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中国向けEMS全面停止の衝撃、代替サービスはどこか?

日本郵便は2月下旬、内部通知によって、中国内配達不可能地域を指定した。中国行の定期航空便が9割減となる中、湖北省や広東省、上海などの省市は、事実上引き受け停止としたのである。大量の待機荷物で空港の倉庫はパンク、いつ発送される不明とはいえ、まだ望みはあった。しかし、それも今回3月13日の全面停止により完全に潰えた。代購業者はもとより、個人にも大きなショックを与えている。

■日米大手の対応

日本郵便のEMSやSAL便(航空便より遅く、安い)に代わる手段はあるのだろうか。世界大手の対応から見てみよう。

目についたのはDHLだ。公式サイトに「現状通常通り集荷・配達を行っており、中国をはじめアジア、欧州や北米へもサービスを継続しています。」と表記している。現金、クレカ払いなら、アカウントなし個人で1回限りも可、と積極アピールしている。

UPSは、中国の通関手続きにおける2段階申告について、という1月のお知らせを載せているくらいだ。混乱している様子も、ここをチャンスと考えている様子もない。

FedExは、現在カスタマーセンターが混雑していること、3月16日付け文書で、武漢と湖北省一部都市では、現地配達が中止されていること、さらに2月末の「中国向け国際貨物の荷受人さま連絡先についてのお願い」という通知を載せている。

次に日系である。日本通運の国際航空輸送サイトは、メンバーオンリーの部分が多く、すぐにEMSの代わりに使うにはハードルが高そうだ。中国最新情報の発信はない。

ヤマト運輸「国際宅急便」では、中国は、依頼主、届け先、いずれか一方が個人の場合、書類以外の荷物は取り扱えない国のリストに入っている。

佐川急便「飛脚国際宅配便」では、個人は顧客コード取得して、届け先を法人にする必要がある。中国情報の発信はない。

■順豊速運(SF)

それでは中国系はどうだろうか。中国快逓(宅配便)トップ企業、順豊速運は、2011年に日本法人を設立し、現在、札幌1店、東京4店、名古屋1店、大阪3店、沖縄1店の10店舗を展開している。

3月2日付け通知を見ると、中国から他の地域は、通常に加え追加所要日数1~5日、日本から中国は、追加4日~10日追加とある。これでも2月のEMSが3週間以上かかり、着いただけでラッキーという状態だったのに比べ、非常に速い。これは本当だろうか。複合アプリ「小紅書」から、日本在住中国人による今週の批評を見てみよう。

・電話で問い合わせたところ、手続きあまりに煩雑、オペレーターに専門知識なく不親切。
・250元(3800円)の荷物で関税がかかってしまった。
・ホームページの情報と全く違う。
・順豊ジャパンのレベルは高くない。上がるまで待つしかないね。

などあまり芳しくない。共通項は、料金高い、手続き煩雑、であり、所要日数については見かけなかった。

■まとめ

米国大手と順豊は、自社の貨物機を保有している。大手ならではアドバンテージは確かにあるだろう。

どうやらDHLやFedEx、順豊ジャパンを利用して、中国へ荷物を発送することは可能のようだ。しかし、料金の高さ、正規インボイスの作成、混乱による問い合わせ機能の喪失など、三重苦に耐える覚悟がいる。とても商売ベースには乗らないだろう。EMSの簡便手続きと料金体系、関税スルーの恩恵は、今となっては何物にも代えがたい。したがってEMSの代替は、物理的にはあるものの、商売ベースとしてはない、というべきだろう。


コスパ・テクノロジーズCEO / BtoB企業のブランディングと海外向け施策が得意なWeb制作会社 / SNS総フォロワー5万 / HP→ https://cospa-tech.com/