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【カイゼン道場】作業を均して能力を改善 「山崩し」

1. はじめに
「山崩し」とは、生産ラインにおいて作業量を平準化する慣用句である。
「山崩し」がなされていない生産ラインでは、忙しい作業者と手持ち無沙汰の作業者が存在する。この生産ラインの生産性は、忙しい作業者の生産性に依存することになる。

生産性を改善するには、下の図1のような「山崩し」と呼ばれる作業量の平準化が有効である。
これにより作業者全員が同程度の作業量をこなすようになり、手持ち無沙汰がなくなる。これがサイクルタイムの短縮や作業者の削減に繋がるのである。このように生産ラインでは「山崩し」が不可欠である。

図1.山崩しの効果(イメージ)

2. 山崩しの前に
「山崩し」を始める前に必要なことは何だろうか。それは作業の評価である。各作業者、各作業の作業時間を測定し、定量化するである。

しかし、定量化は簡単ではない。調査すると分かるが、同じ作業でも作業者によって作業時間がばらつくのである。ある作業者はすぐに終わるのに、別の作業者は時間がかかるということが往々にして起こる(下の図2参照)。

このような、ばらつきは何に起因するのか。それは無駄作業をしているのである。このばらつきを抑えるためには、価値を産まない作業を削ぎ落とし、標準作業手順を定める。そして反射的に作業ができるまで習熟が必要である。

つまり「山崩し」の前に、標準作業手順を決め、作業のばらつきを抑えることが不可欠である。こうして初めて、「山崩し」を開始できるのである。

図2.作業のばらつき要因

3. 「山崩し」作業の手順
「山崩し」は管理者や技術者よりも実際のオペレーター主導で行うべきだ。作業時間の可視化には棒グラフが最適である。
ただし表計算ツールはあまり使わずに、誰でもその場で棒グラフを組み替えられるマグネットシートの利用を強く勧める。
また作業内容に応じた色分けも良いだろう。例えば、赤は高負荷作業とし、青系は軽負荷作業とする。負荷の高い作業ばかりだと、疲労により終業間際は標準時間に届かないことがある。それが一目でわかる。

マグネットシート

4. 「山崩し」の効果が出すには
「山崩し」の効果を最大化するには、より多くの作業人員が関わるラインが望ましい。なぜなら、作業の組み換えバリエーションが増え、効果を出し易いからである。

例えば、作業者3名の生産ラインでは、作業の組み換えの選択肢は3人の間でしかないが、作業者5名の生産ラインでは5人の間で組み換えが可能になり、より効果的な「山崩し」を行える。(図3を参照)

さらに生産ライン周辺作業も加えることで、想定外の効果を得られることが期待できる。搬送作業者や検査作業者、間接業務なども含めて検討すると良い。

図3.作業組み換えの選択肢

5. 「山崩し」を使った増産・減産時の作業者割付
「山崩し」の応用として、生産ライン人員に応じた作業組付パターン作成がある。生産ラインでの増産・減産時に応じた人員・作業体制を予め構築することのである。(下の図4)
手待ち作業者が発生しないパターンを予め作成することで、増産時には即座に人員を投入し、逆に減産時には余剰人員を削減しても、生産ライン全体を効率的に稼働させられる。

このためには、ライン人数ごとのパターンを作成する他、標準作業手順の整備や多能工育成を進めることが必要不可欠である。

図4.増産・減産での人員体制整備

6. 「山崩し」を使った改善対象の選定
タクトタイム短縮、ライン作業者削減、それには高額な設備、ロボットのような自動機導入しがちである。

しかし、作業分析をし、「山崩し」を行った状態であれば、細かな改善や治工具等の活用だけで、省人化できるつながる場合もある。(下の図5)

図5.簡単な改善による省人化

7. まとめ
作業分析をし、標準作業手順化できれば、「山崩し」は、業種を問わず、効果を発揮する。投資を要せずに、現場主体で活動できるので、資金力がない企業でこそ積極的に行うべきである。

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