自分が転籍拒否して保籍元の企業に戻った意味
Ry.Y.さんが言ってくれた。「売却/譲渡した事業のその後って見たりすることってあるんですか?」
『基本的には見ることはないです』と回答者は答えた。
私は以前働いていた職場が事業譲渡された。
歴史ある大手メーカーの田舎工場で働いていたが見切りをつけられ、新興のメーカーに売り飛ばされたわけだ。
事業売却自体が問題なのではない。問題は売却後の社員の処遇が大幅に悪化したことだ。休日出勤や長時間労働を強いられるようになる一方で、給与は大幅ダウン。そして管理職に至っては、成果が出せなければたった1年ほどで降格処分だ。今考えても恐ろしい。すぐに多くの人が辞めていった。
事業が売却されても、強制的に全社員が転籍させられるわけじゃない。移行期間がある。そのため、私をはじめ約半数の社員は、元々いた老舗メーカーに籍を置いたまま、出向という形で働いていた。
でもその状態がいつまでも続くわけじゃない。決断を迫られる日が来る。保籍元の企業に戻るのか、転籍するのか。
転籍先の労働条件だけを考えたら、迷わず保籍元企業への復帰を選ぶだろう。だが、頭を悩ませることがあるのだ。
1つは、保籍元企業からは「復帰してもいいが、勤務地は保証しない」と言われたこと。これは事実上の脅しだ。
噂レベルの話だが、事業譲渡に際しての契約で「保籍元企業は売却先企業が事業継続できるよう、人材の転籍について最大限努力する」という契約を結んでいたらしい。そして、あろうことか、私が働いていた工場の役員が、保籍元企業に対して、転籍せず復帰しようとする奴は辺鄙な田舎へ飛ばすよう要求していたとのこと。あくまで噂だが。
そして頭を悩ます2つ目は、転籍すれば高額な退職金が手に入ることだ。勤続10年の先輩が2500百万円提示されたと言っていた。
少し仕事に自信がある人は、ほとんどが一度転籍してから転職することを選んだが、私は保籍元に復帰した。
なぜか。
私のいたコーポレート部門は特別扱いをされ、秘密裏に復帰ポジションが与えられていた。だから、とんでもなく辺鄙な場所に飛ばされる心配はしていなかった。そして、勤続年数2年ぽっちだった私は、無茶苦茶になってしまったブラックな工場で働きながら、保籍元企業と同等以上の待遇で他社に採用してもらう自信がなかった。
だから復帰した。
でも、せっかく復帰したからには、この経験を最大限活かしていきたいと感じた。そんな一日だった。