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新型コロナウイルス感染拡大から、SDGsを考える ~ロジックモデルを使って

桜咲くこの週末、関東の1都4県や大阪などで外出自粛が要請されました。関東では、人々の足を止めるかのように季節外れの雪が降り積もりました。

前回の記事で書いた、「いま、SDGsが自分ごと化している」という状態は、今回の外出自粛要請によって、さらに強まっているように思います。一人一人の行動が、どうSDGsにつながっているのか、改めてそれをロジックモデルを使って考えてみたいと思います。

ロジックモデルとは

ロジックモデルとは、社会的インパクト評価/マネジメントに用いるフレームワークで、「活動を通じて、最終的にめざす姿の実現に至るまでの道筋を体系的に図示化したもの」です。

通常だと、「活動」は、組織や事業の活動であることが多いのですが、今回は、一人一人の行動を「活動」とします。そして、最終的にめざす姿を、「SDGsのゴール3(ターゲット3.3)の達成」とおきます。

Target 3.3:2030年までに、エイズ、結核、マラリア及び顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症及びその他の感染症に対処する

ロジックモデルからわかること:一人一人が、SDGsにつながっている

そして作ったロジックモデルが下です。これは、一般的な情報などを基にした(またロジックモデルが何かをお伝えするための)簡易的なものです。そのため、公衆衛生など専門的視点で見ると、まだまだ不十分だと思います。また、この周りには、人々の生活の問題、仕事の問題、心の問題などが深刻化していて、ここだけ見ていればよい、という状況ではなくなっていることも事実です。ただ今回は、ロジックモデルというフレームワークが、SDGs達成にどう役立つのかに目を向けたいと思います。

コメント 2020-03-29 182358

ロジックモデルのポイントは、「活動」の先の「アウトカム」を考えることにあります。活動は、自分の意志で達成できること。その目的は、その先の「アウトカム」につなげることです。アウトカムは、活動がもたらす(社会的な)効果や変化。それが連鎖して、ありたい未来へと繋がっていきます。

今回のケースは直感的にも連想しやすく、ロジックモデルをつくるまでもないかもしれませんが、おそらくここで見える一番重要なことは、「一人一人の行動が、世界の課題解決につながっている」ことではないかと思います。「一人一人」というのは文字通りで、すべての人の行動が影響を与えます。

今回(特に日本において)特異なこととして、「非感染者」と「感染者(症状なし)」が判別困難な点が挙げられます。検査を強化して判別を促す選択もありますが、限られた医療リソースをそこに投入することで、「医療崩壊しない」という重要なアウトカムに(負の)影響を与える可能性があります。そこで今は、誰もが「感染者(症状なし)」の可能性があるという前提で行動が求められています。ロジックモデルには、このように(今回は簡易的ですが)構造を関係者間で共有し、合意を助けるという機能もあります。

いずれにしても、ロジックモデルをつくる意味は、「いまの活動」と「未来のありたい姿」がどう繋がっているのか、その構造を捉えることにあります。これは感染症に限らず、廃棄プラスチック(海洋汚染)、クリーンエネルギー、温暖化、食料廃棄などSDGsが掲げる様々な世界の課題にも言えます。私たち一人一人の行動が、世界の未来と繋がっている。ロジックモデルから、一人一人が想像力を広げ、行動を変えることができれば、持続可能な世界にまた一歩、近づけるのではないかと思います。

ロジックモデルの使い方

通常、ロジックモデルを作ったあとは、次の2つのアクションがとられます。1→2と進む場合もあれば、2→1と進む場合もあります。その繰り返しで仮説・検証が行われます。

1は、ロジックモデルの精緻化。専門家や当事者(関係者)などを交えて行います。最初から一緒につくれると理想的です。

2は、活動やアウトカムの測定。指標を立てて、データを収集・分析します。これにより、実際に成果が出ているかを見ながら、課題を発見・改善し、さらなる成果をめざします。(同時に、ロジックモデル自体の改善・精緻化も行います。)

今回のケースで考えると、1では、この感染症に関するロジックを精緻化することに加え、ここから派生して深刻化する経済的な影響や、その他の社会課題ともつなげて見ていく必要があるかもしれません。

2では、(ロジックモデルに緑色で示した)新規感染者数や死者数といったデータが既に収集・開示されています(東京の新規感染者数は日々増加)。今後、その手前(活動や、そこからつながるアウトカム)を見える化するデータを収集・分析・開示によって、実際にどれだけ活動が起こっているのか、それによる効果が出ているのかを検証していくことが考えられます。

ロジックモデルには、(絶対的な)正解や完成はありません。誰が、何のために使うのか。それによって変わる答えを、みなさまと一緒に探していかれればと思っています。

(文 今尾江美子)



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