。

投資家の目線でいえば、そういう企業は持続的に事業を継続・拡大できる可能性が高いので、中長期的にはより良い投資パフォーマンスが期待できる、という観点でのESG投資やサステナブル投資になります。中長期の視点が求められる年金運用などとの親和性が高いかもしれません。

「インパクト投資」と言ったとき、それは ABC のどれなのか?そこから始めることで、もやもやした実体のかたちが少し見えてきそうです。かと言って、ABCもお互いの色がにじんで重なり合い、やはり曖昧な部分が残るのですが。ちなみに、IMPでこの区別をしているのは、それによって見るべき(測るべき)インパクトが違ってくるからです。

次回は、そのABCで異なる「インパクト」の違いを見ながら、ABCのように簡単ではないインパクト投資について引き続き考えていきたいと思います。


※ただいまケイスリーでは、こうしたことを一緒に考え、形にしていくメンバーを募集しています→ 詳細はこちら

(文 今尾江美子)

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