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「正確なキックを身につけろ」って具体的にどれくらい?

ジュニアの間に「何mくらい正確にボールを蹴られるようになったらいいのか?」と、本気で考えたことはあるだろうか?

この質問をすると、答えは様々だ。
3m、5m、7m、10m、12m、20m…。
本当にいろんな数字が挙がる。
しかし、どれも根拠がない。

そもそも「正確なキックを必要とする状況」ってどんな状況なのか? ここが大事だ。この条件というか、定義というか、そのすり合わせができていないと、この質問の答えをイメージするのは難しい。

私は「状況・展開を変える」パスの距離だと認識している。

「状況・展開を変える」パスの距離とは、目の前の敵が首を横に振るくらいの距離。なぜなら、その敵が首を振った瞬間にパスを出した選手は視界から消え、チームが優位な状況を作るために「次のアクションを起こす」ことができるからだ。

そして、ここからが私の出番である。

個人的に自分の役割を「海外のサッカー情報を、地域の街クラブのため、コーチのために意訳する」通訳だととらえている。例えば、5レーンだとか、ポジショナルプレーだとか、最近はサッカーの体系化と構造化、さらに戦術化と言語化が発達してやたら難しい言葉が飛び交う。

これ自体はすばらしいことだが、地域の街クラブのコーチにとっては話が大きすぎる。「結局、私はどう使えばいいの? よくわからないからどうでもいいや」と拒否反応を示し、せっかくの素敵な情報から目を背ける人が大勢いる。だから、私はその情報を地域の街クラブが使えるようにわかりやすく咀嚼して伝えることが役目だと、このマガジンを始めた。

目的は、街クラブのコーチが選手に理由をもって指導ができること。それによって子どもたちがプレーの土台を身につけ、社会人になってもサッカーを生涯スポーツとして楽しめることだ。

少し前置きがすぎたが、話を「正確なキック」に戻す。

私の仮説では、「正確なキック」の距離を明確に数字で表すことができる。いまから説明してみるので、一度だけ読んでみてほしい。みなさんはジュニア年代で最後の目標に掲げる「全日本U-12サッカー選手権大会」のピッチサイズを正解に言えるだろうか? 

大会要項を確認すると、縦幅68m×横幅50m。

では、現代サッカーでは「縦幅をどういう風に区切るか」を知っているだろうか? よく自分たちのゴールを守るエリアを「ゾーン1」、自分たちが相手ゴールに攻めるエリアを「ゾーン3」、その中間のミドルエリアを「ゾーン2」と表現する。

ようするに、三分割して語られる。

ただ、私はもう一つ分割する必要があると考えている。それは各ゾーンをそれぞれさらに二分割することだ。ゾーン1はペナルティエリア内と外。ゾーン2は自陣と敵陣。ゾーン3もペナルティエリア内と外。それぞれに「そこにボールがある」と仮定すると、プレーする状況はまったく変わってしまうので、「状況が変わる」を前提にすると、縦幅は六分割になる。

縦幅68m÷6=11.3333…

では、現代サッカーでは「横幅をどういう風に区切るか」を知っているだろうか? 最近では、5レーンを活用して5つにわける傾向にある。ただ何も説明なく、そうしてしまうとツッコミたい人もいると思うので補足したい。

はじめは単純に両サイドとセンターと三分割にしようとも思った。しかし、いま話題の「ハーフスペース」は、確かに相手にとって嫌なスペースであることも一理ある。

何よりサッカーは、例えば攻撃と守備と明確にわけられるものではない。その間に移行する時間、"切り替えの時間"が存在する。攻撃から守備の切り替え、守備から攻撃の切り替え。その間の時間があり、「攻撃→攻撃から守備の切り替え→守備→守備から攻撃の切り替え→攻撃…」と、サイクルとして回り続けている。

そういう考えをもとに"立ち位置"で相手より優位に立つ(相手をコントロールする)には、やはり幅と深さはサッカーのプレーで大切な要素だ。そうすると、センターとサイドの間にある「ハーフスペース」は相手にとって嫌な立ち位置になるので覚えたほうが絶対にいい。その代わり、わけ方はスペインやドイツなどで異なるが、あくまで活用するのが地域の街クラブなので、単純に横幅を五分割にする。

横幅50m÷5=10

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メモ(写真)で申し訳ないが、私は「ジュニア年代のピッチが写真のようにわけられる」と仮説を立てている。そして、「状況・展開を変える」パスは最低でも一コマ前、一コマ隣、一コマ斜めのマスにボールを送らなければ「目の前の敵の顔は動かせない」と思っている。

つまり、最低10mは正確なキックを蹴ることができなければ、状況・展開は変えられないというのが"僕の仮説"だ。

クラブに所属する選手が小学校を卒業するまでに「10mのキックを正確に蹴る」ことができれば、私はチームメイトと一緒に調和をもって不自由なくプレーすることができるのではないかと想像している。もう一つ掘り下げると、6年間で10mのキックを正確に蹴ることができるようになればいいので、どの選手もチャレンジできる距離ではないだろうか。

1年生から1m、2mと少しずつ距離を伸ばしていけばいい。3〜4年生に上がるタイミングで5mの距離を蹴られたら及第点だと計算すると、難しいチャレンジではない。このくらいの距離なら地域の街クラブの選手でも十分に達成できる。何よりコーチが具体的な距離を目標にキックのトレーニングを考案できる。

この目標を立てることに「どう寄与できるか」が重要なことなのだ。

地域の街クラブのコーチにとって大切なことは、得たサッカー情報を選手のプレー目標にどう具体的に変換してあげるか。私は、コーチに求められる必要不可欠な要素がイメージする力だと実感中だ。イメージする力は意訳力、咀嚼力、解釈力、思考力、表現力…さまざまな力になっていく。そういう力を身につけた選手って監督に必要とされる、チームに必要とされる存在だとは思わないだろうか? 

「単なるコジつけじゃん」

もしかすると、そうツッコミたい人もいるだろうが、私はコジつけ力はイメージする力と同義語に近いとも感じている。連想といえば、ポジティブかもしれない。疑うことは大事だが、前向きに人のために役立てるほうへと思考を向けることはもっと大事なことだ。

街クラブのみなさんも自分なりに「うちのチームはどのくらい蹴れたらいいかな」と仮説を立ててみると、選手に笑顔が増えるアプローチになるかもしれない。

今回の記事は、定期購読マガジン用の一つの事例になる。

来年1月からも引き続き、オンラインサロン「僕の仮説を公開します」で交流できたらうれしい。興味をもった方は、ぜひ購読していただけたら幸いだ。

木之下潤
「ジュニアサッカーを応援しよう!」特集担当中!

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#僕の仮説を公開します

「僕の仮説を公開します」は2020年1月より有料になります。もし有益だと感じていただけたらサポートいただけますと幸いです。取材活動費をはじめ、企画実施費など大切に使わせていただきます。本当にありがとうございます。