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スポーツの上達って「がんばり方」があるよね。

ずっとジュニアサッカーを取材してると、どうしても子育てとか、食育とか、サッカー以外のことを勉強せざるを得なくなる。

そら、そうだ。

プロと違ってサッカーのことばっか書いてても、「サッカーを始めたばかりなんですけど」「いや、運動があまり得意じゃないんで」みたいな子もいるわけで、親からすれば我が息子、我が娘に当てハマらないってことがたくさんある。

コーチにしてもそう。

「戦術がこうだから、こういう練習をしたほうがいい」って原稿を綴ってても、地域のクラブで指導してるコーチはお父さんコーチやボランティアコーチがいっぱいいて、サッカーコーチだけで食べてる人じゃないことがほとんどだから。

そういう現実を知れば知るほど、いつの間にか企画を考えたり、記事を作ったりする自分の相手が「地域の街クラブ」にたずさわるコーチやお母さんお父さんになっていた。

世の中のサッカー記事を見てると、9割以上がエリート向けなんだよね。スペインでは、ドイツでは、ポジショナルプレーは、ハーフスペースは…。SNSでいろんな映像も流れてくるけど、「それはヨーロッパのトレーニングで、日本だと誰がそれを教えんの?」とツッコミたくなる。もちろん誰を対象に情報を出しているのかという同じ土俵に立っていないし、こういう情報があるよという好意でやってるからわかるんだけど、そういう人が多すぎて、

「街クラブのコーチたちはそれを読んだり見たりしてもわからんよ」

と、たまに思ってしまう。まぁ、誰かが一からマンツーマンで丁寧に説明してくれるなら別だけど。それに地域の街クラブに子どもを通わせるお母さんお父さんもレベルの高い練習なんて要求してない。子どもが楽しそうに、夢中でボールを追っていれば、練習内容なんて関係なく納得してる。

子どもが満足すれば、コーチも親も十分に役目を果たしてる。

僕はそう考えている。ただ、これは「テストで赤点を取らなかった」だけで、みんなも折り合いをつけて自分を納得させている部分もある。本音は子どもの「プレー」で満たされたい。口にはしないが、心に魚の小骨が喉に刺さってるようなそういう思いがある。

ひと昔前は「プレーで満たされたい」思いを、コーチも親も根性論で解決させてた。ひたすら子どもをがんばらせて、同じことを繰り返し、長い時間練習させることでがんばれた子だけが試合に出て、ガマンできた子だけがサッカーを続けてた。その名残りは今も根強く続いている。

ケガでサッカーを諦める子。
嫌でサッカーを辞めていく子。

そんな子がまだ溢れてる。知識がないって罪。気づかないうちに子どもを傷つけてる。でも、知識だけが先行しすぎても罪だよ。それは専門用語を並べたてたところで子どもには理解できないんだから。子どもに伝わるように話せてる? レベルの高い要求はそれ自体が子どもにとって振るいで、それに気づかず落としてる場合だってある。

がんばり方ってあるよね。
学び方ってあるよね。

まずコーチや親がそこを知らないと、子どもにサッカーを教えられないよ。自分が一回くらいがんばり方とか学び方とか考えたことある? たまに聞いてみたい時がある。子どもの動きがヘン、足が痛そう、ケガした…それって本当は誰が悪いの? サッカーの勉強だけしてても、子どもは成長期だから。小学生の時はおおらかな気持ちで、子どもに楽しく健康でサッカーをやらせようよ。

知らないうちに子どもの選手生命を縮めてるよ。

ちょっと強めに言ったけど、僕の心にある正義のボーダーラインは「子どもの安心安全を守る」ことにある。だから、「スポーツと体の関係」をテーマにした企画を媒体に提案した。この考えに賛同し、編集部を説得してくれたのが唯一リアルスポーツ編集部の中林良輔さんだった。ご本人もサッカーをしてる息子と娘がいる二児のパパ。本当に感謝している。

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みんなで一回それぞれの立場でがんばり方、学び方って何か考えてみようぜ。知識がなくても、知識だけでも、子どもにサッカー指導はできんよ。だって、子どもはすべてにおいて成長段階なんだから。大人もその知識を自分のものにしてないんだから。

木之下潤

【プロフィール】
文筆家&編集者/「年代別トレーニングの教科書」「グアルディオラ総論」など制作多数/子どもをテーマに「スポーツ×教育×発育発達」について取材・研究し、2020年1月からnoteで「#僕の仮説」を発表中!/2019年より女子U-18クラブユースのカップ戦「XF CUP」( @CupXf )の公式メディアディレクターを務める/趣味はお笑いを見ること

「僕の仮説を公開します」は2020年1月より有料になります。もし有益だと感じていただけたらサポートいただけますと幸いです。取材活動費をはじめ、企画実施費など大切に使わせていただきます。本当にありがとうございます。