教育者の前提
65%の子どもたち
子どもたちの夢見る職業について述べた有名な言葉がある。
世界で最も優秀な研究者たちが集結するとされる「ダボス会議」で2011年に論じられたとされるこの見解だが、上記URLでは氏の肉声で聞くことができる。
65%の根拠資料については、その在処をオーストラリアのWebサイトとされるが、政権交代によってサイトが閉鎖され今は見ることができない。
しかし今では世界中で信憑性の高い論であると認知され、日本でも文部科学省の資料に記載されている。
参考:産業競争力会議 雇用・人材・教育WG(第4回)
インターネットデバイスによる進化
人類が繁栄を続けているのは、環境に適用する能力が高いためだ。
1982年に発売されたコンピュータ「PC-9800シリーズ」は、一般消費者の手に広く渡り、パソコンという情報交換手段の革命による生活の変化を予感させた。
その予感は現実のものとなり、25年後、2007年年に発売されたスマートフォン「iPhone」によって、手のひらサイズの小型コンピュータは世界中に拡散した。
結果、人類はインターネットとコンピュータによってネットワークを形成する新しい種族に進化を遂げた。
昭和時代の頃には、検閲された限られた情報をテレビが伝えるか、人と人の会話、電話、手紙による情報交換手段が日常だった。比較して現在では、個人所有のネットワークデバイスによって、得られる情報の量と自由度、そして効率は格段に上昇した。
スマートフォン発売当初の2007年から2010年の三年間で、世界中で生成、取得、複製、消費されるデータの総量の増加は、3.5倍だった。その後、2010年から2020年の10年間では、データ総量が60倍に増えている。
新型コロナウイルスによる進化の加速
そして、2020年に発生した新型コロナウイルス感染症によって、世界は更にこの進化を加速させた。
「外出せずに生活を維持する」。この条件を可能にしたのは、個人所有のインターネットデバイスの流通に他ならない。
世界で見た新型コロナウイルスの感染者数は、2021/11/16本日までで、2.53億人。死者数は500万人である。
テレビと手紙の時代に流行したと仮定した場合に、死者数はゾッとするほど増えたであろうことは想像に難くない。
しばしば比較される、1918年から1920年まで世界中で流行したスペイン風邪は、感染者数は5億人。死者数は4000万人以上とされる。
当時の世界人口18億人に対して、現在は78億人であり、同一病原体ではないから単純比較はできないものの、感染率はかなり低く抑えられた結果であることがわかる。
冒頭で述べたように、人類が自身の発明によって環境に適用し続けているその範囲は、感染症に対しても例外ではない。
進化と教育
仕事や生活において、「教育」は全ての人にとって密接なテーマだ。
職場で仕事を教えること、子どもたちに勉強や社会生活を教えることは多くの人が経験する。
しかし、ここまで述べた前提に従って「教える」という行為を振り返ると、教育行動に反映されていないことが多い。
人類はたった10年、20年で劇的な進化を遂げているのだ。
20歳の若者に、40歳の先輩が物事を教えるということは、20年分進化の恩恵を受けて育った個人にものを教えるということになる。
この20年間で人類に起きた価値観の変化を前提にするならば、自身が受けた教育と同じ教え方では教育効率が著しく劣ることになりかねない。
悲しいことに、何かしら決めつけた年配社員から若手への厳しい指摘を目にすることがある。同じように、小学生の子供に価値観を固定した上でのしつけをする親御さんも見かける。
根性論で仕事を指示する役職の皆様。
コミュニケーションだけでなんとかやってきた中堅社員。
頭を下げて財を築いた経営者の方々。
塾に通って大学に行ったお父さんお母さん。
ゲームより本を読みなさいと言われて育ったお父さんお母さん。
怒られて叱られてやりたいことを我慢してきたお父さんお母さん。
果たして、皆さんのその教育方針は、この先の時代を生きる人たちに適した手法であるのか今一度自らに問いかけてみてほしい。
教育の場では上下関係であっても、人としては対等である。尚且つ、世代が違えば、より環境に適用している高度な人類だと見なすべきではないか。
65%の子どもたちは今存在しない職業につくとされる。
私たちが想像しなかった未来を、次の世代が創造していく。
その時に私たちは既にいないかもしれない。
少し肩の荷を降ろして、新しい人類に判断を託すのも悪くないのではなかろうか。
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