毎日ナナしゃん ~After Story~ (75)
※この記事は重大なネタバレを含みません
「今日は早めに寝るといい」
ジンに促され、私は用意されたベッドで眠りについた。
山ほど部屋があり、私には個室が宛がわれた。
お世辞にも綺麗な部屋とは言い難かったが、ベッドが置かれてあるだけでも有り難かった。代えの服もないので、私はそのまま布団に潜り込んだ。
瞼を閉じる。
少しの時間でも眠れるよう、訓練されてきた。
訓練の空き時間に眠ることを覚えた私にとって、この場所は極楽と相違ない。
夢を見た。
ある女の子の夢だ。
ふわふわのくせっ毛で、小柄な女の子。
名前は、ミチルと言った。
彼女は、どういうわけか私に良くしてくれる。
無償の愛などというものがこの世界にあるとすれば、彼女はきっとそれを持っているに違いない。
彼女は、私の正体を知ったとしても、受け入れてくれるだろうか。
あの時、殺人を打ち明けた私に向けられた表情の意味が、私にはまだ理解できずにいた。
同情。鬱憤。哀憐。悲哀。それとも――
「ナナしゃんは、いい人です。私は知っています」
ミチルの手が、ベッドで眠る私を撫でた。
それは確かに、夢のような現実だった。
あるいは、そこにいるのはミチルに化けたジンかもしれない。
だが、もはやどちらでもよかった。
今すぐあなたの手を取りたい。
だけど、私の身体は石のように重く、少しも動かない。
これはきっと罰だ。
小さくなったミチルに甘え、彼女を危険に晒した罰。
彼女は、きっと私のことを許すだろう。
十人殺しても、百人殺しても、千人殺しても――夢で見たあなたは、私のことを許してしまうのだ。
それだけが、たった一つ。
大好きなあなたの、大嫌いなところだった。
つづく
ちゃんとしたキーボードが欲しいのですがコロナで収入が吹っ飛びました